sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
彼らは、再び『彼』の世界へ戻った。
「着いたな… ひ、酷い荒れようだな……今見ても不思議だぜ」
【 待ってて すぐにやるから 】
『彼』が足下の花を拾い上げた。
【 みんな、戻っておいで 】
そして、『彼』が花をそっと放ると、その花から強い何かが広がった。
すぐに青空が戻り、無機質ながら、草花も生えてきた。
ソニックは、その変化が嬉しくて堪らなかった。
「やるじゃねえか! さすがだな、オマエ。 やっぱり…」
彼が称賛の言葉を継ごうとしたときに、彼の体が光に包まれ始めた。
「…!? な、何だ、これ……?」
彼が戸惑っている間に、『彼』は寂しそうに言った。
【 …もう、最後だね 】
「は? 何がだ?」
そして『彼』は、彼の手を握った。
それは決して『強いもの』ではなかったのだが、力強かった。
【 この世界には、きみは元々いないんだ ぼくがこの世界を戻したから、きみも自分の世界に帰らないといけないんだよ 】
「それじゃあ…… 会えなくなるのか?」
光が、彼らを急き立てる。
【 記憶が残るかどうかもわからない でも…忘れてほしくないな 】
何故だか分からないが、彼の目に涙が込み上げてきた。
「何だって…? オレも、忘れたくないさ。 オマエはオレで……ちょっと違うが、オレはオマエだからな」
『彼』は切なそうに笑った。
光が激しくなってくる。
【 ずっと、忘れないからさ また、いつか来てよ、絶対に 】
「ああ、来るさ。 …いつになるかは分からないが、待っててくれるよな?」
光が彼を包み込んだ。
去り際に、彼は確かにこう聞いた。
【 待ってるよ また、あの『入り口』の前でね 】
◆◆◆
彼が目を覚ますと、そこはマザーコンピュータ室だった。
辺りを見渡すと、テイルスとシャドウが心配そうにこちらを見ていた。
…何だか、彼には、彼らに会うのが久しぶりのような気がした。
「は……て、テイルス? オレは…」
「何だかよく分かんないけど、みんないっぺんに気絶しちゃって…… ボクは先に目が覚めたんだ。 何もなかったよ、びっくりした…」
「貴様だけだ、ずっと寝ていたのは」
「そ、そう…なんだ……」
隊長が駆け込んできた。
傍らに、何かもいた。
「うぇ、て、テイルスドール!? はぁ!?」
「おお! 良かった、君達が目を覚まさないかと思ったよ…私は心配しすぎたね」
「ほらほら、いつまでのんびりしてるのさ? 立ってよ!」
ソニックは、すぐにテイルスドールに詰め寄った。
そして、他の人に聞こえないように問い詰めた。
「オマエ、何でいるんだよ!? アイツはどうなったんだ、え?」
「知らないなぁ~。 あの子、優しいから、僕に出番をくれたんだろうね」
「ちょっとぉ、テイルスドールってばぁ…… 自分の名前が混じってるって変だけど、この前のメカの修理代、いつかエッグマンに立て替えてもらうからね!」
友人が、普通にテイルスドールと接したのを聞いて、ソニックはますます気味が悪くなった。
「なんか、僕がずっと前からいるような感じになってるし。 …まぁいいや、僕が嬉しいから良しとしようか。 …テイルス、僕はこいつに用があるから先に行っててよ」
「えぇー? …分かったよ。 じゃ、シャドウ、隊長さん、案内してよ」
彼らが去ったあと、テイルスドールは静かに語り始めた。
…あの子のこと、教えてあげようか。
…後で分かったんだけどね、あの子は、そうだな……言いにくいな。
…あの子はね、過去や未来、そして現在の、全てのものの『終わり』を結集させて生まれた霊なんだよ。
…だから、いつか去った人も、無くしたモノも、みんな…全部、あの子の中にあるんだ。
…分かりにくいよね。 でも本当なんだよ。
…あの子は、全部の『終わり』を、一人で抱え込んで、それを監視しながら、時には僕たちを誘いながら……やっていかなくちゃならない。
…だから、誰も逃げられやしないし、抵抗なんてできない。
…ま、神様みたいなモノなのかもね。
…それがどういう訳か、コンピュータに侵入して、あの子だけの世界を作り上げたんだ。
…一人ぼっちだったから、何も分からなかったんだろうね。
…それで、たまたま姿が同じだった君が、あの子を止めたっていう訳。
…なんとも哀しい話でしょ?
…でも、良かったよね。 君に会えてさ。
…もしかしたら、君は……
…全ての『勇気』をしょいこんでるのかも知れないね。
…そうだったら、素敵なんだけどね……