「おーきーてー!ジョシュア!おーきーてー!!」
眩しい朝日を瞼越しに浴びると共に、被っている布団ごと揺さぶられる。
「もう!起きないと遅刻するよぉ〜!」
そう言って布団を掴まれ、引き剥がされる。肌寒い空気を感じながら体を起こす。薄く目を開けると、目の前には腰に手を当てて怒ってます、的な雰囲気を出す少女。
「早く着替えてね!今日はジョシュアも一緒に行くんだから!」
そうして、少女は部屋を出て行く。
「二度寝したらダメだからね!」
そこまで言われなくてもわかっている。どうせこの状態では何も出来ない。ボキボキと身体中の関節を鳴らす。
「おーい!御主人!早くこねぇと全部食っちまうぞ!」
両手でクロワッサンを抱えた、ミニサイズのラナが部屋に入ってくる。そんなラナを手で追い返すと、壁にかかっている学校の制服を手に取る。カッターシャツの袖に腕を通し、スラックスを履き、ブレザーを手に持って下に降りる。
「おはよう、ジョシュア」
保護責任者である、なのはの言葉に頷いて席に座る。発声器官が完全に潰れたため、声は今も出せないが、たいていみんな頷くだけで察してくれる。
「おはようございます、主人様」
方にミニサイズのフィオナが降りて座る。その手には小さくちぎられたクロワッサンが握られている。テーブルの中央に置かれたバスケットからクロワッサンを手に取ると、左側から、牛乳の入ったコップが置かれる。軽く手を挙げると、メイド服を着たセレが軽くお辞儀をして、台所へと消える。時計を見れば後20分ほど余裕はある。クロワッサンを千切りながら食しつつ、他の料理を平らげていく。以前は粘土のような固形携帯食料しか口にしなかった為、未だにこの食事はなれないが、食べなければ持たない事は承知している。ちなみに、あの携帯食料は全て、なのはともう一人の保護責任者によって処分されてしまった。
「ジョシュア、大丈夫?」
先ほど起こしに来た少女、ヴィヴィオが向いてくる。その頭を軽くポンポンと叩いて、食卓を立ち、ブレザーに袖を通す。
「うん、いってらっしゃい」
なのはの言葉に、軽く手を振って答えると、バイザー型デバイスである、ホワイトグリントを手にとって鞄に放り込む。そして、革靴を素早く履いて、そのまま扉を勢いよく開ける。
「いってらっしゃいませ、主人様。」
「あ、待てって!私も行く!」
「あー!ジョシュア、待ってよぉ〜!」
情けない声を上げるヴィヴィオを無視してそのまま、走る。その隣を何匹ものワタリガラスが飛ぶ。そして一鳴きすると、そのまま空高くへと飛び去っていく。それを足を止めて見送る。
いつか彼らにも居場所が出来る日が来るだろう。彼らも黒い鳥なのだから。
そして、黒い鳥である自分の居場所はここなのだから。