長らく浴びなかった朝日の刺激に目を覚まし、体を起こす。目をこすり意識を起こし、両手を握り感覚を起こす。
「お?起きたか、ずいぶんこっ酷くやられたな。ハッハッハッ!」
声に反応し振り向く。ベッドの隣には、白が混じった髪を散切りにした初老の男がガラガラ声で笑っている。
「やめなさい、ファットマン。読みが甘かった私達も悪いんだから。」
その隣では、長い金髪にサファイア色の瞳の整った顔立ちの女性が片手だけで器用にリンゴを向いていた。
「まあ、昔と同じようでいいじゃないか、こいつが駆け出しの頃はよくあった事だ」
「…………まあいい、今はゆっくり体を休めて。これからもっと酷い目にあう。」
マギーとファットマンの言葉を聞いた後、再びベッドに横になる。右手を見れば点滴が刺さっている。
「よく言うわ、子供に傭兵やらせておいてからに。そっちの方が酷い目と違うんですか?」
すると入り口に、管理局の制服を着たショートカットの女性が入ってくる。
「ハヤテ・ヤガミ…………」
「…………やっぱり噂は本当だったんですね。マグノリア・カーチス一等陸将…………」
「…………昔の話よ、もう私は局員じゃない」
入って来た女性の名は八神はやて。現在活動中の新規部隊"機動六課"の部隊長であり、管理局有数の魔導師でもある。
「…………それでも、貴方が私達にしてくれたことは返しきれないほどあるんです。それがいきなり…………」
「世間話はここまでよ、もう立場変わった。貴方は局員、私達は運び屋と傭兵。こっちは何時でも準備は出来てる」
「…………分かりました、唯、その子と話をさせてもらえませんか?」
「…………言っておくけど、なめてたら痛い目に合うわよ。」
「ありがとうございます。」
マギーとはやての話が終わる。その間に部屋を見回しある物を探す。
「…………この子のデバイスは?」
「こちらで預からせてもらってます。こちらの整備士に見せたら、"よく今まで戦って来れた"言うてました。」
「…………それならいい。ほら」
マギーが視線で促してくる。それに従って点滴を抜き、はやての元に行く。
「こっちや、ついてきい。」
はやての二メートルほど後ろをついていく。そしてついたのは聴取室。長机にパイプ椅子が並んでいるシンプルな部屋。部屋にはすでに二人の女性が入っていた。そして一人は自分を撃墜した人物。
「連れてきたで、なのはちゃん、フェイトちゃん」
「うん、ありがとう、はやて」
はやてとフェイトが挨拶を交わす。少なからず体が硬くなるが、すぐに緊張を解き、扉の前で待つ。
「何してるん?入ってきい」
はやてに促され、部屋に入っていく。
「ほな、改めて。機動六課ゆう部隊の隊長しとる、八神はやて、や。よろしゅうな」
「あの時もあったね、フェイト・T・ハラオウン。執務官と、機動六課の分隊、ライトニングの隊長をやってる。よろしく。」
「はじめまして、だね。機動六課スターズ分隊長、高町なのはです。よろしくね」
三人の挨拶兼自己紹介を聞いた後、周りを見渡す。
「どうしたん?」
はやてが尋ねる。はやてをちらりと見た後正面に向き直り、喉を指差した後、首を振る。
「もしかして…………喋れないの?」
フェイトの言葉に頷く。そして宙にジェスチャーで紙とペンを要求する。
「はい。」
なのはがスケッチブックと鉛筆を手渡す。軽くお辞儀をした後に手に取り一枚目を開き、鉛筆を走らせる。
『名前は無い、他の傭兵とかからは"黒い鳥"《レイヴン》って呼ばれるだけ。歳は分からない。』
「レイヴン…………か。なら私たちもそう呼ばせてもらうわ。それで、カーチス一等陸将とあのおっさんとの関係はなんなん?」
はやての質問を聴き、二枚目をめくり鉛筆を走らせる。
『マギーは、ずっと一緒にいたからわからない。ファットマンは傭兵やる時に危なっかしいからって言ってずっとついて来てもらってる。ただそれだけ』
「そっか、じゃあなんで傭兵に?」
今度はフェイトの質問が飛んでくる。
『分からない、なぜかそうしないといけないと思った。それにいつも夢で聞こえてくる。』
「夢で?何が?」
『"わたしもお前も戦いの中にしか生きる場所は無い。自由に生き、理不尽に死ぬ。私とお前の最後はそうあるべきだ"これがいつも夢で聞こえる。』
「そう…………ありがとう。それじゃあ親御さんとかは…………?」
今度はなのはの質問が来る。首を振った後にスケッチブックに鉛筆を走らせる。
『分からない、ただ覚えてるのはマギーと会うまでは黒い鉄格子の中にいた事だけ。』
部屋にしばらくの静寂が流れる。スケッチブックの数ページに渡り、鉛筆を走らせる。
『別に同情はいらない』
『それにその通りだから』
『戦う才能しかない奴は戦場でしか生きられないから』
再び静寂が流れる。そしてはやてが立ち上がる。
「はやて?」
「カーチスさんに聞いてくるわ…………今ならあん人も全部話してくれる」
そう言うとはやては部屋から出て行く。部屋にはなのはとフェイトが残る。
「ねぇ…………今までの事、教えてくれる?」
『マギーに迷惑がかからない程度なら』
そのまま今まで起きた、ありとあらゆる事を紙で語った。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「なぁ、マギー」
「なに、ファットマン。」
「もう…………ここいらが限界じゃあねぇか?」
「…………」
青く澄み渡った雲一つない空を見上げながら、ファットマンがマギーに問う。椅子にもたれ掛かりながら、マギーは押し黙る。
「…………今更、そんなこと出来ると思うの?」
「派手にやらかさなきゃどうにでもなるさ、お前もあいつも戦いすぎたんだ。もう身を引いてもいい頃だろうよ。」
「出来ない…………出来るわけがない…………!」
「出来るさ、今まで行き当たりばったりだったんだ。何とかなるさ」
「…………」
ファットマンの答えにマギーが押し黙る。
「カーチス一等陸将」
そこにはやてが入ってくる。
「ハヤテ・ヤガミ…………何の用?」
「カーチス一等陸将…………いや、マグノリア・カーチス!今ここで全部喋ってもらいます!」
はやてがマギーを強い目で見る。マギーは諦めたように息を吐く。
「そう、やっぱりあいつは喋ったのね」
マギーははやてを目を鋭くして見ると、はやてに向き直る。
「いいわ、全部話してあげる。あの子の正体も私の過去も何もかも」
こうしてマギーは語り始めた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
ーそうね…………どこから話そうか…………まあ、私も元は傭兵だったのよー
ーあ、貴方みたいな人が…………傭兵!?ー
ーそう、そこを撃墜されて管理局にスカウトされた。まあ、撃墜した人のことはこの際置いておくわー
ーそ、それで…………なんでまた傭兵に…………ー
ー…………あいつらにあったのよー
ーあいつら…………?ー
ーあなたも聞いたことぐらいはあるでしょ?数も目的も所属も不明。わかっているのはその強さだけー
ーそれってまさか…………!ー
ーそう、死神部隊。あいつらに会って私は魔導師を、管理局をそして、傭兵をやめた、そして、あるところであいつを見つけたー
ーレイヴン、ですか?ー
ーレイヴン…………あいつのあだ名ね。そう、あいつは文字通り黒い鉄格子の中につながれていた黒い鳥だった、まだ、私は戦場に立っていたいと思っていたのかもね、気がついたらあいつを解放して、いろいろ教えてた、傭兵として最低限のことをー
ーレイヴンは…………何も持ってなかったんですかー
ーええ、強いて言えば小さなプレートを握っていただけねー
ープレート?ー
ーこれよー
ー"I am the black bird, Im’ in order to make their whereabouts, burn blackened everything from"J" "どういう意味ですか?ー
ー私は知らない、けど、一つ言えるのはそのJって奴があいつに戦闘の全てを叩き込んだかもってだけねー
ー分かりましたー
ーそう、じゃあ私からの話はこれでおしまいー
ーここからは仕事の話ですー
ーどういう意味?ー
ー機動六課部隊長、八神はやてが依頼します。次元犯罪者ジェイル・スカリエッティを確保するまで私達に協力して下さいー
ー…………貴女、何言ってるか分かってるの?ー
ー重々承知です、但し条件がありますー
ー…………何?ー
ー全部終わったら、あの子にまともな人生を歩ませる、それが条件です!ー
ーハッハッハッ!随分と肝っ玉の据わったお嬢ちゃんだ。一本取られたなマギー。ー
ーはぁ、貴女はもう少し賢いと思っていたのだけど、大馬鹿ねー
ー承知してます、だからこんなことも言えるんですー
ーいいわ、わかった。報酬の用意は出来るの?ー
ー勿論です。そこいらのヘタレと一緒にしないでくださいー
ーいいわ、契約成立ー
ーハッハッハッ!いいな、仕事納めにはやりがいのある仕事だー
その後、部屋にパァン、と音が響いた。