sonic.exe ~the unknown story~ 作:トラちゃん
ソニックが隊長に連れられてまず向かったのは、ソニック自身どこかで見た事があるような、牢獄が並んでいる地帯だった。
小走りしながら、彼は隊長に問うた。
「ジェロームは、捕まって牢獄に入れられたんだよな? アイツがどうかしたのか?」
「グ、グホッ…… ま、まあ見れば分かるさ……と、ここだな…」
隊長の息が切れかけたところで、ようやくお目当ての牢獄に辿り着いた。
通路のつきあたりにある、ひときわ大きい牢獄には、白衣を着た研究員や医者らしき人々が集まっていた。
その中の一人が、隊長に気付いたのか顔をあげた。
「いらっしゃいましたか、隊長! コイツは出血多量ですが、脈はあります。 ですが、まだ意識が戻っていないので、集中治療室へ入れろと連絡をしておきました」
「そうか、ご苦労だった。 後は君達に任せても良さそうだな」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 出血多量!? 何なんだ?」
人々が集まっているせいで中が全く見えなかったソニックは、人混みをかき分けて牢獄の中を覗いた。
そこには、全身をやや深くえぐられて血みどろになったジェロームが、荒く息をしながら横たわっていた。
「…ジェローム…!」
ショックで、彼は口をまともにきけなかった。
「ジェロームの事はなんとかなる。 問題は、シャドウ君だな。 …行こう」
隊長が、踵をかえしてよろよろと走っていった。
…いくら敵だったとはいえ、未だかつて…誰もこんな攻撃はしなかった。
…誰だ? 誰がこんなことを……
色々と気になったが、彼はもう一人の無事を確かめるために隊長の後を駆けていった。
「ここだ。 シャドウ君の方が発見されるのが早かったからね、彼はもう先に集中治療室に入っているんだよ」
そう言って、隊長はとある一室のドアを開けた。
中に入ると、薬品の臭いが鼻をついた。
中にベッドは複数あったが、ソニックはその中の一台にすぐ目がいった。
「…シャドウ? …シャドウ!」
たくさんのモニターで側を固められたベッドに、彼はいた。
彼も、ジェロームと同じように全身を痛めつけられていたが、その度合いがジェロームよりかなり酷かった。
彼は昏睡状態に陥っていた。
それに、微かに血生臭かった。
事態が飲み込めず、ソニックは立ち尽くしていた。
「な、なあ、これって…」
「ん? 何だね?」
「…誰がやったんだろうな」
さあね、という顔で隊長がモニターを操作し始めた。
「分からん。 何者かが侵入した跡も無い。 …ここだけの話、私はGUNの者全てにこっそりGPSを付けているのだが、誰もシャドウ君達とは接触していなかったんだ。 何とも不思議な話だがね」
「じゃあ、一体誰が…」
ソニックが言葉を繋げようとした矢先、シャドウが微かに目を開けた。
「お! シャドウ君、目を覚ましたかね! あ、無理はしなくていいぞ。 ソニック君が来てくれているんだ」
心なしか、シャドウの目の焦点が合ってきたようだった。
彼はソニックに目を向けた。
「…そ、ソニック……」
ソニックは、今は彼の姿が痛々しくてたまらなかった。
「よ、よう、シャドウ…。 大丈夫…じゃないな。 何があったのか、聞かせてくれないか」
シャドウは、少し戸惑いの表情を見せた。
「何があった、か…… 待て、確か僕が君たちを見送って、任務に戻ろうとして…… そこから急に苦しくなったような気がするが…あまり記憶がないな」
「は!? 記憶が無いだってぇ!? 君君、何だって任務を優先して考えるんだね。大体、事故の記憶なんて…」
ふざけるな、という顔をして、シャドウが隊長を見た。
「僕は何も覚えていない。 それは確かだ」
「待ち給え、いい加減に…」
隊長がしびれを切らしたのか、シャドウを叱ろうとしたが、ソニックが割って入った。
「待てよ。 本当にコイツは何も覚えていないみたいだ…コイツが嘘をつくなんて、滅多にないぜ。 オレには分かるんだ」
「ソニック…」
ソニックは、いや、本当は全員かもしれなかったが、気味の悪いものを感じていた。
「誰がやったのか…オレには勿論分からないぜ、今のところはな。 だがな…これは誰かがやったんじゃない。 オレ達には分からない、『誰か』がやったんだ」
珍しく真剣な顔で語るソニックに、皆頷くしかなかった。
「そ、そうだね、誰か……か……」
「ソニック…。 だが確かに、僕もそんな気がしていた…
すまんな、今日は謝る事ばかりだ」
痛々しいシャドウが、さらに痛々しい顔をするのが、またソニックには耐えられなかった。
「…いいって…そんな日もあるさ。 それより、オマエはアリスの事が心配なんだろ? オレが側にいてやるから、安心しろよ」
「…すまない…感謝する」
シャドウに少し微笑み掛けたソニックは、急いで部屋の出口に戻った。
「じゃあな、ありがとよ、隊長。 シャドウもお大事に、だな。 何かあったらまた言うぜ。 …じゃあな」
彼は少し手荒に出口のドアを閉めて、集中治療室から出ていった。
アリスの部屋に戻る時、彼は幾つもの思いが沸き上がって止まらなかった。
…『誰か』か…
…何となく、オレに近いヤツのような気がするな…。
…気のせいか…?
…でも、だとしたら、一体何のために…
…そして、誰がそうするように仕向けたんだろうか。