更新遅れてすみませんでした。少し時間が取れたので少し進めようと思います。
傷ついた戦車たちが回収されていく。全国大会等では一旦会場に集められるが、冬季杯ではすぐそばに学園艦があるので直接運び込む方式を取っている。18tハーフトラックに引かれてパンター、Ⅳ突、レオパルトが運び込まれていった。
「...いやぁ、戦車の質では勝ってたのに、まさか負けるとは」
マクラーレンが橙の髪を揺らし、握手を求めてきたのでそれに応じる。確かに、センチュリオンやパンター・ガスタービン試験車など、予想以上に強力な戦車を擁していた。
「ガスタービン車は、戦車道には厳しかったかもしれないですね。レースにはいいかも」
「...それいいね。参考にさせてもらうよ」
彼女たちがパンツァー・ジャケットの代わりとしている学校指定の防火ツナギからメモ帳を取り出して手早くメモを取ると、身を翻してこう言った。
「...次の戦場は『タンク・アタック』だから。負けないよ」
そのひとことは、涼子さんへの挑戦状だった。
「...あぁ。今度も勝つのは私だけどね」
そう言うと、彼女はBT-7に
「次の試合も見て行きましょうか」
「いいね。賛成!」
という流れで、私たち虎さんチームの面々で第二試合、スタンレー中等教育学校 VS 戦練高等専門学校の試合を見ることになった。
下関から対岸へ渡り、門司港へ。関門海峡にUボートを模した潜水艦が浮かべられ、そこに大型のモニターが設置されている。ここがライブビューイングの会場だ。
スタンド席より少し後ろ、高台の上にマウルティアを停めて、観戦を始める。ちょうど挨拶が終わり、試合開始場所への移動が始まったところで、モニターにはもぬけの殻と化した下関市街地が映し出されていた。
「いい席空いててよかったねぇ」
「こんな所誰が来るってのよ」
見やすい位置が取れて満足げな琴音さんと、面倒な道を走らされてゲンナリとしている涼子さん。私はそんな二人のやり取りに苦笑を浮かべながら、回りを見回した。確かに誰もいない...
...いや、いた。そこに見えるのは、小豆色のⅣ号戦車。大型のシュルツェンや長砲身を装備していることと、桃色の魚類をデフォルメしたパーソナルマークが描かれていることから、どこの高校の車両かはひと目で分かった。
「...大洗のフラッグ車だ」
「え、うそうそ!?どこ!?」
「ほら、あそこ」
車両の上に座って画面を見ているのは乗員の5人だ。
変幻自在、奇想天外な戦術を得意とする『大洗の軍神』、西住みほ。
全国大会でも指折りの精度を誇る砲手、五十鈴華。
ドリフトする車内でも装填出来る装填手、秋山優花里。
軍神の指揮で入り乱れる部隊を纏める通信手、武部沙織。
激しく動き回る機動戦を容易くこなす操縦手、冷泉麻子。
全員が全員、トップクラスの練度を誇る超人軍団だ。どんな人物なのかとても気になるが、話しかける勇気は私にはなかった。
「じゃあ、私行ってくるよ」
「え、琴音さん!?」
私の表情を読み取ったのか、彼女たちに向かって歩き出す。一人で行かせる訳にもいかないので、私もついていくことにした。
「こんにちは。大洗女子学園戦車道チームの方ですよね?」
「あっ、はい。大洗女子学園戦車道チームの隊長をしています、西住みほです」
彼女はⅣ号から降り、私に礼を返した。噂から伝わってくる怖いイメージとはかけ離れた優しい声と礼儀を持った女性という第一印象を受ける。
「やっぱり。お会いしたかったです。私はアウトバーン女子学院、隊長車装填手の二葉琴音です。こっちが...」
「隊長の三城夏紀です。初めまして」
「あぁ、さっきの方ですね。一回戦突破おめでとうございます」
先ほどの試合を見ていたようだ。私もあまり自信のない試合だったので、どのような印象を与えているのか気になる。
「どうでしたか?見苦しいものを見せてしまいましたかね...」
「いえ!とても参考になりました!」
西住さんはそう言ってくれた。その表情からはお世辞や嘘は感じ取れない。裏表のない人物なのだろう。
「...試合、始まるぞ」
冷泉さんのひとことで、私たちはモニターに向き直った。
最初に映し出されたのはスタンレーの戦車隊だ。M4戦車のライセンス生産車であるグリズリー巡航戦車が2両と、フラッグは長砲身の『グリズリー・ファイアフライ』。机上の計画はあったものの実際に作られることは無かったが、ほぼ無改造でファイアフライの砲塔が搭載できた事から戦車道連盟の公認を受けることができたという。
隊長であるヴィクトリアは、機動力を活かし先に陣地を構築することで、偵察に来た敵戦車を機動防御で袋叩きにできる、という戦略を立てているのだろう。彼女は陣地を構築しての防御戦術においては高い技術を持つと聞く。陣地の構築を許してしまえば、それを突き崩すのは非常に難しいだろう。
「...どう来ますかね、戦練専は」
「正面突破は難しいでしょうから、機動力を活かして迂回ですかね」
中戦車とはいえグリズリー・ファイアフライは17ポンド砲を持っている。並大抵の装甲では弾き返すことは不可能だ。
そうこうしているうちに、スタンレーの戦車隊は建築物を撃ち崩し、遮蔽として陣地を構築した。得意の戦場を作ったことで、彼女たちはよりやりやすくなっただろう。
そこに戦練専がやってくる。重厚なキャラピラの音が6つ。3両固まっているようだ。
...曲がり角から現れた戦車の姿に、戦場に立つ者だけでなく、私たちも思わず声を上げる。
「...スターリン...3...!」
IS-3重戦車。大戦最末期の重戦車で、世界が築き上げてきた重戦車ドクトリンの決定版といえる。徹底して被弾経始を追求したボディは装甲厚以上の防御力を持ち、122mm砲の火力は自走砲に匹敵するものがある。それに随伴の車両もT-44-100中戦車、SU-152自走砲と、重火力、重装甲の超強力な戦車たちだ。
ファイアフライの砲も、IS-3の装甲に尽く弾かれ、SU-152の砲弾に弾き飛ばされ、T-44-100の砲弾が貫徹し、IS-3の砲が火を噴くと、勝負はあっという間についてしまった。
『...スタンレー中等教育学校、グリズリー・ファイアフライ、走行不能。よって、戦練高等専門学校の勝利!』
唖然としていたのは、私だけではなかった。回りの皆も、大洗の人たちも皆、口を開け、『現実を受け入れられない』、といった表情をしていた。
「...ソ連戦車とは聞いてたけど、まさかあそこまでとは...」
あんなものが私たちの次の対戦相手だなんて、冗談じゃない。勝てるわけが無いじゃないか。
「...頑張ってくださいね。必ず、勝機はありますから」
西住さんの言葉。Ⅳ号という至って普通の戦車で、ティーガーやIS-2を相手してきた彼女が言うのだ。きっとそうなのだろう。
「帰ろう。戦略を考えないといけなくなった」
「そうだね。帰ろうか」
マウルティアの心臓に火を灯し、帰路につく。
第二回戦は明後日。考えている時間は無くなりつつあった。
※スタンレー校は弱小ではありません。戦練専がチートなだけです。
休載宣言をしましたが、とても書きたくなったので書かせて頂きました。次はいつ書けるか分かりませんが、書ける時間があれば極力書いていきたいと思っています。
ちなみに、『グリズリー・ファイアフライ』の存在には確証がありません。これから掘り下げることもありませんので、仮に無いとしてもあまり突っ込まないでください。