執務官の女性が基地内に突入する、数分前。
『システム、スキャンモード』
基地内は静寂を保っていた。といってもまだ入口付近、今はマギーたちのバックアップがあるが、これより上か下に行けばそれは受けられなくなる。どうやら基地の機能で外部からのスキャンを無効化する機能があるらしい。ブレードを床に突き刺すとマントの袖を器用に振り中から小さな円柱状の機械を取り出す。それを空中に放り投げると、円柱状の機械は変形し、アンテナのような形状になる。そして隣の壁が透けると敵のシルエットが確認できる。
『システム、戦闘モード』
システムを戦闘モードに切り替える。道の先はT字路になっている。それを確認すると先ほどの円柱状の機械をT字路に放り投げる。
『システム、スキャンモード』
先ほど投げた機械、名前をリコンといい、特殊な索敵装置である。このリコンはスキャンモードに反応して特殊な波長を放ち相手を索敵する。その機能を利用し敵がいないことを確認する。
『システム、戦闘モード』
戦闘モードに再び切り替える、そして足音をなるべく立てずに、ドアの前に来るとドア越しにヒートマシンガンを構え、そのまま引き金を引く。ドアが蜂の巣になると同時に、ドアを蹴り飛ばして中を確認する。部屋を見回すと、足を撃たれたのかうめいている男が一人と、おそらくドア近くに立っていたのだろうか、ドアの下敷きになっている男が一人。
「そ、外の奴ら…………みんなやられたのかよ…………畜生!」
足を撃たれた男は基地内にあったであろうデバイスを取ろうとする。それをヒートマシンガンで腕を撃ちながら接近、ブレードで腕を斬りとばす。
「ぎゃあ!?」
男はカエルが潰れたような声を上げる。それを御構い無しに蹴り飛ばして、壁にぶつけ喉元にブレードを突き刺す。
『システム、スキャンモード』
そしてスキャンモードに切り替え、入り口を向く。奥から続々と敵反応が此方へと向かってくる。それに対し、最短距離でぶつかる為のルートを目で追っていく。
『システム、戦闘モード』
ルートを追い確認した後、すぐさま部屋を飛び出し敵反応へと向かっていく。その間に右手をマントの中に突っ込みデバイスを変える。選択したのは連射型ライフル。ライフルの中でも特に発射間隔の短いライフルで、これが二挺揃えば簡単な弾幕が張れる。そのライフルを右手で構える。そしてロックオンを示すレティクルが現れた瞬間にライフル本体に魔力を付加し引き金を引く。
「ぐわっ!?」
「し、質量兵器だと!?」
「相手は一人だ!数と火力で押し切れ!」
確かに相手は数で勝っていた、だが、場所が問題だ。あんな人数が一斉に構えればそれは窮屈だ。狙いも精度も甘くなる。そこに漬け込み、連射型ライフルとカウンターガンを起動させ同時に撃ち込む。
「く、クソッ!お前邪魔だ!」
「貴方が場所取りすぎなんですよ!」
とうとう相手方でも仲間割れが起こったらしく、撃たれていながらも、もみくちゃになっていた。それを見逃すわけもなく、連射型ライフルを正確に、重なった防御魔法のわずかな隙間に針の穴に糸を通す精密射撃で通していく。もちろん外した弾も無駄にはせずにビリヤードショットなどに利用する。
「く、クソッ!退くぞ!体制の立て直しだ!」
相手型は部が悪いとわかったのか漸く撤退を始める、が、時すでに遅く、撤退を始める間も正確に足や胸、頭などを連射型ライフルの弾丸が襲う。
「チッ!」
そして魔導師の一人が、相手の視覚を潰すための閃光魔法を放つ。あたりが強烈な光に包まれる。
『システム、スキャンモード』
光が3分ほどで収まると同時にスキャンモードを起動する。発動の瞬間にフードを深く被り光を最低限防いだのが、素早い復帰の理由だった。
『システム、戦闘モード』
スキャンモードで相手の姿を視認したあと戦闘モードに戻す。どうやらエレベータで地下に向かうようであり、そこから少し離れた場所に階段がある。そこからの行動は早かった。まっすぐ階段を目指すと、そのままジャンプで一段一段を降りる手間を省く。
『システム、スキャンモード』
そして一番地下であろうところにつき、出入り口をくぐった途端に扉が閉まりロックされる。
『システム、戦闘モード』
すぐ様振り返り、魔力を付加したブレードで斬りつけるが僅かな擦り傷が出来るだけであり、すぐに無駄と判断、リコンをばら撒きながら進んでいく。
『システム、スキャンモード』
リコンで索敵をしながら、進んでいくと十字路に行き当たる。十字路のそれぞれの通路に敵が目視できる。
『システム、戦闘モード』
そして素早く戦闘モードに切り替え、十字路の中心に躍り出る。そしてブレードをマントの中に戻し、ハンドガンを取り出す。そして左右のニ挺をそれぞれの通路に向けると、そのまま盲撃ちで撃ち続ける。
さらに腕をクロスさせ、盲撃ちで引き金を引く。そしてニ挺を正面に向け前方の通路を攻撃する。
「喰らえぇぇ!」
そして背後から別の部屋に忍んでいた魔導師が攻撃を仕掛ける。完璧に背後を捉えた不意打ち。勝ちを確信して思わずほおが緩む。が、それは頭への強烈な衝撃によってかき消された。
「う、げぇ…………!?」
倒れた後見れば、相手はこちらを振り返り足を振り抜いていた。完璧な不意打ちを僅かな間で反応し側頭部に回し蹴りを撃ち込まれた。
「ば、化物か…………ぎゃああああ!?」
倒れた魔導師の膝関節をハンドガンで撃ち抜く。そうした後に十字路を真っ直ぐ進み、下を目指していく。そしてさらに下へ繋がる階段の前に来た時。
『聞こえてる!?聞こえてたら、側頭部を二回叩きなさい!』
マギーの通信が入る。聞こえている為側頭部を二回叩く。そしてマギーの声が続く。
『いい?今管理局の執務官が突入した。今消耗した状態で戦っても確実に勝てる保証はない。確実に戦闘は回避して!』
現在の武装と残弾数を見る。この武装で倒せるか、即決で側頭部を二回叩く。そしてマギーとの通信が切れる。そして階段を降りていった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
一方、突入した執務官の女性"フェイト・T・ハラオウン"は、基地の状況を見て、顔を顰めていた。
「殆ど生きてる人はいない…………か…………どう思うバルディッシュ?」
『Surely it is thought to be the work of mercenary.』
「うん…………何時でも捕縛できるように準備しておいて、バルディッシュ」
『Yes sir』
そのままフェイトは足を進める。基地の中を転がっているのは死体と薬莢だけだった。フェイトはその薬莢の一つを拾い上げる。
「…………実弾、だね…………」
『Perhaps it is thought to be a disposable device of adulteration.』
「多分、魔力を流して二重弾殻にしてるんだと思う。」
『There is many things that accurately shot through the target only Key points Note.』
「うん…………でももしかしたら一筋ではいかないかもしれない…………警戒して、バルディッシュ」
『Yes sir』
そしてフェイトも地下へ向かう階段を降りていった。その時、ガチャン、という音が響いた。
「バルディッシュ!」
『Seems to base of the main power source has been destroyed. All functions have stopped.』
「…………急ごう…………バルディッシュ!」
『sonic move』
フェイトは管理局でもトップクラスのスピードを持って地下へと降りていった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
コツコツと一段一段階段を降りていく。既に主動力源を発見して破壊。基地の機能の大半は停止している。だが、それと同時にエレベーターも機能を停止したため、こうして階段を降りている。
『システム、スキャンモード』
スキャンモードで建物の内部を映し出す。さらに基地の機能が停止しアンチスキャンの機能が停止した為、マギーたちからのバックアップが受けられるようになった。
『残りはこの下にいる奴らだけだ。手早く済ませようぜ』
左手をハンドガンからブレードに、右手をライフルからヒートマシンガンに変える。ちなみにカウンターガンは残弾切れのため既にパージしている。
『システム、戦闘モード』
そして強固に閉じられた巨大な扉をブレードで人一人通れるくらいに破壊し、中へ侵入する。
「クソ傭兵が!ぶっ殺してやる!!」
そして部屋の奥から巨大なパイルバンカー型のデバイスを装備した女が奥の扉を破壊しつつ現れ、そして真っ直ぐ一直線に向かってくる。
それにヒートマシンガンを撃ちつつ、壁を蹴り空中へ上がる。
「逃げんな!」
女がヒートマシンガンの弾幕をパイルバンカー型のデバイスを盾にして突破。壁にパイルバンカー型のデバイスを叩きつける。そしてギミックが発動し壁に爆破性魔力弾の杭が撃ち込まれ、壁にクレーターが出来る。
『おいおい、なんだありゃ!?食らったらやばいぜ!?』
『非殺傷設定は解除してるか…………あっちがやる気なら仕方ない、撃破して!執務官ももう同じ階層にいる。あまり時間をかけないで!』
マギーの言葉に側頭部を二回叩いて答える。空中で反転して天井近くの壁を蹴って加速、魔力を付加した左手のブレードを走らせる。
「うぜぇ!!」
そのブレードを防御魔法で防ぐ。ブレードは防御魔法に沿って音を立てて滑りやがて身体が着地する。着地した瞬間に左足を軸にして回り込み手首を返してヒートマシンガンを向け、撃つ。
「いってぇ…………クソが!」
ヒートマシンガンを数発被弾した女は若干体制を崩すもすぐさま立ち直り、デバイスを床に叩きつける。そして壁に出来た時と同じように巨大なクレーターが発生する。
『ダメージを受けています、回避して下さい』
爆発の寸前に床を蹴り後ろへと回避したが、爆風の余波なのか僅かながらにダメージを受ける。そして今度は不規則に壁を蹴って、フェイントを交えながら接近する。
「チョロチョロとウザいんだよ!」
今度は直接空気に撃ち込むと、デバイスから熱量弾が撃ち出される。それを紙一重で回避するが、マントの端が一気に灰になり燃え尽きる。
「オラァ!もういっぱぁつ!」
熱量弾が撃ち出される。それを今度は距離を開け余裕を持って回避。天井を蹴って加速、さらに体の捻りを追加し、魔力付加で対魔力を持たせたブレードを走らせる。
「んなもん当たるかよ!」
先ほどと同じように防御魔法で防御しようとする、そして防御魔法にブレードが接触した瞬間、ブレードは防御魔法をすり抜け、防御魔法を切り裂く、そして着地する。女はそれを僅かながら動揺し、後方へ飛んで距離を取ろうとする。それをヒートマシンガンで追撃する。
「クソッ!調子にのるなぁ!」
どうやら女は頭に血が上りやすい性格らしく、魔力でブーストし加速した後、大振りな攻撃をぶつけようとする。
「死ねっ!」
女がパイルバンカー型のデバイスを突き出した瞬間、姿勢を低くしつつ加速、女の懐に潜り込み、膝の装甲と足に魔力付加をかける。そしてそのまま全力で踏み込み加速し、膝の装甲を鳩尾にぶつける。
「あ…………ぎ…………」
女は腹部を抑え、動きを止める。そこにさらにもう一度加速し膝装甲をぶつけて蹴り飛ばす。女は思い切り壁に激突し肺の中の空気を全て吐き出し、地面に崩れ落ちる。
「グ…………ギィィィ…………」
女にゆっくりと近づいていく。その背後から残りの魔導師が襲ってくる。
「お、オラァァォァ!!」
それを一人一人さばいていく。手甲型のデバイスで殴りかかってきた者をローキックで体勢を崩し、ブレードで斬る。
魔力弾を連射してきた者はブレードで魔力弾を弾いた後、接近。腹部にヒートマシンガンを押し付け撃ち続ける。
剣型のデバイスで切りつけてきた者は、腹部を蹴りつけた後反撃でブレードで突き刺し、さらにヒートマシンガンでダメ押しする。
『右腕、残弾30%』
親機のデバイスから残弾警告が出る。それを聞き、すぐさまヒートマシンガンを破棄する。
『右腕、任意パージを確認。子機登録を削除します』
『残りはそいつだけ、早く片付けて撤退して!』
マギーの声が聞こえる。その声を聞くと右手に連射型ライフルを装備して女に接近する。女は未だ崩れたまま動かずにこちらを睨みつけている。そしてブレードを振り上げ振り下ろす。そしてブレードは金色の防御魔法に阻まれる。
「プラズマランサー ファイア!」
そして槍型の魔力弾が放射線状に背後から迫る。連射型ライフルに魔力を付加し、魔力付加した弾丸を撃つ。が、槍型の魔力弾は多角的な軌道でそれを回避し、再びこちらへ迫る。
すぐさま無駄と判断して背後に飛び、同士撃墜を狙う。狙い通りに槍型の魔力弾はお互いに切っ先がぶつかるが、ぶつかった瞬間に反転こちらにまっすぐ向かってくる。
ライフルでは無駄と判断した後のため、ブレードを走らせて数発を叩き落とし、残りは回避する。
『システム、スキャンモード』
スキャンモードに切り替え索敵する。元いた場所には先ほど戦闘不能直前まで追い込んだ女以外にはいない。が、リコンの一つが敵性反応を捉えている。が、スキャンモードで肝心の敵影が見えない。
「ファイヤ!」
そして先ほどと似た形の槍型の魔力弾が数発また撃ち出される。
『システム、戦闘モード』
今度は連射型ライフルで簡単に撃墜する。が、爆風でまわりの視界が封じられる。
『システム、スキャンモード』
再びスキャンモードを起動し、索敵しようとする。そして敵影を見つけ、接近しようとした瞬間、金色の捕縛魔法で手足を封じられる。
『深刻な状態異常です。直ちに復帰してください』
『どうしたの!?応答しなさい!何があったの!!』
マギーからの通信が聞こえる。それに応答しようとするが捕縛魔法により手がその場から動かせず、応答が出来ない。
「管理局執務官、フェイト・T・ハラオウンです。落ちている薬莢と破棄されたデバイスから、傭兵と判断しあなたを拘束します。」
フェイトと名乗った執務官の手には、道中で破棄したカウンターガンが握られている。管理局での拘束対象は次元犯罪者と呼ばれる犯罪者たち、そして傭兵。
ここで、今まで変わらなかった口元だけの表情が僅かに変わる。そして腕などを動かそうとするが、捕縛魔法を振りほどけそうにもない。
「ごめんね…………!」
そしてフェイトは斧型のデバイス"バルディッシュ"の石突き部分で、腹部の水月を的確に突く。口元が僅かに歪み、まるで力が抜けたように意識を失う。それを確認したフェイトは捕縛魔法を解除し、抱き上げる。
(軽い…………?)
その異常な軽さに違和感を覚える。そのままマントを脱がせる。マントの下にはハンドガンが肩甲骨あたりに設けられたアームに接続され、腕は手首あたりまで装甲が覆っており、足、特に左足は分厚い装甲に覆われていた。そして顔はバイザー型のデバイスで隠されている。そしてそれらが光った後に装甲は全て消え失せる。
「まさか…………そんな…………!?」
そしてバイザー型のデバイスを取り外すと、まだ幼さの残る顔立ちが現れる。身長はかつての教え子よりも少し低い程度。完全に戦場に立ってはいけない、ましてや傭兵などやってはいけない年齢に見える。
「とにかく、連れ帰らないと…………」
フェイトはデバイスを回収し、そのまま抱き上げると基地の地下を後にした。