sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
それから、ソニックは持ち前の『力』でなんとかエミーを倒し、先に進んだ。
道を急ぎながら、彼は先程の事について考えていた。
…最後は、あんな風になってしまうなんて……
…タダ者じゃないな、『あいつ』は。
いくらあの時の出来事が信じられないとはいえ、ほんの少しの間だけ、違う世界に片足を突っ込んでしまった今の彼は、何となくだが、『彼』の思いを垣間見ることができたような気がしていた。
もし今、隣に誰かがいれば、きっと彼の心中を分かち合う事ができただろう。
しかし、今は、誰もいない。
時間すら存在するのかも分からない。
自分の孤独さに、彼は身の切れる思いがしたが、気持ちを奮い立たせた。
風すらまともに吹かないこの場所に、勿論、光など差すはずも無かった。
しばらく進むと、先に誰かのシルエットが見えてきた。
ソニックは、そのシルエットが誰かを覚って、息を呑んだ。
テイルスだった。
この世界に元からいたテイルスなのか、それとも自分たちの世界にいたテイルスなのかは、彼の感覚ですぐに分かった。
「…テイルス!?」
ソニックは彼に一声かけてから、一歩下がって身構えた。
このテイルスは、元からこの世界にいたテイルスではなく、ソニックの『親友』であるテイルスだった。
ソニックの声が聞こえたのか、テイルスは ややぎこちなくこちらを向いた。
…案の定、彼もエミーと同じようになってしまっていた。
ソニックは、胸の締め付けられる思いがした。
「…テイルス。 オレだ……分かるな?」
「分かってるよ、勿論」
それからテイルスは、少し微笑んでからこう言った。
「…ちょっと、遅かったみたいだね」
彼のその笑顔は、彼が本当に___心からのものかは分からないが___作った笑顔なのか、『彼』と同じ笑顔なのかは、ソニックには分からなかった。
ソニックは答えた。
「…色々あったんだ。 色々な」
「話は聞いてるよ」
ソニックはこの世界のネットワークがよく呑み込めなかったが、少なくとも自分たちの世界とは違う、と感じていた。
…『アイツ』以外は全員、似たようなモノで……コイツも、エミーもそうだった……
また先程と同じ道を歩んでしまうのかと、彼は一抹の恐怖を感じた。
どうにかして、彼はその恐怖を追い払おうとした。
「…テイルス。 オマエは……オマエ達は、一体…何がしたいんだ?」
「いまここで、君を消したら、『彼』が君になるんだ」
思ってもみなかった言葉に、ソニックは冷たいものを感じた。
「…で、どうなるんだ……?」
「分からないの? 『彼』が君になるって事は、君の世界での君が、『彼』になるんだよ」
同じような歪んだ言葉の羅列に、ソニックは気が狂いそうだった。
「…そうしたら……オレが……? 駄目だ! そんな事をしたら、オマエも大事な人を失うことになるんだぞ!? なあ、テイルス!!」
テイルスは、呟くように言った。
「今のボクたちに『大事な人』って、いるのかな」
テイルスが異世界で変わってしまった事は、ソニックにも勿論分かっていた。
しかし、彼から発せられる言葉の数々を、ソニックは呑み込もうにも、呑み込めなかった。
いくら変わってしまっても、彼にとって、旧友は旧友のままだった。
ソニックは、まるで自分が忘れ去られてしまったように思った。
悲しさを通り越したものが、彼のなかで渦巻いていた。
…これが『悲しみ』じゃないんだったら、顔を伝って流れていくこの清いモノは、一体何になるんだ……
「覚悟したほうがいいね。 周り、見てごらん」
ソニックは、こう言われて周りを見渡した。
周りは、今までに『彼』に変えられてしまった者たちが、ずらっと並んでいた。
…彼は、囲まれてしまっていた。
さすがにこうなると、何をしたらよいのかも分からなくなってきた。
また、あの感情が、彼を襲った。
今度ばかりは、あの声も聴こえなかった。
それでもなんとか、彼は意識を保ってふと前を見た。
そこにいたのは、鏡に映った彼の姿でも、何でもなかった。
『彼』だった。