オラリオにて女神との平穏を求めるのは間違っていた 作:じーくとるふぉ
これからも少し遅れてしまうと思いますがご了承ください。
神会、それは地上の神々が集まりレベルアップした冒険者の名前を決めたり何かを話し合ったりする集会だ。
今日行われているのはレベルアップした冒険者の二つ名決め、娯楽に飢えている神がそれに興味を向けないのは無い...と今までは言えたのだが。
「あれ?ロキ、こんな無難な名前でいいのか?」
「...そんなんどうでもええんや」
いつもはニヤけた顔で張り切って二つ名を決めようとするロキが、今日の神会では誰かを殺してしまいそうな目をして、二つ名には全く興味を示さなかった。
そのことは他の神々のモチベーションも下げ、二つ名は全て無難な名前に終わっていた。
ことの発端であるファミリアに幾つもの神が感謝していたのはまた後の話だが。
そして何より、ロキの目と同じくらい異常なことが今起きていた。
なんとこの神会に人の子がいるのだ。
ロキの隣には最強冒険者の一角であるアイズ・ヴァレンシュタイン。
そして対する(?)女神、エウルアレの隣には女神の執事と呼ばれているティア・ヴァトラー。
この異常さに今日始まることに勘づく神は少なくなかった。
「そ、そうか...じゃあ次はティア・ヴァトラーの二つ名を考えるか」
始まってからずっと微笑んでいるエウルアレ、それに反して始まってからずっと睨み続けているロキ。
この二人の間に挟まれながら二つ名を決めるというのは神にとって胃に穴が空くほどに緊張感を感じることだった。
そして次はエウルアレの眷族の二つ名、エウルアレのティアへの感情は神会が始まった時点で知らなかった神々も理解したほどだ。
「じゃあ誰か、提案ある人...」
司会の神が聞くが手は一つも上がらなかった。
そう、下手な名前を付ければその後エウルアレに何を言われ、されるかわからないから迂闊に提案できないのだ。
エウルアレは全て知っているかのように微笑んでいた。
それが神にとって、今一番怖いものとして認識されているのをエウルアレは知らない。
「無難に『執事』でいいんじゃないかしら?」
その中で一人口を開いた神はフレイヤだった。
その光景を見て、一人の神が下唇を噛む。
「無難すぎる気がするけど...」
そのフレイヤにつられ、次々と神達は肯定の言葉に変えていく。
しかし、ここで終わるほど神々の関係は簡単ではなかった。
「フレイヤ様がそう言うなら」
最後のこの言葉である女神の眉がピクリと動いた。
対抗心に火をつけ、この場をややこしくするのには充分すぎる言葉だった。
「『下僕』でいいんじゃなあい?」
口を閉ざしていた神々が息を飲んだ。
フレイヤに対抗心を燃やしていた神はイシュタル、同じ美神としてフレイヤをライバル視していたイシュタルは、フレイヤが一番という現状に腹を立てていた。
しかし、この場にいたのはフレイヤと自分だけでないことをイシュタルは忘れていた。
「なんで"私のティア"の二つ名をあなたが決めるのかしら」
エウルアレの笑みが、影を帯びていた。
さっきの楽しそうな笑みとは違う、「こいつをどうしようか」とでも言いたそうな顔。
それを見たイシュタルは一瞬たじろぐがその強すぎた意地が枷となり閉じようとした口は言うことをきかず動き続けた。
「あら?どうしてだめなのかしら、だって神々が決めるものだから私も参加してもいいんじゃない?」
「してやった」とイシュタルはさっきと一変しエウルアレを見下すような顔になる。
それでもなお、笑みを絶やさないエウルアレを見て次は苛立ちへと顔を変える。
次々と変わっていくイシュタルの表情にティアは一人笑いを堪えていた。
そして、エウルアレの口が開かれた。
「だめもなにも、もう決まったも同然だったはずよ?他でもない"フレイヤ"の意見によってね」
イシュタルの顔が一瞬にして赤くなる。
そして笑いを堪えていたティアが我慢の限界を迎えついに声をだして笑い始める。
一部の神がその笑いに眉をひそめる。
怒りに体を震わせていたイシュタルが大きく息を吸って口を開いた。
「黙りなさい!このフレイヤに寄生する駄神がぁ!!」
大きく響いていた不快な笑いが止まる。
まるで耳が聞こえなくなってしまったのでは、と思うくらい唐突に声が消えた。
「あら」と当の本人、エウルアレは手を口に当て穏やかな反応をしこの場は終息するかと思ったが、然うは問屋が卸さない。
エウルアレの隣に立ち、笑いをやめたティアの顔には表情が無い。
「黙りかしら?もうちょっと言葉を続けてもーーー」
そんなことにも気付かず、イシュタルは調子に乗り言葉を続けようとする...が。
「口は災いの元ですよ?イシュタル」
ティアの静かなる怒声によってイシュタルは体の動きごと固まった。
いつも通りの丁寧な口調での警告に流石と思っている神もいたがティアと親しい一部の神は異変に気付いていた。
ティアは神の名前を呼ぶとき、敬称の意味を込めて『女神』あるいは『神』と名前の前につけるのだがイシュタルに付けていない。
この時から、ティアはイシュタルを敬うべき存在、つまり『神』とし見てはいなかった。
そこまで考えがいたった神は、どんよりと疲れた表情をしだす。
それに気付かずに次の言葉を紡ごうとするイシュタルだったが、それを止めさせる者、否、止めさせたかった神がいた。
「もうやめいや、そろそろ...話を変えようやないか」
今、女神ロキと女神エウルアレの
「ほな始めよか、うち達の代理戦争の準備を」
戦いの煙が上がる。
読んでいただきありがとうございました。
オリジナル展開に入りましたがあと二話ほどで戦争が始まります。この小説でまともな戦闘シーンは無かったと思うのでうまく書けるか少し心配です。
では次の話でお会いしましょう。