ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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少し走り気味かもしれませんが、ガンガン行きます!


新戦力です!

 

風のよく通る日陰で、2両の戦車が白旗を上げて停車している。かたやアウトバーンのレオパルト、かたや知波単のチハ旧砲塔だ。旧砲塔チハには青い旗が掲げられており、この試合のフラッグ車であることがわかる。

 

「...勝った...か」

 

寿璃はキューポラにぐったりとうなだれる。決して長い試合ではなかったが、密度の濃い試合だった。チハを見ると、知波単の隊長、西も同じように疲れきった表情をしていた。

 

 

 

 

 

「...勝った...んだ」

 

同様に、5両のチハを相手に逃げ惑っていたクロムウェルは、喉元に47mm砲を押し付けられた状態で停止していた。左右をチハに固められ、壁に叩きつけられたところで後ろから密着されたのだ。

 

「...危なかったよ、全く」

 

『ごめんね、舞花。無理させちゃって』

 

「...いや、構わないよ、センパイ」

 

へへっと笑ってみせる。今回は以前に比べて大胆さに欠ける戦いだったとは思うが、それでも間違った指揮はなかったと思う。

 

 

 

 

 

煙を噴くパンターをそっと撫でて、ため息を吐いた。

 

「...やられちゃいましたね」

 

「うん。まさかあんなところで...」

 

側面でもそれなりに距離があれば貫通される事はないと踏んでいたが、まさか突進で履帯をやられるとは。

 

「まぁ、勝てたし結果オーライなんじゃない?」

 

「...そうですね」

 

勝負は時の運。今日、勝負の女神が微笑んだのは、私たちだったのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました。途中まではいい感じだったんですがね...」

 

「そうですね...我々も、少し稚拙な戦術を見せてしまいましたかね」

 

あはは、とお互いに苦笑いする。西は頭を掻きながら続けた。

 

「...あそこで足止めをしている間に別働隊で挟んで、という計画だったんですが...何がいけなかったんですかね」

 

あそことは、きっと北側宿舎裏の待ち伏せポイントだろう。あそこで我々が交戦している間に自由に動かせる別働隊を使って挟み、フラッグを獲るつもりだったのだ。

 

「そうですね。少し誘導があからさま過ぎましたかね。足止めがしたい、という意思が透けて見えてました」

 

「成る程。勉強になります!」

 

「いえいえ。私も勉強させていただきました」

 

差し出された手を取り、ぐっと握手した。こうして、知波単学園との練習試合は、アウトバーン女子学院の勝利で終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春が過ぎ、夏に差し掛かろうかというところ。じわじわと気温も上がってきたアウトバーン学園艦上でのこと。

 

「久しぶり、夏紀ちゃん。元気してた?」

 

「お久しぶりです、美穂子さん。こっちはなんとかやってますよ」

 

長い長い銀髪を揺らす美穂子さんは、私の手を取り固く握手した。

 

「知波単との練習試合、見事だったよ。もっと苦戦してくれるかと思ったのに」

 

「いえ。見えてないだけでだいぶ苦戦してましたよ」

 

美穂子さんは昨年までの眠そうな印象とは打って変わって、出来るOLのような雰囲気を醸し出していた。実際頭も冴えるし知識もある人だし、頼りにできる人だ。何を考えているのかよく分からないが。

 

「...約束通り、戦車は手配してあるよ。もう少しでくるんじゃないかな」

 

美穂子さんが空を見上げる。遠くから、ジェットエンジンと思しき音が聞こえてきた。少しして、強まる風とともに現れたのは、超大型の輸送機。

 

「...C-5 ギャラクシー...ですか」

 

盛大な逆噴射の音を立てながら甲板上に着陸したのは、アメリカの大型輸送機、C-5A ギャラクシーだ。着陸したギャラクシーの後部ハッチが開けられると、そこから現れたのは、予想もしていなかった2両の戦車であった。

 

 

1両は非常に小さな戦車だ。濃い緑色の車体は非常にコンパクトで、垂直部分と曲面部分の複雑に入り混じったデザインの装甲が、多数のリベットで接合されている。砲塔はかの九七式中戦車チハのもので、ループアンテナが取り付けられている。

『四式軽戦車ケヌ』。帝国陸軍が少数を生産し、本土決戦に備え温存していた車両のうちの1両であり、高速戦車として偵察や陽動に駆り出すことが出来そうだ。

 

 

もう一両は、対照的に非常に大きかった。隣に並んでいるのがケヌ車であるということもあるだろうが、砲塔が、車体が、あらゆる箇所が大きい。長身の砲は高い火力を予感させ、分厚い防盾や丸みを帯びた砲塔は優れた防御性能を発揮しそうだ。

『T29重戦車』。アウトバーン女子学院にとって待望の重戦車であり、初めて得た敵重戦車と真っ向から殴り会える車両である。

 

 

「...こんなにいい車両、頂いちゃっていいんですか...?」

 

「大丈夫。この子達はガレージの奥に眠ってたスクラップを、社員たちが趣味でレストアしただけの、いわばタダの車両よ。ありがたく受け取っておきなさい」

 

「...ありがとうございます!」

 

深々と頭を下げると、美穂子さんは「まぁまぁ」と顔を上げるよう促す。

 

「ところで、今年の全国大会には出るの?」

 

「いえ...まだ練度不足ですし、私たちは今年度の冬季杯を見据えてますから」

 

「...そっか。ちょっと面白い話を小耳に挟んだんだけど...出ないなら関係ないわね」

 

思わせぶりな言葉が少し引っかかるが、関係ないと言うなら関係ないのだろう。

 

「...じゃ、頑張ってね。また困ったらいつでも連絡してね」

 

「色々ありがとうございます!」

 

美穂子さんはウインクすると、ギャラクシーに便乗して飛び立った。滑走路に残された2両の戦車を見て、私は感情の昂ぶりを覚えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時々ギヤが噛み合わずに不快な音を立てながら、グラウンドを走り回るケヌ車。乗り込んでいるのは戦車部の一員で、美術部との兼部で所属している厳島さん率いる美術部チームである。

 

『隊長!この戦車難しくないですか!?』

 

「だから練習して貰ってるんだよ。頑張って!」

 

『は、はぁ〜い!』

 

椅子に座って、その微笑ましい光景を見ながらタブレット端末を弄っていた。今後の計画を立てているのだ。

 

「あと一両ですね。何かアテがあったりするんですか?」

 

「んー...今度ウチの学校と提携する学校の話、聞いてる?」

 

「あぁ、知ってますよ。えーっと...『バラトン水産技術学院』...でしたっけ?」

 

バラトン水産技術学院。漁業・船舶・海洋科学の3学科をメインとした学園艦で、日本近海には殆ど居らず、基本的には遠洋に出向いて漁業を行っているという。そんなバラトン水産が、アウトバーンに対して姉妹校提携を持ちかけ、こちらが受けた、ということらしい。

 

「そこが、去年から戦車道やってるらしくて。もしかしたらー...くらいに思ってる」

 

戦車の提供を持ちかけて、受けてくれればラッキー、程度のものだ。

 

そんなことを考えていると、カバンの中でスマートフォンが鳴動している事に気がついた。取り出してフリックし、電話を取る。

 

「もしもし、三城です。...はい、お世話になります」

 

噂をすれば何とやら、相手はバラトン水産の戦車道チーム隊長であった。

 

『バラトン水産戦車隊隊長、北島 千尋と言います。三城さんに一つご相談があってお電話させて頂きました』

 

「私が力になれることでしたら、何でもお伺いしますよ」

 

『...私たちと、練習試合をしては頂けないでしょうか』

 

...来た!またとないチャンスだ。

 

『貴女方が戦車を探しているという話を聞きまして。こちらから一両提供させて頂く代わりとしては何ですが...』

 

「分かりました。受けて立ちます」

 

少し食い気味に返答する。戦車までかかっては最早断る理由が無い。

 

『...ありがとうございます!では...』

 

 

 

 

日取りなどを話し合い、電話を切る。胸元で小さくガッツポーズをした。

 

「...練習試合が決まったよ!」

 

「...え?」

 

こうしてはいられない。全員集めてすぐに作戦会議だ。

 

 

 

 

「えーと...ここのところ何度も組んで申し訳ないんだけど、練習試合が決まりました。相手はバラトン水産技術学院。何でもハンガリー軍の戦車を使うんだとか」

 

「ハンガリーって...またマイナーな」

 

ハンガリーは、小国ながら自国生産の戦車を多数保有していた。そしてそれらはそれなりの性能を有しており、数さえ揃っていれば大戦中期のドイツ軍並みの戦力は持てていたかもしれない。

 

「例えばどんな車両があるんだ?」

 

舞花が言う。確かにそこは気になるところであろう。

 

「そうだね...Ⅳ号っぽいのとか、38(t)っぽいのとか、Ⅲ突っぽいのとか...」

 

「分かりやすいような、分からないような...」

 

実際そんな感じだ。火力も、装甲も、走行性能もだいたいそんなもんだから、この例えはほぼ的を射ていると言えると思う。

 

「今回からは美術部チームと自動車科チームに加わってもらいます。車両は美術部がケヌ車、自動車科がT29で行こうと思います」

 

自動車科チームのリーダー、瀬玲奈さんが親指を立ててみせる。

 

「戦車の運転には慣れてるからさ、任せてよ!」

 

この学校の自動車科には、なんと『戦車専攻コース』というコースがある。これは新旧問わず様々な戦車の知識を身につけるための学科で、自衛隊や戦車ディーラーへの道が拓けるという。

 

「はい。ハンガリー戦車は、高い火力を持つ車両も少なくありません。必然的に重戦車の重要性が上がってきますので、頑張ってくださいね」

 

「おうよ!」

 

 

「では、作戦会議に入りましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竿を引くと、針に引っかかったカツオが宙を舞い、甲板に叩きつけられて生簀へと流れていく。針をもう一度海面に投げ込むと、すぐさまカツオがかかり、また竿を引く。

 

この学園艦で「へのり」を務める私、北島千尋は、カツオ遠洋漁業班のリーダーであり、同時に戦車道チームのリーダーも務めていた。授業の間、戦車道の事が頭から離れず、今日は何度もミスを犯した。

 

カツオのかかりが渋くなった所で今日の操業が終了。放課となった。

 

「ちーちゃん、オツカレ」

 

「あ、ゆーちゃん。おつかれ〜」

 

私のことを『ちーちゃん』と呼ぶのは彼女、瀬戸優奈ただひとり。私の唯一無二の親友であり、私がただひとりあだ名で呼ぶ人物であった。

 

「今日は元気ないね。どーかした?」

 

「んー...どうかしたって程じゃないんだけど、ちょっと戦車道が気になって授業でミス連発しちゃって」

 

「そっか。まぁそんな日もあるよ。じゃあ、戦車乗って鬱憤晴らそうよ」

 

「...そだね」

 

ゆーちゃんといると、どんな悩みも些細なことに思えてくる。そんな包容力が彼女にはあった。

 

 

ガレージのシャッターを開けると、そこには我が学園の戦車と、その戦車に乗り込む仲間たちの姿があった。

 

挨拶をしてくれるみんなに挨拶を返しながら、私は自らの乗機へと近づく。

 

リベット留めの車体。長身の主砲を装備するためにかさ増しされた砲塔上部。設計は少々古臭いものの、その戦力はホンモノである。『トゥラーンⅢ重戦車』。重戦車とは言うが、実態はⅣ号H型等と同じ高機動・高火力の中戦車といったところだ。

 

シュルツェンは装備しておらず、若干古臭く見えるボギー式のサスペンションがむき出しになっている。迷彩色に塗られたそれは、長砲身も相まって勇ましさを醸し出しており、頼りがいを感じる。

 

「...今日も、行こっか」

 

練習試合は2週間後。アウトバーン女子学院のホームグラウンド、萩市街地で行われる。





少し走り気味に進めていますが、特に意味はありません。書きたい事を書きたいタイミングで書いているだけです。w

さて、次の練習試合の相手は『バラトン水産技術学院』。使用戦車はハンガリー戦車です。下調べが足りていない描写があるかもしれませんので、優しく教えてやってください。
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