ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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同日2話投稿です。臨場感ある戦闘が描けていると嬉しいです。


姉妹です!

 

両チームとも、一度戦闘を切り上げて2両が合流した。戦闘を仕切り直すのが狙いで、ここからもう一度自らの思い描く作戦に敵を取り込もうと考えている。

 

「ともかく、ロングレンジでの狙撃合戦だけは避けたいね。こちらとしては懐に飛び込んでの格闘戦がしたい」

 

「相手も恐らくその作戦には乗ってくれないだろうね...車両の差を活かして戦いたいと思ってるはずだし」

 

寿璃さんの言うとおり、そんな生半可な相手でないことは私が一番知ってる。昔から一番近くで見てきて、一番手の内を知っているからこそ言える。

 

「こっちから攻め込むしかない。...切り込むチャンスを作ります。協力して貰えますか」

 

「...わかったよ」

 

その言葉の意味を、寿璃さんはよく分かっているはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

「相手は中距離で強さを発揮する。出来るだけ遠距離で戦いたい...」

 

「そうはいかないと思うよー...お姉ちゃん、隊長より強いんでしょ?」

 

「どうかな。少なくとも私が戦ったことある人の中では一番強かった...気がする。記憶が曖昧だけどね」

 

失っていた記憶が、会うごとに、戦うごとに鮮明になっていく。未だ彼女が私の姉であるという確証を得るには至っていないが、非常に濃密な時間を共に過ごしたことは覚えている。

 

「...ともかく。作戦としては、チャーフィーを陽動に出して、手間取ってる敵をこっちがロングレンジからスナイプ...で、いい?」

 

「いいもなにも。私は隊長をとても信頼してるから」

 

頼られる。それは幸せなことだが、同時にその人の命を預かることでもある。私は彼女たちを囮に使うこの作戦に迷いを感じていた。しかし、それしか私は勝つ方法を見いだせなかったというのも事実だ。

 

「じゃあ、行こっか」

 

「...はい」

 

星型エンジンがノイズ混じりに唸る。それは再び戦の火蓋が切られることを示す、号砲になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオパルトは、イージーエイトと共に市街地へと侵入していた。作戦を実行するには、軽戦車の取り柄である速さを殺してでも、イージーエイトと共にいる必要があるからだ。

 

「そろそろチャーフィーが攻め込んでくるはず。大きく迂回して敵の中枢に殴り込むよ」

「...はい!」

 

市街地の中心部を大きく回り込んで、接敵を避ける。こちらの所在がバレてしまうことは私の望むところではない。出来るだけ見られず、妨害もされずにファイアフライの元に二両無事にたどり着く。それが今一番の目的である。

 

今のところ敵に発見されているようには見えない。ここからどう出てくるか。こちらの動きを読んでいるのだとすれば、見つからずに進軍するのは至難の技だろう。

 

 

 

 

 

「...なる程。市街地を回り込んで私を狙う気ね。チャーフィーはこっちに戻って」

 

ファイアフライは位置を変更。狙撃に向いたポイントを押さえる。

 

「...さて、上手く決まるかな」

 

敵は見えない。しかしその砲は、何かを精密に照準していた。

 

「...撃て!」

 

 

 

 

 

 

 

轟音と共に砲弾が発射される。しかし音がしたのはビルの向こう。こちらに当たるはずはない...

 

 

...いや、当ててくるはずだ。

 

「停止!」

 

火花を上げ、履帯が軋む。停車したイージーエイトの眼前には、地面に穿たれた大穴があった。

 

「...窓抜き...ということは、私たちはチャーフィーに見られてたってことね」

 

窓を撃ち抜いての狙撃。常人の技ではないけど、それができるということは私たちの位置がよくわかっているということ。しかし、今の射撃は位置を推測するには十分な情報だ。

 

「...山猫さん、先行してください!」

 

「了解。任せて」

 

レオパルトがイージーエイトの前に躍り出る。本来装甲が薄い車両は厚い車両に守られて進軍するものだが、今回ばかりは違う。レオパルトは先回りして位置取りを行う必要があるのだ。

 

レオパルトが路地に隠れる頃、イージーエイトは全速で前進していた。ファイアフライを予測位置から逃がすわけにはいかない。立体駐車場から降りる前に射程圏内に捉えなければ。

 

交差点を通った時、ふと左にチャーフィーを見つけた。3つ路地をはさんで並走しているようだ。速度は当然相手の方が上。回り込まれてしまうかもしれない。

 

「...お願いね、山猫さん」

 

祈るように一言呟いて、私は前を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「...わかった。D-05ラインね」

 

ファイアフライは立体駐車場を降りる途中、2階部分で狙撃体勢を取っていた。私が相手なら、降りてくる敵の頭を押さえるべく急行する。それを待ち構えているのだ。

 

『目標地点到達まで、推定10秒!』

 

チャーフィーからの報告。イージーエイトのものだろう。エンジン音が少しずつ大きくなってきた。そろそろ来る。

 

 

 

 

 

 

...見えた。

 

「撃て!!」

 

17ポンド砲が唸りを上げ、必殺の砲弾が打ち出される。空を切ってM4に吸い込まれたその砲弾は、車両に直撃し...

 

 

 

『レオパルト軽戦車、走行不能!』

 

「なっ...!?」

 

路地から飛び出してきたレオパルトが盾になり、イージーエイトは無事だった。イージーエイトは予め旋回させていた砲を射撃して、チャーフィーを討ち取った。

 

『チャーフィー軽戦車、走行不能!』

 

「...なんてことだ...ッ!陣地転換!急いで!」

 

作戦が大幅に狂った。先にイージーエイトを仕留め、指揮の混乱したレオパルトを、確実に仕留める。仮にファイアフライかチャーフィーがやられても、残った方で仕留められる。そう考えていたのだが...

 

 

「...まぁ、こうなってしまったら、私たちの一騎打ちか...」

 

後ろを振り向くと、こちらを見据える夏紀の姿。その姿にどこか懐かしさを感じて、頬を雫が伝う...

 

「...隊長、しっかりしろ」

 

ジャンバラヤが言う。そうだ、私はどうかしていた。今は戦いが優先。あの人が姉であろうとそうでなかろうと、私はこの戦いに勝つんだ。

 

 

「...仕切り直そう。B地点まで逃げるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファイアフライは延々と逃げ続け、ついには試合会場の東端にたどり着いた。そこはかつて県内最大だった唐戸市場跡。建造物が多く、遮蔽が取りやすい上に高低差があり戦いに幅が出る。恐らく真っ向から戦うと車両設計の差で不利が出ると考えたのだろう。

 

「...さて、どう出るか」

 

なんにせよ、きっとここで決着がつく。立体駐車場へと入っていくファイアフライを見て、私はその隣に立つ立体駐車場に車両を乗り入れた。

 

砲撃。コンクリートが剥がれ落ちる。こちらからも砲撃。轟音と共に柱が折れる。立体駐車場を登りながら、撃って、撃たれて。一進一退の攻防が続く。

 

屋上に出たとき。ふとファイアフライのキューポラから夏摘が乗り出しているのが見えた。

 

 

 

 

 

「私は貴女に勝つ!負けるわけには、いかないの!」

 

 

 

震える声で叫ぶ夏摘。その声には、怒りでも悲しみでもない。深い思いやりを感じた。その声に、私は答える義務を感じ、キューポラから体を乗り出した。

 

 

 

「...全力で来なさい!私が全部、受け止める!」

 

 

 

 

しばしの沈黙。風が二人を撫でた時、キューポラが閉まる。

 

 

 

 

不意打ち気味の砲声。互いの弱点を的確に狙った狙撃は、緊急被弾経始で後方へと逸らされる。そして二両は下りながらの射撃戦へ。コンクリートの破片が。発砲煙が、視界を満たしていく。

このままではいつまでたっても距離が詰まらない。この距離で交戦していては、不利なのはこちらだ。そう悟った私は、涼子さんに指示を出す。

 

「次降りたら左折。全速でね」

 

「左折...左折!?...りょ、了解!」

 

スロープを降りる。左を見るとファイアフライも同じタイミングだった。イージーエイトは全速のまま左折。煙を上げながら...

 

 

「...行っけええええ!!!!」

 

 

 

空を飛ぶ。2棟の立体駐車場の間、その距離まさに15mほどだ。

 

 

 

 

着地。火花を散らしてイージーエイトが到着したのはファイアフライの一階下、2階だ。そしてスロープを上り、ファイアフライとインファイトに持ち込む。

 

 

スロープを上がると、ファイアフライは待ち構えていた。撃ち出された砲弾は、停止したイージーエイトの正面装甲を斜めに叩く。

 

「突撃ッ!」

 

ファイアフライの正面に組み付く。履帯同士が擦れて火花を飛ばす。車体が触れ合い鉄粉が飛ぶ。煙が充満し、排気が立体駐車場1フロアを埋め尽くしていく。

 

「このッ...邪魔なのよ!」

 

ファイアフライが少し下がる。17ポンドの凶弾は、左に動いたイージーエイトの動きを追いきれずに駐車場を叩く。イージーエイトは回り込み側面を狙うも、ファイアフライの体当たりで照準がズレる。

 

二両が一度離れる。互いの間合いを計っているのだ。そして速度を乗せて、もう一度懐へ。

 

 

ファイアフライの砲が吠える。直撃コースだ。しかも砲塔と車体の境界線。被弾経始を駆使しても防げる場所ではない。

 

「マズイ...っ」

 

その時、幹葉さんが驚くべき行動を見せた。

 

 

射撃。発射された砲弾はファイアフライとは見当違いの地面を照準していた。しかし、その砲弾は『飛来する砲弾の右側面を叩き』、弾道をずらしたのだ。

 

「...やった!」

 

「ナイス幹葉さん!今だよ、突っ込んで!」

 

スキが生まれた。今から懐に飛び込んでも装填時間には間に合うはずだ。

 

 

「...ブリテンの時は失敗したけど...今度こそ!」

 

右旋回しつつ、全速で懐に飛び込む。ファイアフライはこちらの後部をプッシングするが、涼子さんがその場の判断で逆に旋回。衝突の反動を活かして左に急旋回する。

 

履帯が弾けて切れる。当然だ。ここまで酷使したのだから切れない方がおかしい。幹葉さんが照準する。ファイアフライはこちらの動きに合わせて旋回しているが、幹葉さんは車体を狙っていない。狙っているのは...

 

 

 

 

 

砲声。炎と煙。コンクリートが剥離して、白い塵があたりに舞い上がる。

 

めらめらと、炎が燃える。さながら、戦いの余韻のように。

 

 

 

 

 

 

 

『シャーマンファイアフライ、走行不能。よって...』

 

 

 

 

 

『アウトバーン女子学院の勝利!』

 

 

 

 





これで冬季杯・決勝戦は終了です。後は後日談のような物で冬季杯編は終了する予定です。
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