依頼内容
とある筋の情報により、レジスタンスの諜報部隊が潜入してることが判明した。そこで、貴方には諜報部隊の炙り出し、確保のための威嚇攻撃を行って貰いたい。戦闘は最小限になる筈です。ご武運を。
『クソッ!各隊員!一時撤退しろ!』
耳に聞こえてきたのはそんな声だった。
『管理局市街対策本部、依頼を受けて来た。何が起きている。』
司令官らしき男にマギーが通信を繋げる。
『傭兵か!?潜伏していた諜報部隊が我らのデバイスを強奪し、基地内を占拠した!奴らの目的はデータベースだ!急げ!奴らを鎮圧しろ!』
そんな風に叫ぶ男の声を聞き、顔に手を当てながらマギーは呆れる。
『潜入されていた上に武器を奪われた?無能すぎるにしてもほどがある…………』
『な、なんだと貴様!?た、たかだか雇われの分際で!』
『こちらの受けた依頼は、諜報部隊の燻り出し、確保のための威嚇攻撃、戦闘は最小限と言う話だ。だが、現状はそれとかけ離れている。当初の報酬に三割追加、破棄したデバイス費、弾薬費は全てそちら持ち、報酬は依頼完了後速やかに支払ってもらう、宜しいか?』
『ぼ、暴言を…………!我々管理局に向かって!!』
司令官らしき男の怒鳴り声が聞こえる。
「如何するマギー?彼方さん、茹で蛸みたいに真っ赤になってカンカンだ。」
「関係ないわ、報酬を踏み倒す気ならこのまま帰るだけよ。私たちの仕事はボランティアじゃない。詰まってる仕事を先に片付けるだけだから。」
ファットマンは司令官らしき男の様子を想像して笑い出す。マギーはファットマンに答えながら、交渉を続ける。
『き、貴様ら…………!!』
『エリア上空通過ぁ、このまま帰っていいかね、司令官?ハッハッハッ!」
ヘリは基地上空を通過しそのまま飛び去ろうとする。そして向こうの司令官らしき男がヤケになったような怒鳴り声をあげる。
『払えばいいんだろう、卑しいストーカー共!いずれ後悔するからな!!!』
その声が聞こえた瞬間、ファットマンは口元をにやけさせ、マギーはやっとか、といった様子で溜息をつく。
『依頼内容の変更承諾を確認。急速反転後出撃、ミッション開始!』
その声を聞いてゆっくりと立つと、いつものように開いたハッチから飛び出した。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
『先ずは外の連中から片付けて、話はそれから。あなた以外の動くものは全部敵、全て撃破して』
着地して、子機デバイスを取り出した瞬間にマギーの声が耳に響く。取り出したデバイスは右手にはバトルライフル、左手には薄い金属板のようなブレード。そしてオプション装備としてカウンターガンを呼び出している。
『メインシステム、戦闘モードを起動します』
親機デバイスの音声が聞こえると同時に走り出す。首を僅かに上に向け、敵を視界に入れる。
『システム、スキャンモード』
スキャンモードで、相手の数、魔力量、デバイス、それを踏まえた戦闘能力などをスキャンしていく。
「来やがったな!クソッタレ!」
「お前ら!ハチの巣にしてやれ!」
基地上空を飛んでいる空戦魔導師達が、雨あられの如く魔力弾をばら撒いていく。
『システム、戦闘モード』
デバイスのシステムを戦闘モードに切り替え、その魔力弾の雨を針の穴に糸を通すような繊細さで回避、あるいは魔力を付加して対魔力を持たせた左手のブレードで斬り払い、基地入り口を目指す。
「チッ!させっかよ!」
空戦魔導師の一人が扉に魔法壁を発生させる。それに向かってブレードを振るうがギャリン、と嫌な音が響いただけで終わる。
「無駄だぜ、その魔法壁は俺の最高硬度の魔法壁だ。俺が任意で解除するか魔力供給を立たねえと解除されねぇ…………」
『面倒な事を…………!』
マギーのイラついたような声が響く。その声を聞き、しばし静止したあと、2回ほど側頭部を叩く。そして思い切り脚で地面を蹴りつけ、空へと躍りでる。
「空中に来やがっただあ!?」
「関係ねぇ、空は俺たちの独壇場だ!」
魔導師たちはこぞって魔力弾を放ち続ける。それを建物を利用した加速で回避し、魔力を付加したブレードで斬り払い、右手のバトルライフルで撃ち落とす。
「チッ!喰らえ!」
真後ろからの魔力弾に反応しきれず被弾する、が、すぐさまバク宙で体勢を立て直しつつ、建物の上に着地、そしてまた空へと躍りでる。
「チッ!しつこいぞ、このっ!」
周りの魔導師たちが次々と魔力弾を撃ち込む。それを回避、斬り払い、バトルライフルによる迎撃、など多彩な方法で凌いで行く。
「チッ!とっととくたばれ!」
痺れを切らした一人がデバイスから魔力刃を生成し、直接攻撃してくる。それを体を捻って紙一重で回避、すれ違いざまに首に足を引っ掛けて拘束、そのまま左手のブレードで背中から腹を突き刺し戦闘不能にさせる。
「チッ!バカが!」
素早く統率を取り戻した空戦魔導師達は、再び魔力弾を撃つ準備を始める。それを見るや否や、一番近い魔導師に先ほど戦闘不能にした魔導師を蹴り飛ばす。
「うおっ!?」
それで体勢を崩した男に左手のブレードを投げつける。投げつけられたブレードは蹴り飛ばされた男と体勢を崩した男をまとめて貫く。
『左腕パージ確認、子機登録を削除します』
バイザー型のデバイスからそう聞こえると、装備欄の上から二番目の表示が消える。それを確認すると開いた左手をマントの中に手を突っ込む。そして取り出したのは先ほどと同じブレード。
「チッ!離れろ!できるだけ距離を取れ!」
その様子を見た空戦魔導師達は再び飛行魔法で距離を取り始める。
『おいおい…………流石にやばいんじゃないか?』
ファットマンからの声が聞こえる。その声を聞いた後、再び側頭部を2回ほど叩き、人差し指を曲げ、親指で押し鳴らす。そして落ちていく男達を踏み台にして、一番近くの魔導師の懐に潜り込む。
「オラァ!」
近づかれた男は自身の奪い取ったデバイスを振り被り、殴り付けようとする。それを即座にブレードで弾き、腹部にバトルライフルの銃口を押し付け、そのまま引き金を引く。
「て、テメェ!」
また雨あられの様に魔力弾が降り注ぐ。それをバトルライフルとブレードで対応しつつ、先ほどの男の死骸を足場に再び一番先頭の魔導師に突っ込む。
「く、クソッ!雇われ風情の魔導師なんかに!」
魔導師は双剣型のデバイスをよく訓練された繊細な動きで振るってくる。それを左のブレード一本で受けきると、バトルライフルの銃身で殴りつけ体勢を崩し、ブレードで袈裟懸けに斬りつけた後に蹴り飛ばしビルに叩きつける。
「ば、バケモンかこいつ!」
周りの魔導師も、一人、また一人と撃墜されていくことで目の前の相手に恐怖を覚え始め、魔法の精度が落ち始める。それを機に一気に空戦魔導師達は瓦解し始める。
一人はわずかな防御魔法の展開の遅れでブレードで串刺しにされる。
一人は、弾幕を突破され眉間にバトルライフルの銃口を押し付けられ、頭を吹き飛ばされる。
一人は、素早く接敵を許し、脇腹をけられた後首筋をブレードで掻き切られる。
一人は、バトルライフルの銃身で頭を殴りつけられた後、胸部に魔力を付加した膝蹴りを撃ち込まれ、ダメ押しでカウンターガンを撃ち込まれ蜂の巣にされる。
地面に戻って空中に躍り出ては一人、空中に躍り出てはまた一人と撃墜される様を見た最初の魔法壁を張った魔導師はその場で驚愕と恐怖が入り混じった表情で後ろに少しずつ下がっていた。そしてたった今一人が胸をバトルライフルで撃ち抜かれる。
『右腕、残弾なし。パージ及び子機登録を削除します』
撃ち尽くしたバトルライフルを放り投げる。そしてマントの中に空いた右手を突っ込む。そして取り出したのは重心の短い、ドラムマガジンのついた"ヒートマシンガン"。それを取り出しつつ建物の上に戻る。
『外の連中はそいつで全部だ、早く片付けちまえ。』
ファットマンから催促の言葉が聞こえる。それを聞きつつブレードを地面に刺し、左手で側頭部を軽く2回ほど叩く。
「ま、待て!お、お前俺の部下にならないか…………?そしたら雇われなんてやる必要も…………!」
魔導師が言葉を言い終わるより早く、鋭く風を切る音がした後に鈍く肉を指す音が聞こえる。魔導師はそれを見た後、酸欠の魚のように口を数回開閉した後、落下。そのまま地面に激突した。
『よし、外の連中は片付いた。あとは中に突入して中の動くもの全部を撃墜して。どうせ、貴方以外は敵だから』
マギーからの通信を耳に手を当てて聴き、それが終わると信号弾を撃ち上げる。するとヘリから小さなコンテナが落とされる。中に入っていたのはハンドガンと連射型ライフル。そして先ほどまで使っていたブレード。
『デバイスの子機登録を完了しました。』
ハンドガンと連射型ライフルをマントの中にしまう、マントの中から蒸気の抜けるような音が聞こえると、マントから手を出す。そして空いた左手にブレードを持ち、基地の入口へと向かう。
『基地内の一回以外はスキャンが通らない、出会い頭に注意して!』
マギーの忠告を聞くと、ブレードで鍵のかかったドアを袈裟懸けに両断。基地の中へと姿を消した。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「ちぃ…………忌々しい…………!」
基地司令である管理局の男は画面を睨みながら爪を噛んでいた。
「し、失礼します」
すると部屋の中に男の部下らしき男が入ってくる。
「なんだ」
「その…………執務官殿が…………」
「執務官?今は忙しい。後にしてくれ」
「い、いえその執務官殿が強制捜査令状と共に…………!」
「な、なんだと!?」
男は思わず椅子から飛び上がった。強制捜査令状、それは特定以下の階級のものに等しく効果を発揮する、管理局で最も強制力の高い令状であり、執務官が行使できる最大の武器である。
「た、担当執務官は…………誰だ!?」
「ふ、フェイト・T・ハラオウン執務官です…………!」
基地司令官らしき男は、青ざめた顔をした後、椅子の上に崩れ落ちた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「はい、では終了次第基地内の強制捜査を開始させていただきます」
「りょ、了解いたしました」
男は敬礼をした後、早足で立ち去る。その様子を見た後、基地に目を向けたのは金髪を長く伸ばした女性。基地に周辺には無残な死体がそこらじゅうに転がっている。
(やっぱり、血を見るのはまだ慣れないかな)
女性は死体の回収を支持しながら、基地の入口へと歩いていく。
「あとは中だけか…………バルディッシュ」
『Yes sir.』
「中のスキャン、出来る?」
『Is possible. But it is not recommended.』
「そう…………一階だけなら出来る?」
『Is possible』
「ごめん、お願い」
『The scan is completed. Various places in the terminal there is reaction.』
「端末?」
『Perhaps, it is thought to look like the transmitter』
「もしかしたら…………いこう、バルディッシュ!」
『Yes sir』
女性は、まるで雷のような速さで破壊された扉から基地内に侵入していった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「しまった…………まさか執務官が来るなんて…………!」
その頃、ヘリの中ではマギーが頭に手を当て自分の失態を思い知る。
「おい、マギー。あいつやばいんじゃないか?」
ファットマンも少なからず、動揺していた。ファットマンには魔法の素質はない。魔導師に必要なリンカーコアという器官が発達していないからだ。
「少なからず消耗してる…………このまま戦っても、相手はリミッターをかけていてAランク…………削り切れる保証はない…………!ファットマン!通信繋いで!」
「おう、こりゃ、無視して帰ってたほうがよかったかもな」
ファットマンはヘリの機材を操作する。そしてマギーはインカムのダイヤルを合わせる。
「聞こえてる!?聞こえてたら側頭部を二回叩きなさい!」
そして鈍く叩くような音が二回聞こえる。
「いい、よく聞いて。今管理局の執務官が突入した。今消耗した状態で戦っても勝てる保証はない、確実に戦闘は回避して!」
そしてまた鈍く叩くような音が二回聞こえる。これはマギーが教えたことだ。よく聞こえていたり、理解したら側頭部を二回、その逆だったら三回叩く。なぜか喋れない彼のために教えた最低限のコミュニケーション方法だった。
「ふぅ…………」
「どうだ、あいつ。逃げられると思うか。」
「そう祈るしかないわ、神様なんて信じてないけど」
マギーはヘリの助手席で腕で目を覆いながら奥歯を噛み締めた。