ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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戦車のサイズや強さ等は、個人的なイメージで書いていることが多いです。本来ならこんなに強くない!とか、流石に弱く書きすぎだろ!ってところもあると思いますが、勘弁してください。


終わりは始まりです!

試合結果に、私は一瞬何が起こったのかわからなかった。

あの射撃姿勢、距離、角度。間違いなくブラックプリンスの装甲は貫通できているはずだ。側面は硬いとはいえ旧式戦車のそれであり、被弾経始は全くもって考慮されていない。パンターの75mm砲を垂直に撃ち込めば確実に撃破できるはずなのだ。

 

煙が晴れ、視界を取り戻した時に、その疑問は解決された。

「...してやられた」

このタイミングを狙われていたのだ。パンターの75mm砲の砲身は側面装甲ではなく砲塔に照準を合わせていた。それはブラックプリンスの17ポンド砲が、こちらの砲を叩いて照準をずらしたことが原因と考えられる。対する17ポンド砲は正確に側面を照準しており、着弾点はぷすぷすと黒煙を上げていた。

つまり敵の車長であるヴィヴィアンの描いた筋書き通りに踊らされ、予定された未来に向けて誘導されていたわけだ。戦略を読めず、弱点を晒す戦略に打って出た、車長である私のミスだ。

「ごめんなさい...砲を叩かれて、照準が」

幹葉さんが申し訳なさそうに言う。しかし彼女に責任はない。照準は狂いなく敵側面を狙っていたし、砲撃タイミングも間違ってはいなかった。

「いや、今回は私のミスです...相手にまんまと誘導されました」

「そんな気負わない方がいいって。アレしか私たちに取れる戦法は無かったと思うよ」

琴音さんがそう言う。確かに側面へ回り込むしかなかった。そう言われて、気が楽になった気がしないでもない。

「とりあえず降りましょうよ、ススだらけになっちゃいますよ」

「...そうだね」

気に病んでも仕方がない。とにかく前を向こうと決めて、撃破されたパンターから降りた。

 

 

 

「危なかったよ...いい戦いだった」

試合前とは別人のように活性化したヴィヴィアンさんと握手をして、健闘をたたえ合う。

「...読んでたんですね、最後」

「ん...まぁ、いくつかある戦術のうち、一番上手く決まるであろう戦術を考えた結果だよ」

その選択を瞬時にできる能力や、それを先読みし実行に移せる行動力。それがヴィヴィアンさんの強さなのだと思った。

「じゃあ、また会いましょ。...冬季杯でね」

ブラックプリンスに乗り込み、キューポラから手を振るヴィヴィアンさんに、手を振って別れる。

「私たちも帰ろうか、皆の元に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちはドラゴントレーラーに乗せられた戦車たちの前で集合し、反省会を行っていた。

「...今回の敗北は、戦車性能の差、そして戦術の稚拙さがあったと思います。フラッグで一対一なんて、今考えれば無謀だったかもしれません」

「そうね。やはり自走砲2両という偏った編成は良くないと思うわ」

「そうです。会長の言うとおり、今の編成は偏りすぎです。ですから、何両か売却して、新たに偵察戦車を買うことにしました。これに関してはテニス部チームに乗ってもらおうと思っています」

10突も確かに有用かつ強力な戦力だ。しかし自走砲が3分の1を占める現在の編成では冬季杯のような厳しいステージで戦い抜くことはできない。戦術の幅が狭まりワンパターン化してくると、戦術が研究されやすくなり、試合を重ねるごとにどんどん不利になってしまうのだ。

「どんな戦車を?」

「それは...学園艦に戻ったら多分わかりますよ」

オーバーホールをお願いしていた会社と同じところに委託してあるので、そんなに遅くはならないはずだ。

「戦術は、これからアウトバーン校に合わせたスタイルを確立していこうと思っています。冬季杯までには、必ず...」

ぎゅっと手に力を込めた。チリチリと痛む右目に、夏摘と過ごした過去の情景が映る。

 

その時、私の握りこぶしにいくつもの手が重なった。それは同じ一班の皆の手。暖かくて、安心できる温度。

 

「...この試合はまだ始まりに過ぎません。頑張っていきましょう!」

 

皆の頼もしい返事に、気が付くと私は笑顔になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...お、情報出てる...いつもどおりのメンバー...ん?」

夏摘が見ていたのは高校戦車道全国大会のエントリーリスト。そろそろ始まるのでトーナメントまで組まれている。常連校たちに加えて今回は見慣れない名前があった。

「大洗女子学園...?初めて見る名前だな。どれどれ...」

前情報によると、強豪校、聖グロ相手に善戦した新興校なんだとか。何でもあの『西住流』家元の娘である西住みほが車長を務めるチームらしい。編成は今までに見たことがないようなものだった。統一性はゼロ。戦力としても頼りがいのないもので、Ⅳ号、M3、Ⅲ突、38(t)はまだいい方だ。第一次大戦時の骨董品である八九式中戦車なんてものまで引っ張り出しているのだから、もはや戦力として成り立っているのかも怪しいところだ。

「初戦の相手はサンダースかぁ...可哀想に」

戦車の質も量も違いすぎる。勝ちは絶望的と思われる。

 

他に面白そうな情報もないので、SNSを開いて情報収集に勤しむ。するとまとめサイトの広告に気になるものを見つけた。

 

『冬季杯にダークホースキタ――(゚∀゚)――!!』

 

「やっぱり注目するよね...ブリ校相手にあそこまで善戦するなんて誰も考えてなかっただろうし」

私立ブリテン高校は優秀な戦車と優秀な車長を擁する強豪校だ。金銭的余裕が無く大規模な大会には出てこれないが、参加車両5両以下の小規模戦等では無類の強さを発揮する。それに対し自走砲2両、中戦車1両で善戦したアウトバーン校は非常に優秀な高校と言える。特に車長の指揮能力には目を見張るものがある。

 

「面白くなりそうだね...楽しみだな」

 

冬季杯申し込み期限まで、残り1週間を切った頃。季節は梅雨を終えて夏に入ろうとしていた。




次回は少し、他の冬季杯参戦校を描こうと思っています。時間軸が行ったり来たりするかもしれません。
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