sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
GUNと警察がジェロームを縛りあげてプリズンアイランドへ連行した後、ソニックはシャドウに連れられてGUNの拠点となる基地へ向かった。
「…おいシャドウ。 トラブルか何かあったみたいだが、一体何だってんだ?」
「GUNのシステムネットワーク全体に支障が出ている。 マザーコンピュータをハッキングされたらしいが、誰がウイルスを送り込んできたのかはまだ分からないようだ」
ソニックは、へえ、なんだコンピュータ関連の話かよ、とつまらなさそうな顔をした。
「システムの話なのに、なんでオレを呼んだんだよ? 関係ないじゃないか?」
「…関係ある。 特に君にな」
「…え? オレ?」
シャドウは、言い過ぎた、と言わんばかりに顔を背けた。
当のソニックは、事態がよく飲み込めなかったが、それでも事の重篤さは感じ取っていた。
「…そ、そうか、オレが…?」
しばらくして、彼らは一つの部屋に辿り着いた。
「ここだ。 ここにはGUNのマザーコンピュータが配置されている」
部屋の中央に、彼らの身長より少し高めの箱が置かれていた。
一見、何もなさそうに見えたが、そのコンピュータに備え付けられた小さいランプが、赤色に点滅していた。
「で? これがどうしたんだ?」
「…話せば長くなるがな…」
聞けば、このマザーコンピュータには、少し前に、例のソニックの逮捕騒動があった際に、GUNの技術者が作った とあるプログラムが埋め込まれているという。
そのプログラムは、ソニック達が暮らしていた『グリーンヒル』という場所の、そこに住まう者、そこに生きる植物や小動物、そして天候などを完璧に再現できるシミュレートシステムだった。
もちろん、そのプログラムでは生ける者や動く物を再現できるから、ソニック達も再現されて、仮想の世界を築けていた。
しかし、少し前にこのプログラムが何らかのダメージを受けてしまった。
これにより、ネットワークの網が張り巡らされていたマザーコンピュータの他のプログラムも被害を受けた。
ダメージがあまりにも大きかったため、復旧の見通しは立っていないという。
ここまで聞いているうち、ソニックは薄気味悪いものを感じた。
「…なあシャドウ。 それってつまり……、そのプログラムの中にもう一人のオレや、テイルスやエミー達がいるって事だろ?」
「そうだ。 そういう事になる。 …この事はGUNのトップから外部には漏らすなと指令を受けていたが、今回は特別に許可をもらった。 …君を呼んだのは…」
「分かってるって。 何となく気まずかったんだろ? …この中にもう一人、オレがいるんだからな」
「…そうだ。 黙っていて、すまなかったと伝えろ、とGUNのトップが言っていた。 …すまなかった」
珍しく、シャドウが謝罪の意を見せたので、ソニックは少々面食らってしまった。
「い、いいさ! 悪いのはオマエでもお偉いさんでもないさ。 悪いのは……、その、ウイルスだな」
「…守れなかったことは後悔している。 それで…」
彼が何か言いかけたその時、不意に高い声が響いた。
「あら? シャドウじゃありませんこと! 一体何をしていらっしゃいますの?」
「…アリス! 君は……部屋にいろと伝えた筈だぞ!」
どうやら、その声の主は少女のようだった。
「…も、申し訳ないですわ…。 でも、私だって、たまには出歩きたくもなりますわよ」
一通り自分の意見を述べた、アリスと呼ばれた少女が、部屋の中に入ってきた。
彼女は胸元に赤色のリボンが付いた純白のワンピースを着ていた。
彼女は、西洋美人と言えるほど、綺麗な顔や身なりをしていた。
「あら! ソニックさんじゃありませんこと! …お目にかかれて光栄ですわ! 何だって、私はいつも貴方の事を…」
目を輝かせてずいずいと迫ってくるアリスに、ソニックは多少たじろいだ。
「…ち、ちょっと待ってくれよ! 自己紹介してからにしようぜ、なあ」
冷静な指摘を喰らった少女は、身なりを正して軽く膝を折った。
「私は、アリス・ミラーと申しますわ。 訳あって、GUNにお世話になっているんですのよ」
彼女は、見た感じは十代半ばだったが、とてもそうは思えないぐらい、あどけない顔をしていた。
そして…顔色や肌の色は、まるで病人のように白かった。
「…こいつは、重い病にかかっていて、もはや民間の病院では治療できないんだ」
「…そ、そんな重い病気してるのか!?」
頷いたアリスのブロンズの波毛が、ふわんと揺れる。
「…まあ、そうですわね。 でも、私は今のところ元気ですし、まさか突然いなくなるなんて事は無いとは思いますけど」
彼女の言葉を聞き、シャドウがやや不服そうな顔をした。
「…何を言っているんだ。 もし何かあったら、急には対処できないんだ… 君の病はそれほど重い」
「む…、分かりましたわよ…。 私は部屋に戻りますけど、ソニックさんもいらっしゃる?」
健気な瞳に見つめられると、シャドウも毒気を抜かれたようで、やや表情が綻んだ。
「アリスは遊び相手がいなくてな。 僕だけでは飽きるんだろう… 行ってやってくれ」
彼は、少し切なそうにそう言った。
…何か、過去にあったんだな…。
「シャドウ… 分かった。 アリス、案内してくれ。宜しくな」
それを聞いて、アリスは顔を輝かせた。
「ええ、喜んで! さ、参りましょう! 私の部屋、すぐそこですわよ」
「あ~、待てよ! そんなに速く走って大丈夫なのかー!?」
「私の辞書には、『不可能』なんて言葉はありませんわ! いつでもやりたいことを求めて生きてるんですのよ~!!」
「そういう意味じゃなくて…、あ、待てよ、アリスー!!」
去っていく二人をしばらく見た後、シャドウは任務に戻ろうとした。
…したのだが。
「……!! 何だ、これは…!!」
突然、目の前の風景が歪んでいく。
心なしか、空気も薄くなってきた。
「…っ、アリスは… アリスは、無事か……?」
朦朧とし始めた意識の中で、彼は『守るべき者』の無事を祈った。
「アリス…… 無事で……」
◇◇◇
「…先に来たのは、シャドウだったみたいだね」
【 扱いにくい魂を、呼んでしまったみたいだな 】
「…別にいいんじゃない? どうせ後で、また誰か来るんでしょ」
【 よく分かったね 】
「終わりにしないとね。 …君は気が長い方だからまだいいけどさ、あんまり待つのも嫌だし」
【 気が長い、か あっちはきっと気が短そうだね 】
「…っていうか、元の君の事なんだけどね。 …それよりほら、せっかく呼んだのに、遊んであげなくていいの? …遊びにくそうな気はするけど」
【 遊ばないわけはないじゃないか 】
「…うん。それでこそ君だね」
【 かくれんぼから、始めようかな 】