ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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さて、新章です。今回はプロローグ『次の目標です!』と、第一話『道場破りです!』をまとめたものとなっています。


再編!戦車道チーム!
次の目標です!/道場破りです!


 

2月末。肌寒いガレージの中で、私は顎にペンを当てて逡巡していた。

 

「どうしたんですか?思い悩んで」

 

机の上に置いたプリントを覗き込む金色のボブヘア。華蘭さんだ。

 

「なになに……戦力増強、ですか?」

 

「うん。やっぱり今のままじゃ数足りないし……後輩たちを、全国大会にも行かせてあげたいしね」

 

「そうですね。3両で全国大会なんて、流石に無理がありますからね……具体的には、何両ほど?」

 

「8両は欲しいよね。大洗と同じ数」

 

正直、大洗に負けて覚醒した大御所たちに勝てる気はしない。しかし、私たちの練度のまま8両に増車出来たなら、いい勝負ができるのではないかという期待も持っていた。

 

「ただ、現実は甘くないよ……私たちって選択授業じゃなくて部活でしょ?だから部費がカツカツで……」

 

「練度向上の事も考えると、私たちがいるうちに増車したいですよね。可能な限り早急に」

 

「だね。今年の夏頃が目処かな」

 

新人の教育期間と、車両への慣熟期間も必要だ。それらはせめて半年は欲しい。諸々を考慮したうえで夏までなのだ。

 

「何とかしてみるよ。いろんなツテでさ」

 

私の拙い情報網で、何とか5両を集めるのだ。

 

……そう考えると、自信が無くなってくるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...おはよー」

 

「ん、おはよ」

 

可愛らしいうさぎ柄のパジャマに身を包んでリビングに入ってきたのは妹の夏摘。春休みの間だけ実家に帰省しているのだ。

 

「おはよう夏摘。ご飯出来てるわよ」

 

そう言ってリビングに食欲をそそる香りを立てる朝食を運んできたのは、母の葉月。既に出勤した父を除けば、これが三城家の全員ということになる。

 

「そういえば、知ってる?『道場破り』のウワサ」

 

「...道場破り?」

 

聞いたことがない。武道などではありがちな物だと聞いたことはあるが、実際に起きたという例は見たことがない...戦車道は特に。

 

「このあたりで最近多発してるらしいわ。戦車道の道場に殴り込んで、勝利したらその道場の看板を剥ぎ取って帰るらしいの」

 

「...ひどいね。何もそこまでしなくても...」

 

道場の看板というのは、その道場の歴史を物語る勲章の一つのようなものだ。それを剥ぎ取ってしまうなんて、同じ武道をする者として許しがたいことだ。

 

「ここも、いつ来たっておかしくないわ。気をつけるのよ」

 

「...うん」

 

源流は、小さいながらも道場を持つ。他の流派と違って、区画整理時に格安で売り出された土地を買い上げただけのものだが、だからこそ実践に近い練習が出来る。私たちもその道場...というより訓練場で練習を重ねてきたのだ。

 

「...やらせてたまるもんか。源流のプライドは、傷つけさせないよ」

 

「...えぇ。頼んだわ」

 

母のその顔つきは、真剣そのものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから3日程が経った。私は自室で、図書館で借りてきた本を読んで暇を潰していた。

 

「...んぅ...目が疲れたなぁ」

 

3時間ほど読み続けていたから、疲れが溜まっている。窓を開けて新しい空気を取り入れよう。そう思って窓を開けた瞬間だった。

 

 

スタンッ!

 

 

という音と共に窓から何かが飛び込んできた。その何かは部屋の壁に突き刺さって...いや、吸盤で張り付いていた。おもちゃの矢のようなものだが、今の速度から推測するに実際の弓矢を用いているのだろう。

その矢には紙が括りつけられていた。古風な『矢文』というやつだろう。

 

「...もしかして」

 

紙を開いて、目を通す。

 

「...挑戦状...!」

 

その紙は、巷で噂の『道場破り』からの挑戦状であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すっかり日が落ちた午後7時。真っ暗な峠道に、2両の戦車が停まっていた。

 

1両は角ばった車体に、同じく角ばった砲塔の乗った、中型の戦車だ。排気口カバーがまるで乗用車のウイングのような雰囲気を醸し出すスポーティな車両、クロムウェル巡航戦車。

 

もう一両は、菱形の砲塔を持ち、鉄板を貼り合わせたようなデザインの、同じく中型の戦車。砂漠迷彩に塗られた車両は、クルセイダー巡航戦車だ。

 

「...今日の狩りは楽じゃねえぞ、海荷」

 

海荷と呼ばれたのは、栗色のショートヘアの少女、大島 海荷。前髪に隠れた左目からは、優しさと厳しさ双方が見受けられる。

 

「...そうだね、舞花ちゃん。源流、どんなものだろうね」

 

舞花と呼ばれたのが、金髪のツインテールを揺らす少女、相島 舞花。彼女こそがチームのリーダーであり、クロムウェルの車長である。

 

「どんなヤツが来ようと、『見島流』は天下無敵だ。負けるわけ無ぇよ」

 

 

そんな二人と2両を、白のヘッドライトが照らす。軽やかな履帯の音を響かせて、2両の戦車が停車する。

 

 

「Ⅲ号...H型か?あれは...それと、Ⅱ号G型だな」

 

「...楽しみなの?」

 

舞花の顔には笑み。それも悪巧みをする子供のような、好奇心に溢れる笑顔だ。

 

「あぁ、勿論。県内最強は確実にこいつらだろうからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...だからこそ、戦う意味があるんだ」

 

夜の山の中で、『見島流』と『源流』の戦いが始まろうとしていた。




さて、新章『再編!戦車道チーム!』編の開幕はこういう形となりました。本当は道場破りまでもう少し間を持たせるつもりだったのですが、気が変わったのでそのまま入っちゃいました。

次回は早速戦車戦です。
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