ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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長らく間が空いてしまいましたが、知波単戦の続きです。


一転攻勢です!

 

ぎゅらぎゅらと、鉄と鉄が擦れ合う音を立てながら一両の装甲車両が走る。低く構えたフォルムの車体から伸びるのは7.5cmの凶弾を放つ長身の砲。両脇にシュルツェンを構えるその様はまるで馬鎧をまとった軍馬だ。立体交差をモチーフにした校章を掲げるその車両は、Ⅳ号突撃砲。前生徒会チームの乗機であり、現1年生チームの車両だ。

 

「ここら辺でいいかな。止まって」

 

車両が停止し、旋回。町を見渡す高台にある空き地で、大学の私有地である。そこで射撃体勢を取り、敵を照準する。

 

「...見えるね。チト車」

 

橋の上には大型の砲塔を乗せた中戦車・チトが見える。チトが橋の上に居座り通せんぼしているせいで先輩たちがYC地点に釘付けにされている。このままでは良好な足を持つ敵遊撃部隊に回り込まれ、殲滅される可能性もあった。

 

「ちょっと距離がありすぎるかも。当たっても貫通できない可能性があるね」

 

真知の冷静な分析。かなりの距離がある上、敵はそれなりの装甲を有する中戦車。車体にキッチリ当てても貫通できない可能性は大いにあった。

 

「でも、威圧にはなるでしょ?あそこから退いてくれるだけでいいんだよ」

 

「...それもそうだね」

 

そう言うと、真知は照準器に額を当てた。昨年まで装填手だったが、ちょっとしたケガから砲手に転向した彼女は、少しの練習ですぐに頭角を現した。そんじょそこらの砲手よりは狙撃の腕はあるはずだ。

 

「...次、物陰から出てきたら撃つよ」

 

「おっけー。射線が通り次第発砲自由」

 

コトコトとエンジンの振動が伝わる車内に、しばしの沈黙。

 

 

 

風が吹き抜けるのと時を同じくして、衝撃と爆音がⅣ突の車内を揺らす。撃ち出された75mmの凶弾は、チトに吸い込まれるように飛び...

 

近くに着弾。チトには当たらなかった。

 

「目標から2mくらい左にズレてるね。風の影響かも」

 

指先をぺろりと舐めて、天に掲げる。ゴルフなどでもたまに見る光景で、風を観測するのに良い。指先を舐める風は、確かに左方向へ向かっていた。

 

「やっぱり。風が強いみたい」

 

「分かった。次は当てる」

 

再び照準器に額を当てた真知が、驚いたような声を上げた。

 

「敵中戦車、砲塔指向中!」

 

「構わないで、射撃用意!」

 

この低いⅣ突、更にハルダウンしている上にこの距離だ。当たるわけがない。

 

「...撃て!」

 

こちらの射撃とほぼ同時に敵も発砲。緩やかに左に逸れながら飛翔した砲弾は、チトの砲塔正面を叩く。対する相手の射撃は、こちらと同じく風に流されてか、左側先端のシュルツェンを1枚弾き飛ばして見せた。

 

「...やるね」

 

真知は感嘆の声を上げた。こちらは2発目だが、相手は初弾だ。おまけに地理的有利はこちらにある。相手の砲手は相当な腕だ。

 

「動くよ。お互いの実力は見せ合ったから、相手も多分動くはず」

 

その予想通り、チト車は橋を下っていく。ここで撃ち合うと利益がないという事に気付いたのだろう。それがこちらの狙いであったから、この作戦は成功と言える。

 

「敵のチトが動きました。橋の上はクリアです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...了解、みんなありがとう」

 

『いえ。支援部隊として、当然のことをしたまでですよ』

 

そんなマセた返事にクスリと笑って、咽頭マイクに手を添える。

 

「前進します。チトの射線が通っている可能性があるので、十分警戒してください」

 

『了解!』

 

パンターを先頭に、クロムウェルとレオパルトが続く。数的不利が顕著になってしまったが、質では劣っていない。少数精鋭であるこちらの部隊の特徴を最大限に活かし、フラッグを直接叩くしかないだろう。

 

「...舞花、お願いね」

 

『任せてくれよセンパイ。なんとかするからさ』

 

にっ、と歯を見せて笑う舞花の後ろ、車体右後部には青色の旗が揺れる。この試合のフラッグ車であることを示す旗だ。機動力と自衛力のバランスの良いクロムウェルにフラッグを任せることで、生存能力をあげる狙いがあってのことである。

 

「...今から敵陣に突っ込みます。総員、生き延びることを最優先に行動すること!」

 

速度を上げて、部隊は次の目標地点、SG地点へと進む。

 

住宅街に入る。敵車両の姿は依然見えず、待ち伏せへの不安が募る。知波単は2両以上の複数車両で繰り広げる機動戦に定評があるらしく、この市街地でもそう動くことが予想された。しかし、今のところ待ち伏せされている様子もなく、難なくSG地点へとたどり着いた。

 

『...妙だね。そろそろ来てもおかしくないのに』

 

「うん...まだ2両しか見えてないですもんね」

 

相手の車両はチトとハ号しか発見できておらず、恐らく全てチハであろう残りの8両は所在不明のままだ。その中には勿論フラッグ車も含まれており、発見しない限り戦況は動かない。

 

SG地点...自衛隊駐屯地の門をくぐる。そこには既に旧式となった61式や74式といった陸上自衛隊の戦車が不動状態で展示してあったり、戦闘ヘリや高機動車といった陸自の戦車以外の装備などが置かれている。

 

「...居た!チハ2両発見!」

 

右側宿舎の裏にチハ2両を発見した。フラッグはいなそうだ。二発の砲弾はどちらもパンターの砲塔に弾かれる。

 

「ここに敵が陣取っている可能性があります。ゆっくりと追撃し、フラッグを炙りだします!」

 

パンターを先頭にチハをゆっくりと追っていく。チハはあからさまにこちらを誘導しており、待ち伏せされていることが伺える。

 

「山猫さん、出来るだけ広場に出ないように警戒しつつ、敷地内の偵察をお願いします」

 

『了解』

 

山猫さんがパンターを追い越して前進していく。敵の射撃を受けながらもそれを躱し、懐に飛び込んでゆく。主力部隊もそれに続き、宿舎裏を出て敵の射線上に出る。

 

『敵フラッグ発見!施設反対側の宿舎裏だよ!』

 

この駐屯地は、中央グラウンドを挟んで2つの宿舎がある。そのうち南側、すなわち私たちが展開している側と反対側の宿舎の影に、敵フラッグは潜んでいたという。

 

「ありがとうございます。こちらも交戦開始しました。なんとか逃げ切って戻ってきてください!」

 

『がんばりまーす!』

 

そう言っている間にもチハたちとの交戦は続く。あからさまな足止めで、何か他に狙いがあると見ていいだろう。

 

「ひー...ふー...みー...よー...5両しかいないですね」

 

「...残り3両のうちフラッグが1両...2両が遊んでる状態だね」

 

華蘭さんと幹葉さんが言う。確かに目視圏内には5両しかおらず、残り2両の所在が気になるところだ。

 

「...フラッグを叩きに行きましょう。パンターを先頭に突っ込みますので、クロムウェルは正門から脱出、山猫さんはもう一度フラッグにまとわりついて足止めを。Ⅳ突は今何処にいる?」

 

『SG到着しました!どこに向かえばいいですか?』

 

「南側宿舎裏が撃てる場所に向かってください!」

 

『了解です!』

 

 

相手の砲火力では貫通が見込めないことは分かっているが、それでも吶喊するのは怖いものがある。それもフラッグを後ろに連れてだ。

 

「...行きます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちら西車!敵レオパルトと交戦中!援軍を要請する!」

 

『池田車、了解!すぐに向かいます!』

 

『玉田車も了解であります!』

 

弱い弱いと言われるチハではあるが、流石に軽戦車に負けるわけにはいかない。お互いの砲弾を弾き合う。

 

「...このままではまずいな」

 

相手は軽戦車とはいえ、同格の性能を持っている。このままではいずれ殺られてしまう。

 

『こちら下村車。自分が行きます』

 

チト車からの無線。しかし先ほどチト車はこちらとは逆方向へ走ったはず。もう到着するというのか。

 

耳をすませば、レオパルトのガソリンエンジン、チハのディーゼルエンジンの他に一つエンジン音がするのがわかる。南側、住宅街の方からだ。

 

「頼む!...みんな、もう少しの我慢だ!」

 

乗員を励まして、敵に向き直る。砲の向きと動きを見て、次の弾道を予測する。そして操縦手の肩を蹴り、砲弾を躱し、弾いていく。

 

チトのエンジン音が、少しずつ近づく...

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、乾いた音とともにアナウンスが流れる。

 

「アウトバーン女子学院、パンター中戦車、走行不能!」

 

「あっ...!?」

 

舞花は思わず声を上げる。目の前でとんでもない事態が起きたからだ。

 

展示されている61式の影から飛び出してきたチハが、パンターの側面に体当たりを敢行した。その際に砲が履帯に巻き込まれ、履帯が外れた。相手のチハも撃破判定が出たが、逆側から飛び出してきたチハの砲撃によって、パンターは撃破されてしまった。

 

「...そんなの、アリかよ...ッ!?」

 

砲弾の雨を回避しつつ、正門を飛び出す。相手のチハと、待ち伏せしていたであろうハ号が合流してこちらの追撃にかかってくる。もう長くは持たないだろう。

 

「頼むぞ...皆!」

 

揺れる旗。フラッグを任された責任が、額から冷や汗を滴らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれだけ撃ち合えど、決定打が打てない。お互いに援軍を待ち、戦いは持久戦の様相を見せていた。

 

 

「Ⅳ突はまだ!?」

 

『そろそろ射撃位置につきます!』

 

 

「下村!まだか!」

 

『すぐに到着します!』

 

 

火花が散る。チハとレオパルトがぶつかり合う。

 

西と寿璃の目線が合う。お互いに真剣そのものの表情。これ以上ないくらいに緊迫した空気が流れる。

 

 

 

 

 

 

見えた。すぐ南側の交差点にチトの姿。同時に東側体育館の陰からⅣ突が現れたのも見えた。

 

更には宿舎の西側・東側両方からチハが現れる。後はもう、運に身を任せるのみだ。

 

 

「...お願い!」

 

 

祈りながら、レオパルトはエンジンを唸らせて最大速で前進した。正面装甲がチハの側面にめり込み、チハを宿舎の壁に叩きつける。刹那、車体を揺さぶる3つの衝撃。レオパルトから白旗が上がる。

 

その直後、Ⅳ突の砲撃によって、チハからも白旗が上がったのだった。

 

 





正直、今回はあまり上手く書けた気がしません。もしかしたら今後書き直すことがあるかもしれません...
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