ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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今回は冬季杯にてライバルとなる出場校の紹介です。ストーリーの中で人物の紹介をするのも難しいと考え、こういう形式にしました。ネタバレにもなると思いますので、それが嫌な方は飛ばしていただいても大丈夫です。

なお、この回は主人公たちが直接関わっていないので、敵戦車の事情を主人公たちは知りません。


ライバルたちです!

下関市街地の荒廃したアスファルトを踏みしめてゆっくりと進む1両の重戦車。特徴的な形状の前面装甲はアイロンのような三角形を描いており、限界まで被弾経始を突き詰めたデザインであることが伺える。この戦車は、ソ連が終戦間際に完成させた、重戦車の決定版とも言える戦車、『IS-3』。IS-3以降のISシリーズに大した進歩が無かったことを考えると、IS-3こそがソ連の考える重戦車の最終系であるとも言えるのだろう。

 

そんなIS=3の前に路地を左折して飛び出してきたのは、全面に渡り傾斜装甲が採用された中戦車。側面に取り付けられたシュルツェンが特徴的な『T-44』、その100mm砲搭載モデル『T-44-100』だ。ボディサイズに見合わない長砲身を持つ車両で、中戦車とは思えない高火力が特徴だが、その砲の反動をボディが受け止めきれないという欠点を持つ。しかし高い機動力、傾斜装甲とシュルツェンがもたらす防御力、100mm砲による高火力を持つT-44-100は、優秀な中戦車と言えた。

 

半ばドリフトするように飛び出してきたT-44に照準を合わせ、IS-3が発砲する。122mm砲は強力な火砲で、直撃すれば中戦車など一撃で屠る威力を持つ。しかしT-44はボディを微妙に傾斜させシュルツェンを以て受け止めた。そして急減速から後方に回り込んで一撃。だがIS-3の乗員の練度も相当なもので、車両を旋回させ、後部と比べて頑強である側面装甲で受け止める事に成功した。

「落ち着いて対処!全速力で旋回しながら再び敵の後部をとります!」

T-44のキューポラから身を乗り出して指揮を執るのは、隊長の越前 紀伊。変幻自在の戦術を持つ優秀な指揮官だ。茶色のツインテールを揺らしながら、下ブチメガネを通してIS-3をしっかりと見据えていた。

「押さえ込むわよ!絶対後ろを晒さないことっ!」

IS-3の車内で指示を出すのは車長の志摩 伯耆。銀髪に映える赤のカチューシャがトレードマークの少女で、仲間思いの良い車長だ。冷静な判断を持ち味とするクールな少女でもある。

「...もう一発凌いだら離れて一撃。いいね?」

「うん。任せて〜」

場の空気になじまないゆるーい声で答えたのは砲手の伊賀 上総。黒髪は激しく遊んでおり、ふわふわしたイメージを受けるが、砲撃のウデは行進間射撃の命中精度80%オーバーを誇る驚異のものだ。

 

「...撃て!」

旋回で後部を取ったT-44。100mm砲はしっかりとIS-3の後部を捉えていた。

激しい砲撃。土煙を上げて着弾する。しかし、IS-3はそこにはいなかった。急加速で砲撃を躱したのだ。

「ホント...無茶苦茶なんだから...!回避!」

 

T-44は持ち前の機動力を活かしIS-3のキリングレンジから逃げる。しかし、上総はそれを許すほど生半可な腕ではない。

「出番よ、いつでも撃ちなさい!」

「了解」

先ほどの空気は何処へやら。キリッと引き締まった返事に続き、殆ど照準時間を取らない高速の砲撃。その砲弾は確実にT-44の側面装甲...シュルツェンを弾き飛ばした部分に着弾していた。無論、T-44は走行不能。

直後、IS-3の後部で砲弾が弾ける。音、爆発、煙ともに相当なものだ。かなりの大口径なのだろう。

 

IS-3の遥か後方には、大口径砲を持つ自走砲がいた。大質量弾で敵の装甲を『叩き割る』、SU-152自走砲だ。それなりの機動性、前面傾斜装甲による防御性能、そして言わずもがな152mmの徹甲榴弾が生み出す超高火力。火力支援能力を求められる自走砲に必要とされる能力の全て揃った優秀な自走砲だ。

 

彼女たちは、冬季杯における優勝候補筆頭『戦練高等専門学校』。強力なソ連戦車と優秀な指揮官を有する新興校だ。この下関市街地演習場を保有しているのは戦練専だし、冬季杯の運営もそうだ。とにかくこの戦練専という高専は、非常にお金持ちなのだ。それ故にこれだけ強力な戦車を揃えることができた。それに専門学校であるために練度が高く、今年設立だが練度では黒森峰やプラウダのそれに匹敵できるであろう。これからが怖い高校でもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下手な国際規格コースより大きなサーキット。ここは『吉森工業高等学校』学園艦の甲板上に設けられた施設で、生徒たちの練習場として利用されている。

70km/h前後の高速で走っているのは、BT-7快速戦車。この学校が戦車道の他にもタンク・アタック等のタイムアタックイベント、不要装備を外し極限まで軽量化してのタンカスロンなど、様々な用途に仕様する車両で、整備科の実習車両として多数を保有している。

彼女たちはこの高校で車両整備を学んでおり、特に戦車においては進路でも有利になっている。プロ戦車チームや戦車ディーラーにも多数の卒業生を排出しており、それらのコネを用いて強力な戦車を何両か手に入れている。

「2コーナーインに付けてないよ!もっと寄せろー!」

無線を通してそう叱責するのは隊長であるマクラーレン。オレンジの髪が特徴的で、非常に男勝りな性格をしている。

「そんなこと言われてもこれ以上はムリっすよー!」

そう返したのは今BT-7をドライブする、隊長車の操縦手、ロータス。どこぞやのパスタの国の高校にも似たような性格、口調の副隊長がいたような気がしないでもないが...まぁそんなことはどうでもいいところだ。

そんなサーキットにもう一両戦車が入ろうとしていた。カモフラージュ塗装...『サイケデリック・ペイズリー』と呼ばれる渦状のモノトーンカラーで塗装された、パンター中戦車だ。

「お、アレもロールアウト終わったんだね...ロータス、もう帰ってきていいよ!お化けが入ってきたから」

「了解ー!」

BT-7はその周回の最後にピットレーンへ。それと時期を同じくしてパンターが甲高い音を立ててコースインする。

 

「...アレは、有効な戦力になると思うね。断言できるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

練習試合が終わる頃、一台の18t重ハーフトラックが輸送船から仙崎港に降り立とうとしていた。その18t重ハーフトラックの荷台には、鈍色の軽戦車が乗せられていた。

「...それにしても、なんでコイツなんだか。Ⅱ号とかじゃダメなのか?」

戦車リペアショップの代表がそう呟く。それもその筈。この戦車は非常にマイナーであり、誰も見向きもしていなかったものだからだ。決して弱くはない。しかしマイナーさから倉庫の奥で眠っていたのだ。それを先日レストアして、今日持ってきたのだ。

 

「ま、何かしらの理由があるんだろう。コイツの活躍を、楽しみに待っとくかね」

 

隊員たちへのお披露目まで、あと数時間となっていた。




次話では時間を一気に飛ばして、冬季杯近くまで行きたいと思っています。あくまで予定なので、変更するかもしれません。

※追記 2016.2/2
新車に関する矛盾点の改訂を行いました。
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