ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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クロスカウンターです!

「兎に角、建物を背に防衛戦を展開して、敵を逆に挟み撃ちにできればベストかな」

 

国道191号を北へ進むアウトバーンの戦車隊。灯台のモチーフが特徴的な飲食店『萩心海』の駐車場を目指していた。

 

T29を先頭に弘法寺前交差点に差し掛かった時、左方向...西側の通りに敵を発見した。

 

『敵発見!トゥラーンⅢとⅢ突です!』

 

「出たな、フラッグ...!交戦します、地下道の陰に」

 

地下道入口の陰に車体を隠し、T29の頑強な砲塔のみを露出させる。敵のトゥラーンⅢとⅢ突も、同じようにホテルの陰に身を隠して射撃体勢を取った。

 

「砲撃開始!」

 

互いの砲が火を噴く。相手の砲弾はT29の砲塔に難なく弾かれ、こちらの砲撃はホテルの壁面に大穴を穿つ。T29が少し下がり、パンターとⅣ突も同じように砲撃を行う。

 

 

...しばらく砲撃の応酬が繰り返された。互いに素晴らしい対戦車攻撃力を持ちながら、防御姿勢を崩す事が出来ずに決定打が打てない。

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

敵車両が居座るホテル前の交差点よりひとつ前の交差点...私たちのすぐ目の前から、1両の戦車が飛び出してきた。

 

カラーは敵のトゥラーン等と同じ深緑。切り立った正面装甲と防盾、長く延びる砲身、大柄な車体と幅広の履帯。

 

 

「ティ...ティーガー...!」

 

ドイツの猛虎、ティーガーⅠ。装甲・火力ともに申し分なし。その割に走行性能も高く、様々な国の兵士を阿鼻叫喚に陥れた強力な重戦車である。

 

ちょうどT29はトゥラーンに対して砲撃を行った直後であった。装填手も全力で装填するが、105mmの砲弾はそう簡単には装填できない。半ばドリフトするようにこちらに接近してきたティーガーⅠは、Ⅳ突の至近での砲撃を躱しT29に肉薄。そのアハト・アハトを喉元に突きつけた。

 

 

炸裂音、そして白旗。T29重戦車はその火力の代償を支払うこととなったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『よっし、うまくいったよちーちゃん』

 

こちらもこうはしていられない。前進して、敵偵察部隊が帰ってくる前にケリをつけたいところだ。

 

「行くよ、前進一杯!遊撃隊及び支援部隊は頭を押さえる用意を」

 

『了解!』

 

火力支援につけていたⅢ突は離脱して支援部隊と合流させる。こちらはゆーちゃんのティーガーと合流し敵フラッグを叩く。追いかけて追いかけて、味方支援部隊の網の中に追い込む。

 

「『定置網作戦』行くよ!」

 

状況は優勢。このまま数的有利を活かして押し込めればベストだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アウトバーンの偵察部隊は、集合して三角州の西側を走行中だった。

 

「早く援護に行かないと...何処から侵入しようか」

 

「262は多分警戒されていますよね。一番北側なんてどうでしょうか」

 

最も北側に位置する橋は、河口にかかっているため最も長い。しかしながらこちらの開始地点方面の奥深くであるため、敵が陣取っている可能性は薄いだろう。

 

「おっけー。じゃあそうしよう」

 

偵察部隊長を任された寿璃さんの指揮で、偵察車は北へと走る。窮地に陥ったフラッグを救援できるのは、私たちしかいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ⅳ突とパンターは広い中心市街での戦闘を避け、味方偵察部隊との合流を迅速にすべく北側への退避を目指した。

 

「何とかして合流しないと、この状態は...」

 

まずい。まずすぎる。後ろから迫るのはこちらと同等の機動力を持つトゥラーンⅢ、足こそ及ばないが装甲と火力で溝を開けられているティーガーⅠ、それにⅢ突。こちらの背面装甲など有って無いような物。どの車両の砲撃でも貫徹されてしまうだろう。

 

「フラッグ、次右折します。クジラさんは次の路地右折」

 

『了解』

 

2両を別々に動かすことでこちらの動きを読みにくくする。『もしかしたら』の可能性を増やすことで、敵の作戦行動の自由を奪うのだ。

 

「でも...市街地に入ると待ち伏せされる危険性が高まります。相手の支援部隊は全車両健在ですから...」

 

「それでも、だだっ広い場所を進むよりはマシだよ。数的不利はこっちのほうが和らぐ」

 

白壁の町並みに、ジャーマングレーの戦車が2両進入していく。それにオリーブ色の戦車たちが続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変な気配だ。川沿いを北側に全速で進む偵察部隊に対して、一切の妨害が加わらない。

 

「...考え過ぎか」

 

どう考えても、今市街地に戦力を集中投入し、一気に決める方が現実的だ。

 

「こちら偵察部隊、北端に到着。敵影は無し」

 

『了解!十分に警戒しつつ、三角州へと移動してください!』

 

北端の橋は、河口にかかっている分ほかと比べて長い。身を晒す時間が長くなるのは喜ばしくないが...

 

「行かなきゃ仕方ないよね」

 

レオパルトを先頭に戦隊がゆっくりと移動を開始したときのこと。

 

轟音。煙とアスファルトの破片が、砲撃を受けていることを瞬時に理解させた。

 

「対岸に敵影!数は少なくとも3以上!」

 

着弾はほぼ同時に3発。そしてすぐさまもう3発、後方より撃ち込まれた。

 

『後方に敵!トルディⅡa、トルディⅢ、35Mです!』

 

「挟まれた!?」

 

攻撃を行ってこなかったのはこの決定的チャンスを得るため。もはや偵察部隊は絶体絶命であった。

 

『松岡さん!?どうしますの!?』

 

「く...っ、このまま橋を突破します!全車、全速前進!」

 

無謀だった。しかし、今は1分、1秒でも早く市街地に戦力を届ける必要がある。それほどに切迫した状況に陥っていた。

 

各車、陣形を無視して最大速で橋へとなだれ込んでいく。

 

レオパルトの隣で、クロムウェルが被弾。黒煙を吐いて走行不能となる。

 

そして同じようにケヌ車も被弾。欄干に衝突して停車した。

 

之字運動をしながら尚も走るレオパルトとクルセイダー。その2両だけは、奇跡的に敵の包囲網を突破することに成功した。敵の練度があまり高くないこともあるが、むしろ運の要素がデカいだろう。

 

「こちら偵察部隊!北端の敵布陣を突破!今から援護に向かいます!」

 

『了解!こちらもここでカタをつけます、指示通りに動いてください!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

音が聞こえる。この角に...

 

 

炸裂音。75mm砲を得物とするズリーニィⅠの砲撃は、すんでのところで急制動をかけたパンターの正面装甲を舐める。そして後方から来たクルセイダーがそれを撃ち抜いた。

 

「ナイス海荷!その調子でお願い!」

 

『任せてください。まだまだ...!』

 

市街地を、互いに連携しつつ走り抜ける。時間はあまりない。敵の駆逐戦車隊が再び体勢を整える前に決める必要がある。

 

「フラッグを囮にします。Ⅳ突はパンターの後ろに、レオパルトは敵駆逐戦車隊に陽動をかけてください!」

 

『了解!』

 

「『クロスカウンター作戦』展開します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、バラトン水産フラッグ車も、似たようなことを考えていた。

 

あくまでも練習試合。勝ちにこだわるならもっとやりようはあるが、試してみたいことがあった。

 

自らの作戦や、それを遂行する技量。それを試してみたかった。

 

「...やるよ、ゆーちゃん!」

 

「うん、行こう、ちーちゃん」

 

トゥラーンとティーガーⅠが、戦列を離れて2両で敵の追撃に向かう。勝負の行方が決まる、最後の決戦に...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負の舞台に選んだのは、すぐそばの一本道。あまり逃げ惑っていても敵に時間を与えるだけだし、ここでも『クロスカウンター作戦』は十分に実行できる。

 

道路のど真ん中に停車したパンター。その目の前にトゥラーンⅢがやってくる。相手の思惑は分からない。しかし、相手もこちらと同じことを考えているのなら――――

 

 

 

 

「撃て!!」

 

 

 

先に号令をかけたのは私だった。パンターの75mm砲が火を噴く。必殺の凶弾は寸分の狂いもなくトゥラーンに吸い込まれて...

 

 

路地から現れた巨体に弾かれる。ティーガーⅠだ。そしてティーガーⅠが放つ88mmの砲弾もまた、パンターを正確無比に照準していた。

 

しかしそれは、路地から飛び出してきたクルセイダーに当たる。当然だが、クルセイダーからは白煙と白旗。...しかし、ここでひとつ誤算があった。

 

「これは...煙幕!?」

 

クルセイダーに撃ち込まれた砲弾は、煙幕弾であった。たちまち視界を奪われる。何か、来る...!

 

 

 

 

 

 

「いっけぇぇええええええッ!」

 

 

オリーブ色の車体が飛び出してきたのは、すぐのことだった。75mmの長砲身をしっかりとパンターの脇腹につきつけている。

 

北島さんの顔に笑みが浮かぶ。この勝負、勝った、と――――――

 

 

しかしそれはまた、私も同じだった。

 

「勝つのは、私だ!」

 

トゥラーンが砲弾を放つ寸前。後方に隠れていたⅣ突が、その75mm砲で敵の正面を貫き、白旗が上がる。

 

 

『バラトン水産技術学院、トゥラーンⅢ、走行不能。よって、アウトバーン女子学院の勝利!』

 

 





バラトン水産戦、いかがだったでしょうか。少し内容が薄かったですかね。

ですが、バラトン水産にはまだ出番がある予定なので、もう少々お付き合いください。
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