ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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同日に2話連続投稿しています。前話『復讐心です!』を読まれていない方は、そちらを先に読まれることをおすすめします。


新学期です!

白のブラウスの袖に腕を通す。柔軟剤の香りが鼻を抜けると、気持ちが切り替わる。灰色のブレザーを羽織り、リボンを結ぶ。黒の眼帯も忘れずにつけて、スクールバッグとエナメルバッグを持って、アパートを出る。

 

歩きながら新調したリボンで髪を結ぶ。ローファーの踵が鳴るたび、気分が高まるのを感じる。

 

階段を降りると、皆が待っていた。無論、虎さんチームの皆である。

 

「おはようございます、夏紀さん」

 

「おはよー、新学期だね、新学期!」

 

「...おはようございます」

 

「おはおは。いい天気だねえ」

 

皆がそれぞれの性格に溢れる挨拶をしてくれる。

 

「おはよう、皆」

 

 

...あぁ、いつもの日常だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「...お、今年は私たちが同じクラスかぁ」

 

「よろしくね、隊長!」

 

「ぶ、部活以外の時に隊長はやめてよ...」

 

クラス替え。今年は涼子さんと琴音さんが同じクラスだ。

 

「私はお隣です。違うクラスですけど、遊びに来ますね」

 

「うん。いつでもおいで〜」

 

華蘭さんは手を振って隣の教室へ。私たちも自分の教室へ入る。

 

 

 

窓際の自分の席に座る。隣の席には偶然琴音さんが入った。

 

ふと窓の外から見ると、今日行われる入学式に出席する親や1年生たちの姿が見える。

 

「皆初々しいねえ」

 

「私たちにもあんな時期があったんだね」

 

微笑ましく思いながらぼーっと眺めていると、ふと違和感のある光景が見えたように感じた。

 

「...あ、あれって!」

 

「クルセイダーと...クロムウェル...まさか!?」

 

仮にそうだとして、入学初日に戦車で登校するとは。分かってはいたが大胆な少女たちだ。

 

窓から顔を出して見回してみると、グラウンドを歩く舞花と海荷の姿が見えた。二人もこちらに気づいたようで、手を振っている。乗員たちも一緒だ。

 

「...心強い仲間が増えるね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入学式も終わり、部活のみんなと練習の準備をしていると。

 

「センパイ!お久しぶりです!」

 

舞花だ。海荷も一緒にいる。

 

「お久しぶり!何歳なのかと思ったら高一だったんだね」

 

「そうっすよ。驚かそうと思って言わなかったんすけど」

 

「よろしくお願いします。先輩方」

 

彼女たちに続いて、2両の戦車がぎゅらぎゅらと音を立ててガレージの前に止まった。

 

「コイツたち、持ってきたのはいいけど置き場がないんで、ここで使ってもらっていいっすよ」

 

「え、ホント?いいの?」

 

「ハイ!差し上げるってワケにはいかないっすけど、使ってもらう分には一向に構わないっす」

 

「ありがとう!じゃあ...そのまま、皆の乗機ってことでいいね」

 

予想外のところで戦車が増えた。まぁ、それはそれで結果オーライ。ラッキーだと思う事にしよう。

 

これで5両。目標の8両まで、あと3両だ。

 

 

 

 

 

ガレージにクロムウェルとクルセイダーを入れるスペースを作り、入庫したところで、ガレージの入口からひょこっと顔を覗かせる少女たちの存在に気がついた。

 

「...あれ?茜ちゃん?」

 

「先輩!やっぱり先輩だ!」

 

私に駆け寄ってきた初々しさの残る少女たち。彼女たちは私の出身校、維新中学校の出身で、半年間だけだが私と共に戦ったチームメイトだ。その中でもよく懐いてくれていた5人が、この学校に入ってくれたようだ。

 

「お久しぶりです!戦車道に復帰したって聞いてビックリしましたよ!」

 

茶のショートヘアに、グラスコードの付いた茶ブチのメガネを着けたこの少女は、各務原 茜。中学校の時は車長をしていた。見ての通り明るく、優しい心の持ち主だ。

 

「うん。夏摘と再会するためにね。そっちはどうだったの?」

 

「まぁ、なんとかなってましたよ。大会も準優勝まで行きましたし」

 

そう答えたのは黒のショートヘアに太めの眉毛が特徴的な少女、一宮 真知。中学校では装填手をしていたか。冷静であるが案外子供っぽい趣味のある可愛い後輩だ。

 

「へえ、やるじゃん。隊長は誰が?」

 

「私です私!」

 

「茜ちゃんが...頑張ったね。ちなみに優勝はどこだったの?」

 

「今年も出雲付属中です...やっぱりあそこは強いですね」

 

出雲高校付属中学。私が隊長として戦った時も、決勝の相手は出雲付属だった。

 

「...何はともあれ、皆にはⅣ突に乗ってもらおうかな。部員の整理が出来次第すぐに練習は始めるから。それまでは部内の雰囲気に馴染めるように頑張ってみて」

 

「はい!頑張ります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...驚きましたねえ」

 

「そうだね。まさかこんなに...」

 

道場破りの二人が率いる2チーム、それに私の後輩たち、更に加えて被服科チームと自動車科チーム、そして美術部の兼部チームと、6チームが組めるだけの人数が集まったのだ。

 

「...何はともあれ、これで人数に困ることはないわけだ。あとは車両が用意出来れば...」

 

合計8チーム。フル稼働させないと勿体無いし、溢れたメンバーが可哀想だ。

 

そんな時、机に置いていた携帯が着信音と同時に震え始める。

 

「...はい、三城です」

 

『こんにちは。元気してる?』

 

電話の相手はヴィヴィアンさん、もとい美穂子さんだ。アサギ技研の部長を任されて、日本中を飛び回っているとかなんとか。

 

『...この前言ってた戦車の件なんだけど、アテが出来たわ』

 

「...本当ですか!?」

 

『ええ。でもタダとはいかない。実力を見せてもらうわ』

 

実力を見せろ、とは。アサギ技研のワークスチームとの練習試合?公式戦の出場?

 

『...「知波単学園」と練習試合を組んであげるわ。あそこは今戦いに飢えている』

 

「知波単...ですか」

 

知波単学園。突撃と撃沈を繰り返す哀れなドクトリンを持つ学校であったが、今年度からはそのドクトリンを一新。西住みほに強く影響された変幻自在の戦術を基本とするチームになっているという。

 

『勝てば戦車を2両ほど援助してあげる。負けたら勿論ナシ。それでいい?』

 

「...はい!ありがとうございます!!」

 

電話を切り、小さくガッツポーズをした。

 

「...どうしたんですか?」

 

「皆を集めて!すぐに!」

 

 

 

 

 

 

 

ガレージに部員全員が集められた。新入生を含めてだ。

 

「えーっと...早速だけど、練習試合が決まりました」

 

皆が驚いたような顔を見せる。それも当然だろう。入って初日で練習試合など、どこの部活で有り得ようか。

 

「相手は千葉の知波単学園。時間がありませんので、戦車道経験者だけで試合には臨みます」

 

「知波単...簡単な敵では無さそうですね」

 

「はい。知波単は戦術に大きな革命を起こしました。未熟ですが、故に驚異です」

 

華蘭さんが言う。突撃だけの知波単は消えた。進化した知波単の戦闘力は未知数だ。

 

「私たち虎さんチームと山猫さんチームに加え、クロムウェル、クルセイダー、Ⅳ突の5両で臨みます。乗員はより一層練習に励むようにしてください」

 

決意を新たに、拳をぎゅっと握り締める。

 

「...パンツァー・フォー!」

 

新生アウトバーン戦車道部の始動だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

爆音と共に撃ち出された砲弾は、遠くに設置された的を確実に撃ち抜いていた。

 

『下村、お見事!』

 

「私にはもったいないお言葉です。砲手のおかげですので」

 

無線で与えられた言葉に返し、下村と呼ばれた少女は操縦手に指令、車両は再び進み始める。

 

斜めに削り出したかのような無骨な車体に搭載される、角形の鋳造砲塔。そこから伸びるのは五式七糎半戦車砲。75mmの新型砲だ。

 

「目標、11時方向。車両停止」

 

車両が停車すると、移動する目標を照準し、砲塔がゆっくりと旋回する。

 

「...撃て!」

 

他国のものと比較して、まるで拳銃かのように甲高く気味の良い音を立てて砲弾が打ち出される。その砲弾は寸分違わず的を射ていた。

 

 

 

「...すごいな、あの車両は」

 

メガネをかけてタブレットを見ているのは、知波単学園、隊長の西絹代。軍人らしい勇ましさと、お嬢様らしい淑やかさの双方を兼ね備えた文武両道の少女だ。

 

「...隊長!お電話が入っております!」

 

隊員の一人が一世代前の携帯電話を持ち駆け寄ってきた。西はそれを受け取ると保留になっていた電話をつなぐ。

 

「お電話代わりました、知波単学園隊長の西でございます」

 

『もしもし。お久しぶりです。アサギ技研の麻木美穂子です』

 

「おぉ、ヴィヴィアンさんでしたか!お久しぶりでございます!」

 

『...その呼び方はやめてくれるかしら。ところで...』

 

 

 

 

「...成る程、練習試合ですか。分かりました。早速準備に入ります」

 

電話を切ると、彼女は無線で練習中の各車に連絡をする。

 

『こちら西。全車、至急ガレージに帰投せよ』

 

無線を切った西の口元には笑み。まるで獲物を狩る狩人のような...

 

 

「...アウトバーン女子学院。相手にとって不足は無し!」

 

 




さて、『知波単学園編』です。私はアンソロジーやノベライズはリボンの武者以外読んでいないので、そのへんと噛み合っていない可能性がありますが、まぁあくまでも別だと思って読んでいただけるといいかと思います。
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