sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
「…ちょ、ちょっと待ってよ! 確かに、君には何か裏があるって事は、薄々分かってたよ。 …でもまさか、そんな事だったなんて…… 何で言ってくれなかったのさ!?」
テイルスドールが慌ててまくし立てた。
【 分からないよ、きみには どんなにあの世界が酷いってことなんか 】
「な…、そういう君だってどうなのさ? 君は、あの世界の事を知ってるわけ?」
【 知ってるよ 全部ではないけどね 】
『彼』は、ソニックの方へ歩み寄ってきた。
「ち、近づくな…! 何をするつもりなんだよ!?」
『そうですわよ! 今更、何があなたの未練だっていうの?』
『彼』は、ソニックの目を見据えて言った。
【 交代だね 】
「…!? うわっ……!」
『彼』の一言がよく飲み込めないままで、彼の身体の力が抜けてしまった。
誰かに触られているような気がしたが、彼には、もはや抵抗する力も無くなっていた。
彼の意識が、どんどん崩れていく。
崩れて無くなった意識の上に、また別のものが居座っていった。
彼には、もはや何も出来なかった。
ただ…崩れていく意識と、新しい意識の仲立ちをしているだけになった。
『ソニック!? しっかりしてよ! 君だけが頼りなんだって! ねえってばぁ!』
『駄目ですわ…… 持っていかれてしまっている…! 止めて……!』
意識が完全に潰える直前、彼は確かにこう言った。
「…オレは、いつまで経っても、何をされても、オレだ。 …忘れないでくれ………」
「 始めようか 全部を塗り替えなきゃ、今すぐに 」
◆◇◆
気がつくと、ソニックは見知らぬ空間にいた。
そこは、どこもかしこも白かった。
…そして、何も見当たらなかった。
「…お、オレは確か…… さっき、アイツに会って……それから………」
次の記憶を辿ろうとした時に、彼は嫌な予感がした。
「…まさか、オレ達の世界が……?」
彼が言い終わらないうちに、空間の中に、一つの窓が現れた。
その窓の外には、
…荒廃しつつある世界が映っていた。
「嘘だろ……? アイツ、オレになっちまったのか? …本当に……?」
彼は、怯えて言葉も出なかった。
彼は窓の外をよく見ようと、窓に近づいた。
「あら、ソニックじゃない!」
突然、女の子の声が響いた。
ソニックは、その声の主を知っていた。
…ティカルだった。
「え? ティカル? …なんで、ここに……?」
「それはわたしの台詞よ。 あなたがここに来たのは…あれのせいね。 ごめんなさい、うちの族員が迷惑かけちゃってて」
事情が分からないまま、彼は彼女に深々と頭を下げられて、戸惑ってしまった。
「…ティカル。 オレは、死んだのか……?」
「…ま、それに近いわね。 ここは、何ていうか…その、死んでも未練を抱えている者が来るところなの。 あ、私は……もちろん、チャオ達の安全を見届けるっていう、未練があるんだけどね」
「未練…?」
「そう。 …あなたは、戻りたがってるわね。 よく分かるわ……あの子に身体を乗っとられちゃったんですものね」
やっぱりな、とソニックはため息をついた。
「ティカル。 アイツは、誰なんだ? …よく分からないんだ。 一人じゃなくて、いっぱいの者が合わさってる感じがするんでな」
ティカルは頷いて、後ろを振り向いた。
すると、後ろからは見慣れた……だが、今はもう会えなくなった者が、沢山歩いてきた。
「エメル……! うわっ、ブラックドゥームまでいるじゃねぇかよ!!」
「まで、とは何だ…… この下等生物め。 …我は、キサマに滅ぼされてから……後悔した。 シャドウに、もっと沢山の事を教えておくべきだったと。 そして…あの世界を見下しすぎていたことをな」
「オマエ…!」
「ソニック、アノトキハ、セワニナッタネ。 …アレカラ、ミンナ ヨクヤッテルミタイダカラ、アンシンシテタンダケドナ」
「ああ… 皆、元気だぜ。 そんで……オマエは、今でもオレたち皆の誇りだよ」
「アリガトウ… ウレシイヨ、ボク。 ボクノシタコトハ、ヤッパリ…ムダナンカジャ、ナカッタンダネ」
仲間たちの言葉に、彼は勇気を貰ったような気がした。
「……!」
「ほら、ソニック。 見てみなさい。 世界は、やっぱりあなたがいないと寂しいみたいよ。 …今も、あなたを呼んでるわ」
「さっさと片付けろ… 我を滅ぼしたぐらいのキサマには、これぐらい容易い事だろう」
「ソニック、イッテオイデ。 ボクラハ、イツマデモ…ソニックヲ、マッテルカラサ」
「皆……!」
突然、彼の周りに光の渦が巻き起こった。
その渦は、微かな喜びを湛えているように、勢いを増していった。
「ありがとな。 …行くぜ、オレは。 アイツに、説教してやらないとな」
「その意気よ! さあさあ早く。 チャンスを逃しちゃうわよ」
渦が、さらに激しくなっていく。
ソニックは、仲間をしっかりと目に焼きつけてから、頷いた。
「待ってろよ。 いつかまた、会えるんだからな」
渦が彼を包み込んだ。