~016~
改めて絶縁状を叩き付けられてしまった。
あの言葉を最後に、ほむらは僕の前から“姿を消した”。
立ち去ったのではなく、文字通りに――元から其処に居なかったかのように、忽然とその姿が掻き消えたのだ。
瞬き位はしていただろうが、別にほむらから視線を外していた訳ではない。
とんだイリュージョンだ。
いや、そうか――然もありなん。
推察ではあるが、魔法の力を使ったのかもしれない。幻惑魔法なんて、如何にもありそうじゃないか。
結界が消失した直後だったから、ほむらは魔法少女の姿のままだった訳だし――尚且つ、僕の諦めの悪さを見越した上で、反論する隙を与えたくなくて…………そう考えると、逃げられたみたいで、少し傷つくけど……。
ただ銃火器で武装していた彼女に、そんな真似できるのかって疑問も残る。
しかし、そんな事をうだうだ考えていても、現にほむらは僕の前から居なくなってしまったのだから仕方がない。
時間も時間だ。これからほむらを探し出すというのも無理があるし、情けない話だが、このまま引き上げるしかないだろう……。
ぎりぎり間に合った、最終便のバスに揺られ、帰路につく。
経路の関係上、自宅近くにあるバス停までは路線が繋がっていないので、僕が下車したのは、駅前のバス停だ。
まぁ乗り換えようにも、もうバスは出ていないんだけどね。田舎町なめんな。
従って、其処からは、駐輪所に停めておいた自転車の出番。
学校からそのまま乗り付けたので、愛車のマウンテンバイクではなく、通学用のママチャリ。
自転車に跨り、ちゃんとライトを付けて、家路を辿る――
――のではなく、僕が向かったのは別の場所だ。
引き上げはしたが、別に諦めた訳じゃない。
厚顔無恥? 諦めが悪い? 大いに結構! そんな生半可な想いで同行を申し出た訳じゃないのだ。
だからと言って、ほむらの言い分を無視しようって事でもない。
多少の不死性を宿した吸血鬼もどき程度では、話にならない事は自覚している。
その上で、ほむらの言葉を思い返す。
――あなたのような足手まといのお守をしながら魔女と戦うことは、私にとって一つも利点がない。だから私の考えは最初と変わらない。これ以上私に、魔法少女の戦いに関わるのはやめて――
そう言われてしまったのだ。
完全なる拒絶。
そこまで強く言われてしまったら、彼女の考えを尊重する他ないだろう。
そう、僕は“彼女の言葉を尊重し、受け入れた上で”諦めない。
矛盾した考えではないのか?
そう思った人もいるかもしれない。
だけどどうだ。見方を変えてみれば、ひとつの活路が見いだせる。彼女の理屈を裏返してみればいい!
僕が“足手まといでなければ”――
僕が“一つでも利点を持っていれば”――
僕がほむらにとって“利点のある、役立つ存在”であればいい、それだけの話だ!
それで、彼女の言い分は、通らなくなる!
屁理屈と言われようが、僕の考えは纏まった。
ならば、その条件を満たす為に――恥ずかしい言い回しではあるが、力を得る為に、向かうべき場所は一つしかない。
~017~
「やぁ遅かったね阿良々木くん。待ちかねたよ」
廃墟と化した学習塾の四階。
腐食した机を並べ、ビニール紐で繋ぎあわせて作った簡易ベッドの上に腰掛け、僕を待ち構えていたのは、忍野だった。
必要ないかもしれないが、一応紹介しておこう。
忍野メメ。
怪異の専門家、妖怪変化のオーソリティ、化物お化けのテクノクラート――そんな胡散臭いこと甚だしい肩書を自称する、薄汚いサイケデリックなアロハシャツを着た、三十路のおっさん。
定住地を持たず、この平成のご時世に於いて、自身の脚を使って放浪する旅から旅への根無し草。
だけど今は訳あって、この朽ち果てた廃ビルを寝床にしている。
まぁその訳と言うのが、伝説の吸血鬼に襲われた僕のアフターケアを含めた事後処理(それと並行して怪異譚の蒐集もしているらしい)っていうのだから、あまり悪くもばかり言っていられないのだけど……兎も角、僕はこの男に助けられたのだ。
本人の言葉に則って言えば、力を貸して貰った。
実際問題、五百万円もの対価を払わなくてはいけない……全くもって払える見通しなんて立っていないけど。どうすんだよ、これ。
「二日続けてのお出ましとは、僕にそんなに会いたかったのかい?」
「ちげーよ! 気持ち悪い事いってんじゃねー!」
「はは。ちょっとした冗談だよ。元気いいね。何かいいことでもあったのかい?」
相も変わらず、軽薄な調子で忍野は嘯く。
神経を逆撫でする、毎度毎度の決まり文句には、取り合わない。
「で、どうしたんだい? 思いつめた顔して、何か用があるのかな?」
自分では気づかなかったが、気が張っていたらしい。
「用と言えば用だけど、別にお前にってわけじゃない。用があるのは……忍にだ」
そう言って――部屋の片隅で膝を抱え、体育座りした体勢のまま身動き一つしない、金髪金眼の女の子に視線を移す。
吸血鬼の成れの果て――吸血鬼の搾りかす。
小さな、本当に小柄な体躯をした子供の姿。それが伝説の吸血鬼と謳われていた彼女の――忍野忍の風貌だった。
僕が来たってのに反応もなく、ただ一点を凝視し続けている。何処を見ているかは定かではない。
「へぇ忍ちゃんに」
「それでも、いろいろ世話になった忍野には、前もって話すのが礼儀だと思うから、少し話を訊いてくれ」
「ふーん。“昨日の今日”で、いったい何の話があるっていうんだい?」
厭らしくも語調を変えて、忍野は言う。ほんとに見透かした奴だ。
「まぁ大よその検討はついているんだけどね。訊くだけのことは訊くよ」
忍野は胸ポケットから煙草を取り出すと、火もつけずにただ口に咥える。
煙草を吸うという名目で口にしているのではなく、単なる演出の一環みたいなものだ。このカッコつけめ。
しかし、“訊くだけのことは訊く”……か。
忍野にも事情があるにせよ、昨日は本当に訊くだけ訊いて、何の情報もくれなかったからな……。
少し話し出す気勢が削がれる。
なんて、愚痴をこぼしていても仕方がない。
「えーと、なんて言うか……まずは――ごめん」
何はさておき、まずは謝罪した。
言葉だけじゃなく、深々と頭を下げて。
「おいおい、どうしたんだい阿良々木くん?」
僕の行動に、多少の戸惑いを示す忍野。
「いや……忍野。お前の見越した通りだ。今日さ、昨日話したことを調べに、見滝原まで行ってきた。お前に止められたにも関わらず……勝手な事をした。だから――そもそもお前にこうして話すのも筋違いなのかもしれないけど」
「ま、阿良々木くんだからね」
含みのある納得の仕方。
少しぐらいは軽口を叩かれると予想していただけに、意外ではある。
とりあえず、僕が今日体験したこと――全部忍野に報告する。
こいつにしては珍しいことに、ほぼ相槌を打つだけで、余計は口を挟んでくることもなく、黙って話を訊いてくれた。
「勝手な言い分だとは、重々承知しているけれど………………」
いろいろと話したが、僕が言いたかったのは――次の一言を言うがための前ふりといっても過言ではない。
かなり言い出し辛く――怒られる覚悟の上で罪を打ち明ける、子供のような心情で切り出す。
「忍の力を借りたい」
「そんなこと僕に言われても、挨拶に困るね。本人が傍に居るんだし、忍ちゃんに訊いてよ」
しかし、当の忍野は我関せずの、素っ気ないこの返し。煙草を口から外し、そのまま金髪幼女を指し示す。
それなりに精神をすり減らして、言葉を絞り出したというのに……この野郎。
「だから、礼儀として前もって話したって言ったろ。忍の力を借りようっていうんだ。事前に話を通すのが筋だし、お前は忍を名前で縛った、責任者みたいなもんだろうが!?」
「ほんと、元気いいね。まぁ気に掛けてくれる事は有り難いけど、責任者とは違うな。僕に責任の所在を求められても――ね」
うう……確かに僕の言い方では、何か問題が生じたら、忍野に責任を負わせてしまうような物言いだったかもしれない。言葉の綾で思わず言ってしまったとはいえ、無責任な発言だった。
忍の事に関して責任を担うのは、この僕なのだ。
って、そうじゃない!
「忍野。お前が反対してた案件に、忍まで引き込んで介入しようって言ってるんだぞ? そんな適当な態度でいいのかよ? 『猫』の時はお前に結構強く言われただろ……
本来なら、難色する忍野を説得するのに苦心するはずだったのに……僕は自分から何を言っているんだろう?
「はっはー、ちゃんと弁えてはいるようじゃないか。でも色々勘違いしているよ、阿良々木くん。まず、僕は反対なんてした覚えはない」
「は? 馬鹿言え。現に昨日、説明を拒否したじゃないか」
「別に反対したわけじゃないよ。関わらない方がいいって言ったんだ」
「んなもん、一緒だろ」
「一緒かねぇ。まぁ反対よりなのは確かだけど、“専門家の立場”として、助言する事は僕には出来ないからね」
忍野の言っている言葉の真意を測りかね、僕は首を傾げる事しか出来ない。
「だから――僕もこの件に関して言えば、素人と言って差し支えないってことだよ。そりゃあ多少なり、知識はあるけどね。でも、それだけだ。手広くやらして貰ってる僕とは言えど、管轄外の分野と言える。故に僕の蒐集対象でもない」
「怪異じゃないのか?」
「んー。怪異と言っても問題はない。だけど“性質”がまるで違う」
「性質が違うって……どういう事だよ?」
「さあね。それ以上の事を教えるつもりはないよ」
くそ。首尾一貫して、このスタンスは変えないつもりか。いつもなら、訊いてもないことまで、ペラペラ喋り出すクセに。頑なな奴だ。
「ともあれ、もう君は深入りしてしまった。それも、阿良々木くんの性格から考えて、引く気はない。そんな君に、僕が言葉を尽くしてみたところで意味はあるのかな?」
目を細め、値踏みするかのように僕の顔を窺う忍野。
睨まれている訳でもないのに、その視線に萎縮してしまう。そんな力があった。
「だろ? 忍ちゃんを、委員長ちゃんを、自らの命を賭してまで助けようとした、優しい……本当に優しい阿良々木くん。君は困っている人がいれば、誰でも彼でも助けずにはいられないお人好しだからね。お人好しで、いい人だよ……ったく、甘ったるくて、胸がむかつくねえ」
「……そりゃ……そうなんだけど」
言うまでもなく一連の言葉は、僕への忠告であり、叱責だ。
厳しい言葉のようだけど――“専門家の立場”としてではなく“大人の立場”として、忍野は僕の無謀な行いを止めようとしてくれているのだ。
それは身に染みて解っている。感謝しなくちゃいけない。
でも、忍野の見越した通り、僕の気持ちは変わらない。
「で、忍ちゃんの力を借りたいって、一体全体どうするつもりなんだい?」
「どうするも何も…………僕が出来ることなんて……」
忍野の言葉を背に受けながら、忍の前に移動した。
徐に床に跪き――左膝、右膝の順で両足を折りたたむ僕。
瓦礫が散らばっている為、脚に破片が食い込んで、地味に痛いけれど――そんなこと気になどしていられない。
そのまま折りたたんだ脚の上に腰を下ろし、所謂、正座と呼ばれる姿勢で金髪幼女と対面する。
しっかりと忍の金色の目を覗き込んでから、両手の平を前方の床に着け、同時に頭も――厳密に言えば、額を埃まみれの地面に叩きつけた。
至極端的に言ってしまえば、土下座である。
ゴールデンウィークの焼き直しだ。
性懲りもなく、馬鹿の一つ覚えとしか言いようがないけれど…………誠心誠意、頭を下げて頼み込むことしか僕には出来ない。
確か、ゴールデンウィークの折に行った土下座は、足掛け5日間。飲まず食わず一心不乱に土下座し続けたけど――――今回は果たして何日続くことになるだろうか…………忍の心情を鑑みれば、僕の浅ましく恥知らずな行動に呆れ果てて、永遠に成果を上げることはないかもしれない。
だが、僕のこの行為は、何の効果も果たさなかったと言える、だって――
「それには及ばん」
僕が土下座を開始したその直後に、頭上から訊き馴染みのない声が耳に届いたから……。
訊き馴染みはない、けれど……どこか“訊き覚えはある”甲高い可愛らしい女の子の声。
僕が知っている“彼女”の声は、もう少し凛とした、
下げた頭を、すぐさま起こし、目前の幼女を仰ぎ見る。
僕は唖然として、大口を空けたまま硬直してしまう。
音もなく、いつの間にかその場で立ち上がって、不遜な態度で僕を見下ろす、見た目8歳程度の女の子。
沈黙の化身となって、ずっと黙り込んでいた伝説の元吸血鬼が――――
「何とも間抜けな面をしておるの――――我があるじ様よ」
――――忍野忍が口を開いたのだった。
【番外編:おしのジャッジ~その0~】
※忍野の『独り言』なので、地の文は挟んでいません。
本来、一つの台詞ですが改行しています。
「忍ちゃん。折り入って相談がある。
相談とはいっても君は全然喋ってくれないから一方的なお願いを、僕が勝手に一人で、のべつ幕無しに――独り言のように語るしかないんだけどね。
まぁいつものように寝ながらでも、訊いてくれ。心の片隅にでも置いてくれればいい。
無理強いもしないし、君の気が向いたらで構わない。
寧ろ、君がこの相談を聞き入れない方が阿良々木くんにとってはいいのかもしれない。
さて本題だ。要件の方は薄々感付いているだろうけど――昨日、阿良々木くんが僕に話した話の内容は訊いていたかな? ちゃんと聞き耳を立てていたかな?
ううん、返事はないにしても相槌ぐらい打ってくれてもいいだろうに、つれないね。話し辛いったらない。
はっはー、どの口が、って心の内で突っ込みをいれてくれたかい? それなら重畳なんだけどね。
さておき、君が阿良々木くん――半身とも呼べる彼が来て、無関心でいられる筈がないって、そう当たりを付けさせてもらった上で、昨日の話の内容は完璧に把握していると見定めた上での相談だ。
多分、いや、十中八九、阿良々木くんは面倒事に自ら巻き込まれにいくことだろう。
君の方が阿良々木くんの、あのどうしようもない、お人好しな性格を解っていると思うから、なぜ僕の忠告を無視して、なんてそんな疑問を抱くことはないだろ?
それでだ、近いうちに――いや阿良々木くんのことだから、今日の夜辺りにでも、僕たちの前に姿を現すかもしれない。あれで、自身の無力を弁えている人間だ。
それでも目の前で困っている人が居たら、助けずにはいられない人間だからね。
自分の命を判断基準の埒外に置いて斟酌してしまう。
君なら僕の言っている言葉の意味が、誰より理解出来るはずだ。まぁその点に置いては、委員長ちゃんもきっと同じくらいそうなんだろうけどね。
僕は阿良々木くんに助力することはない。これは昨日と一緒だ。僕のスタンスは変わらない。
それはきっと阿良々木くんも承知の上だろう。だからきっと君に助けを求める、そう思うんだ。
うーん、憶測のもと話しているから、宙にういた感じというか、どうも話があやふやになってしまって――なんだかね。
まったくの見当外れだったのなら、それはそれでいいんだ。その方がいい。
阿良々木くんが平穏無事に、学生生活を謳歌していてくれるなら、それほど喜ばしいことはない。
でも彼、名前からして波瀾万丈の星のもとに生まれたって感じだし、平穏無事な人生ってのは縁遠い話かもしれないねぇ――君という型破りの存在と出会ったって時点で、片足は踏み外している訳だし。
楽観的な予測は、危険だ。慎重に、慎重を重ねすぎてもいいくらい。
石橋を叩いた上で、人が渡るのを見て安全を確かめるみたいな、それぐらいの周到さは必要だ。
で――だ。
はっきり言って、この案件は拙い。阿良々木くん如きが立ち入ってどうこうなる話じゃない。
魔女と魔法少女。それと――――
忍ちゃんがどれ程の知識を有しているかは解らないけど、小耳に挟んだことぐらいあるんじゃないのかな? 伊達に伝説と謳われるまで、生きてきたわけじゃないだろ?
まぁ軽く説明しとくと、なんて言うのかな、扱いが非常に難しい、根幹から腐りきったどうしようもない問題でね。
有史以来からの、腐敗した取り決めだ。
爛れきった関係。
暗黙の了解の不可侵条約。
予定調和の悲劇譚。
日本神話で有名な
物語そのものの結末は全く関係ないんだけど、荒振る神を鎮めるために、生け贄を差し出すってところが、特にね。
人身御供――
つまりだ。世界の取り決めとして、それは根付いてしまったんだ。人類の進歩の為に、世界の安寧の為に…………善良なうら若き少女達を、見捨ててね。
根幹から腐りきっているのに、それは根強いって、どうにもおかしな話だよ。
だから、どうしたって――阿良々木くんなんかが出張ったところで、根絶できる類の問題じゃない。
解決するのは、不可能だと言ってもいい。僕の先輩がそう結論付けている事だから、これは本当に絶望的だ。
阿良々木くんが出しゃばっても、のたれ死ぬのが関の山だ。
けれど。
忍ちゃんが居れば、君が阿良々木くんに力を貸せば、少なくとも彼の生存率は跳ね上がる。なんたって不死性を帯びた吸血鬼だからね。
君も、本心的には阿良々木くんを死なせるのは勘弁だろう?
どうにかして阿良々木くんの助けになりたいと思っているだろう?
それはゴールデンウィークの時で確信した。まさか君自ら出張ってくるなんて、正直、想定の範囲外だったからね。
そんな君のことだ。彼の期待に応えたいって思っている。そうだろ?
僕個人としては伝説の吸血鬼である君が介入すれば、どう転ぶかはわからない、それは博打としては面白い、なんて風にも思ってしまう。
はっはーこれは不謹慎だったね。
ん? そこまで言うのなら、お前が動けって、そう思ったかな?
でも、それは出来ない。
“バランス”は取れている。
“アンバランス”ながら、間違っているとはいえ均衡が保たれてしまっている。それを僕が壊すことはできない。ほんと無責任な話だ。汚い大人だよ、まったく。
ともかく、忍ちゃん。君は阿良々木くんを見捨てることが出来ない、そう勝手に判断させて貰う。
でも君の懸念材料の一つとして、僕の存在が目障りなんじゃないのかな? 僕の存在が、君に制限をかけているかもしれない。
君を名前で縛った僕が、阿良々木くんの為とはいえ、好き勝手暴れるのをよしとする筈がないって、そんな風に思っているかもしれない。
うん、それは間違いない。
僕は
君がその気になれば世界を滅亡に導くのも造作もないことだからね。十日もあれば世界を滅亡させることができる。地球丸ごと消滅させることだって不可能じゃないはずだ。
それでも――今回の件については、陰ながら全面的にサポートしよう。
阿良々木くんの為に、力を貸すというのなら、僕はそれを止めたりはしない。ここに誓う。
あくまでも陰ながら、だから他言無用でお願いするよ――って、今の忍ちゃんに言っても無益なことだったかな、これは。
無口なお姫様にも困ったものだ。
はっはー、胡散臭いって顔しているね。いや、別に君の顔は全くもって無表情のままだ。少し不愉快そうではあるけれどね、それはいつものことか、勝手にそう思っただけだ、気にしないでくれ。
僕が本来こういうことを口にするのは、協定違反みたいなものなんだけど――
阿良々木くんに、僕の友達に手を貸してやってくれ」