ガールズ&パンツァー 独眼車長の奮進   作:綾春

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※問題箇所の訂正がされています。過去の話と矛盾する点や問題点がありましたら指摘をお願いします。


新たな戦いです!

疲れきって、皆眠りについた帰路。私はマウルティアの最後部から離れていく萩市の風景を見ていた。私が生まれ育ったこの街は、同時に私の心の傷全てが詰まった場所なのだ。だから私は学園艦のあるアウトバーン校に入学することで全てを忘れようとしていた。そんな恋しくも憎らしい街は、半月の湾と白壁の映える綺麗な風景をしていた。

「...妹さんに、会えるといいですね」

車内から声が聞こえた。それは幹葉さんのささやくような声。

「...そうだね。そのために、もっともっと強くならなきゃ」

今日の負けは、明日の教訓。もっともっと強い敵と戦っても勝てるようになるためには、私たちが強くなるしかない。それは簡単な道ではないだろう。だが、そんな苦難の道こそが、『源流』が輝くに相応しいステージなのだ。

「...諦めたら、ダメだもんね」

「...ですね」

マウルティアは峠へと差し掛かる。萩市の町並みは森の中へと消え、どこか切なくなる。

「だから私、ついていきます。そしてきっと隊長の『目』になってみせます!」

私の失われた右目に、鮮やかな情景が映る。昔の記憶だ。夏摘と走り回り、じゃれあった日々。そんな遠く懐かしい景色はすぐに色を失い、再び半分の視界は黒に染まる。しかし、昔のようにそれだけで涙するような人生はもう終わりだ。もう、すぐに会えるのだから。

「...うん。私も頑張るよ。だから、着いてきてね」

私の差し出した手を、幹葉さんはそっと取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仙崎港。綺麗に整備された港に2台のマウルティアが到着した。既にブリ校の学園艦は仙崎港を発っており、そこにはぽつりと低く構えたアウトバーン校学園艦の姿があった。

「...お、アレがなっちゃん隊長の言ってた...」

「あぁ、届いてたんですね!」

港には戦車が一両置いてあった。塩害対策だろうか、白いシートが被せられている。

 

「...では、お披露目したいと思います。我々の新しい戦車を!」

私はその車両に歩み寄り、シートを縛っている紐を解く。そしてシートに手をかけて、一気に引き剥がした。

 

「パンター...?」

寿璃さんが呟いた。それも無理はない。縦横比や砲塔形状を除くあらゆる部分がパンターに酷似しているためだ。前面に傾斜装甲を採用した近代的なシルエットで、如何にもドイツ戦車といった感じを受ける。大型化に伴う重量増加も強力なエンジンを搭載することで解決されており、非常に高い機動力を誇っている。

非常に大きな転輪や履帯は悪路走破性や加減速、旋回に役立っており、敵軽戦車はもちろん、ヘルキャットなどの高火力戦車にも対応できる足回りは他の軽戦車には無い強みと言える。

総じて言うなら、この戦車は『強行偵察』に向いた車両と言えるかもしれない。

「この車両は、『VK16.02 レオパルト軽戦車』です!」

レオパルト。現代戦車にも受け継がれた『豹』の名を持つ軽戦車だ。モックアップが作られ、部品の生産まで終わっていながら生産される事の無かった幻の車両。目の前にあるこのレオパルトは、その部品を流用、或いは設計図と同様の物を作成して組み立てられた精巧なレプリカだ。

「レオパルト...でも、戦車道のレギュレーション上では大丈夫なんですか?」

幹葉さんが心配そうに尋ねる。確かにそうだ。厳密には『試作車が作成された』車両が参加できる戦車道大会。そこにこんな車両を持ち込んでも大丈夫なのか。それは誰しもが思う疑問だろう。

「大丈夫ですよ。購入に当たって戦車道連盟にも許可を頂きましたし」

戦車道連盟に電話で尋ねたところ、『設計図とパーツが揃っていればよし』との事だった。案外適当なんだな、なんて思いながらも、しめしめといった感じで購入へ踏み切ったのだった。

「レオパルトはテニス部チームに乗ってもらいます。10突も使うかも知れないので、大変だと思いますが両方のトレーニングをお願いします」

「了解です!根性だぞ、皆!」

「「おー!」」

元気なテニス部チームの掛け声を聞き、私はほっと胸をなでおろした。

 

「じゃあ、帰りましょうか」

 

2台のマウルティアは、新戦力であるレオパルトと共に学園艦へ続くステップを登っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10月末。下関市街地に8校の学校、7隻の学園艦が集まった。『冬季杯』の組み合わせ抽選会のためだ。

 

 

言わずもがな、主催校である『戦練高等専門学校』

 

冬季杯開幕前から注目を集める『モニュメントバレー田園高校』

 

私たちが敗戦を喫した『私立ブリテン高等学校』

 

高い整備力と強力な戦車を持つ『吉森工業高等学校』

 

日本の古き良き心を大切にする『太井社大学附属相模女子学院』

 

小規模だが優秀な隊長を擁するカナダ系の『スタンレー中等教育学校』

 

陽気な校風を持つイタリア系の高校『私立カレン商業高等学校』

 

そして私たち『アウトバーン女子学院』。

 

どれも強い特徴と高い戦闘力を持つ高校で、流れと当たり次第ではどこが優勝してもおかしくはなかった。3両という少数での戦闘になるので、どこの高校も強力な戦車を手に入れることが出来る、というのも流れを読みにくくする要因といえる。

 

 

会場となっているホール。そのステージ上には大きなボードとトーナメント表、その下にA〜Hのアルファベットが打たれており、そこにくじを引いた高校の名前が入れられていく仕組みになっている。

 

まずは最初、主催校である戦練専。茶色のツインテールを揺らし、下ぶちメガネの少女が壇上へ上がる。席に向かって一礼し、箱に手を突っ込む。ごそごそと漁った後、手を引き抜き、手に持ったボールをこちらに見せた。

『戦練高等専門学校、C枠』

左から三つ目、C枠に戦練専は収まった。相手のデータの分からない初戦から当たるのは怖い。Dにはなりたくないものだ。

続いてブリ校の番だ。壇上に上がるのは副隊長のバーバリーさん。...まぁヴィヴィアンさんはあの感じだと壇上に上がるのは少し無理そうだし、そんなものか。

『私立ブリテン高等学校、G枠』

右から二つ目にブリ校は入った。一度手の内を知っているためリベンジを兼ねて戦いたいとも思うが、やはり初戦から当たって嬉しい相手ではない。できれば違うブロックがいい。

 

...こうしてクジはどんどん引かれていき、次はモニュメントバレー校の番。

壇上に上がる少女は、茶髪のセミロングヘアを揺らして現れた。その顔立ちは少し優しげでどことなく憂いを帯びていた。その表情こそ私の知るものではないが、あの顔、体型、スタイルは私の知る夏摘そのものだった。

「...夏摘」

ぼそっと声が漏れてしまった。静まり返った会場ではその小さな声でも周りに聞こえてしまう。隣にいた華蘭さんが手をそっと取った。

「...もう少しの我慢ですよ」

「...うん」

いつの間にか震えていた手が、暖かさに包まれる。...もう少しだ。待っててね。

夏摘が箱に手を突っ込む。残る枠は二つ。どちらかが私たちだ。Bか、F。どちらにせよモニュメントバレーとは決勝戦まで当たることはない。

『アウトバーン田園高校、F枠』

F枠。初戦の対戦相手は日本戦車を駆る相模高校。生半可な相手ではないが、きっと勝てるだろう。

 

「じゃあ、私たちの最初の対戦相手は...」

A枠に収まっている名前は、『吉森工業高等学校』。戦車整備や操縦に長ける高校で、高機動戦車を用いた連携戦術を得意としていると聞く。

「...生半可な相手じゃないですね」

「うん。十分な準備をしないと、初戦から負けることになる...そんなの、絶対に嫌だ」

左を見ると、席に座る皆の顔がこちらを向いていた。皆で顔を見合わせて、頷いた。

 

 

 

会場を出て、広場に集まる。

「初戦の相手は、高機動戦術を得意とする吉森工業です。主力戦車はBT-7だと聞いていますが、恐らくより強力な戦車が導入されていることと思います。くれぐれも油断の無いよう、万全の準備をして行きましょ...あっ」

私の決意表明は、後ろを通り過ぎた少女によって中断された。匂いや、雰囲気でわかった。

「...夏摘!」

「ちょ、ちょっと、隊長!?」

私は集合している皆の輪から離れて走り出した。皆のことなんて今は考えていられない。

 

 

 

肩に手が触れる。制服越しだが妹に触れられて嬉しさがこみ上げる。

「...あぁ、アウトバーンの隊長さんの」

その返事は素っ気ないものだった。それも致し方あるまい。私のことを覚えてなどいないのだから。

「...ごめんなさい。いきなり混乱させるような事を言うんだけど」

「?どうぞ、何でしょうか」

疑問符を頭に浮かべる彼女に、私はいきなり本題を投げかける。

「...アナタは、私の妹...だと思うの」

私はこの言葉は適当にあしらわれるものだと思っていた。しかし、私が思っていた反応とは少し違う物が返ってきた。

 

「...貴女が私の、姉...それは、本当なんですか?」

真剣な表情で返してきた。風が吹いて、木の葉がぱらぱらと舞う。

「...うん。どう見ても私の妹。顔も、声も、全て」

彼女はしばし迷ったような表情を見せた。それは仕方ないことだろう。私が彼女でもこうなる。いきなり自分の姉を名乗るものに声をかけられたら。

 

「...でしたら、戦車でそれを示してください。私の姉だと言うなら、きっと私より強い」

そう言うと、夏摘は右手の手袋を外して、右手を差し出した。

「冬季杯の決勝で会いましょう。そこで、私が決める」

ぎゅっと握ったその手は暖かかった。いや、私の手が冷たいだけなのかもしれないが。

「...健闘を祈るわ。是非とも決勝まで来てくださいね」

手を離し、再び手袋をしてその場を立ち去った。

 

「...きっと証明してやる。...姉より優れた妹なんて、この世にいないんだから...!」

 

振り返ると、戦車部の皆がいた。優しい笑顔で、皆がこちらを見ていた。

「...という訳です。私はもう、負けるわけにはいきません。」

皆の真剣な顔。鋭い視線が私に向けられる。

「勝ちましょう!私が全力で勝利へ導きます!」

 

「「はい!!」」

 

これから始まる戦いへの決意。勝利を、寒空に誓った。




これで第一章は完結となります。次話からは『冬季杯』編としてお送りします。

ちなみに今回アウトバーン校含め8校の名前が登場しましたが、要望があれば他の学校の戦いも書こうと思います。『この学校の戦闘が見たい!』等ありましたら、是非お申し付けください。努力します。

※追記 2016.2/2
偵察戦車Ru-251を入れるつもりだったポジションをレオパルトに変更しました。
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