黒い鳥の居場所   作:elf5242

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冷たく切り捨てた心は彷徨うばかり

「ねえ、あんた」

 

後ろから急に声をかけられる。振り向くと、そこにはオレンジ色のセミロングをツインテールにした少女がこちらを睨んでいた。

 

『なに、これからマギーの説教を聞きに行かないと行けないんだけど』

 

「すぐ終わる、模擬戦に付き合って」

 

『…………理由は?』

 

「見てるだけじゃ実力なんてはっきりと測れない。それがわからないと協力なんてできない」

 

『マギーに聞いてくる、少し待ってて』

 

「時間が無い、今ここで答えを出して、イエスかノーか。」

 

「わかった、なら、今すぐ出なさい」

 

声のした方を向くと、マギーがレポートの束を持って立っていた。

 

「ブルーマグノリア…………!」

 

「分隊の一人、か…………確かティアナ・ランスター。ティーダ・ランスターの唯一の妹」

 

その名前を聞いた瞬間、ティアナと呼ばれた少女の態度が急変する。

 

「あんたみたいな傭兵が兄さんの名前を出すなぁ!」

 

マギーに向かって魔力弾が飛んでくる。

 

「はぁ、すぐ熱くなるところは、あいつソックリね」

 

マギーはレポートの束を投げると、体を捻り上げて蹴りを放ち魔力弾を蹴り返す。

 

「なっ!?」

 

ティアナは自分の魔力弾を自分で撃ち落とす羽目になる、そのまま魔力弾の霧散による閃光で一瞬でマギーを見失う。

 

「っ!いない!?あっ!?」

 

そして足を払われ、デバイスを持っている手を捻り上げられ、後ろ手に膝で固定された後に、後ろから首を押さえつけられる。

 

「この程度反応出来ないなら、挑むだけ無駄。負け承知で挑むなら、話は別だけど。」

 

「このっ…………!」

 

ティアナはマギーを睨み、マギーはティアナをなんでもないような目で見つめる。

 

「はぁ…………わかった」

 

マギーはティアナを解放すると、落ちていたレポートの束を拾い上げる。

 

「私のオペレートはつけない、ただし、話は自分で付けて」

 

『了解』

 

マギーと話し終わると、踵を返して転送ポートに向かう。

 

『…………行かないの?』

 

「うるさいっ!」

 

ティアナに追い越される。その様子をティアナの姿が見えなくなるまで見た後に転送ポートまで歩いていく。

 

「おっ、お疲れさん。マギーに絞られたか?」

 

途中でファットマンに会う。丁度良いと思い、スケッチブックに鉛筆を走らせる。

 

『予定変更、分隊の一人とやり合うことになった。欲しいのはこれ。』

 

「…………成る程な、相手の領分で戦ってやろうって訳か。良いぜ」

 

『ありがと、ファットマン』

 

そして早歩きで、転送ポートに向かっていった。

 

「ふぅ…………なんか俺らといるより生き生きしてるな。」

 

早歩きで去って行く姿を見ていたファットマンはそう呟いた。

 

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

 

転送で先ほどと同じ場所に出る。目の前には銃型のデバイスを持って立っているティアナの姿。

 

『メインシステム、戦闘モードを起動します』

 

親機であるバイザー型デバイスを装着し戦闘モードを起動させる。そして同時に転送されてくる、超小型コンテナが一つ、中型のコンテナ、それが二つ。そして中型コンテナの継ぎ目が爆発し、コンテナが開く。そこには銃身の折りたたまれた大口径狙撃砲。俗に言うスナイパーキャノン、それが二つ。そしてその下にスナイパーライフルがあり、ハンガーにスナイパーをそして小型コンテナを開く。現れたのはプラズマミサイル。それを両肩に装備し、スナイパーキャノンを両手に持つ。

 

「…………来たわね」

 

ティアナも既にバリアジャケットを展開済みらしく、その手に握られている小型拳銃型のデバイスを向けて来る。

 

「あんたみたいなのに負けらんない…………兄さんを見捨てた、あんたたち傭兵なんかに…………!」

 

『システム、スキャンモード』

 

動き始めたのはほぼ同時だった。自動的に肩部あたりからリコンを射出する。ティアナはなにやら空中に魔力の塊を生み出している。

 

『システム、戦闘モード』

 

それを警戒しつつ、足に魔力を付加して加速。真っ直ぐティアナに向かっていく。

 

「フォトンバレット、シュート!」

 

すると先ほど生み出した魔力の塊から魔力弾が撃ち出される。そしてティアナ自身も魔力弾を放つ。それらの間を器用に建物の壁を蹴って回避する。

 

「まだまだぁ!」

 

更に魔力弾が撃ち出される。時に地面を、時に建物の壁を、時に魔力弾そのものを蹴りつけて、ありとあらゆる方法で回避しつつ、少しずつティアナに接近していく。そして一定距離に入った時に一気に距離を詰め肉薄する。

 

「はぁ!」

 

接近されたティアナは銃口に魔力刃を形成し、こちらに振るってくる。それを体勢を低くして回避すると同時に魔力を足に付加させ、加速。そのまま蹴りを打ち込む。

 

「ぐうっ!?」

 

コンマ数秒遅かったらしくギリギリで防御魔法を張られるが、後ろへ若干吹き飛ぶ。そこに追い討ちでプラズマミサイルを打ち込みながら、そして建物の壁を蹴って上昇する。

 

「逃げるなぁ!」

 

ティアナは迫ってくるプラズマミサイルを魔力弾で迎撃する、が、迎撃した瞬間に強い光とプラズマがあたりに撒き散らされ、ティアナの視界と体力が一瞬だけ奪い去られる。

 

「ううっ…………はっ!?何処に!?」

 

そしてティアナが索敵を開始した時にはもう遅かった。

 

『システム、スキャンモード』

 

既にリコンはそこら中にばら撒かれており、ティアナが何処にいようと索敵し、狙撃ができる状態だった。

 

『システム、戦闘モード』

 

スキャンモードでティアナの姿を確認した後に素早く戦闘モードへ切り替える。そして右のスナイパーキャノンを構える。足の装甲が展開しシールドになる。更に足の脹脛のアンカーが展開し、固定される。バイザー内のレティクルは変化し、構え武器用のモードに切り替わる。その中央に移るのはティアナ。そして、引き金を引き絞る。轟音と共に3発の大口径弾が連射される。

 

「狙撃…………!?」

 

轟音に気付いたティアナだったが音速に近い弾速のスナイパーキャノンを避けられるはずもなく、スナイパーキャノンは背中、左肩、右脇腹に直撃する。

 

「がっ…………!?」

 

バリアジャケットの性能により、貫通や骨折はしなかったものの、おそらくその下には青アザは確定だろう、そのくらいの痛みだった。

 

「負けるもんですか…………負けられないんだ!」

 

ティアナはワイドエリアサーチと呼ばれる、索敵魔法を発動し操作する。が、それも3発の轟音により、中断される。そして大口径弾が建物の壁を貫通して、ティアナに迫る。

 

「壁抜き!?」

 

すぐさま防御魔法を張りながら後ろに飛ぶ、が、回避は不可能に陥った何故なら。

 

「しまった、あいつこれを狙って!?」

 

大口径弾よりも大質量のものがティアナに襲いかかってきた。壁抜きと同時に重要な柱を撃ち抜き、建物のバランスを盛大に崩した。バランスを崩した建物はどうなるか、しかも撃ち抜いたのはティアナ側に荷重のかかっている柱。それを撃ち抜けばどうなるか、建物はティアナ側に倒れる。やがて大量の粉塵が辺りを包む。ティアナ周辺に置いたリコンも巻き込まれたらしくリコン反応が消滅している。

 

『システム、スキャンモード』

 

システムをスキャンモードに切り替えて、索敵する。そして瓦礫の一部が動くと、そこからティアナが這い出てくる。

 

『システム、戦闘モード』

 

すぐさま戦闘モードに切り替えて、さらに左手のスナイパーキャノンを構える。バイザー越しに見えるティアナは肩で息をしており、此方を探している。それをしばらく眺めた後、レティクルを頭部に合わせてスナイパーキャノンに魔力付加をかけ、引き金を一気に引き絞る。五回の轟音と同時に五発の大口径弾が撃ち出され、それぞれ、右肩、左肘、背中、腰と直撃し、最後の一発は頸椎部をかすめ、ティアナの意識を刈り取る。

 

『作戦目標クリア、システム通常モードに移行します』

 

そしてそのまま踵を返し、転送ポートに歩いていく。

 

『…………後で事情を聞かせてもらうで?』

 

はやてが念話を飛ばしてくる。それに側頭部を二回叩き答えた後、そのまま歩いて行った。

 

 

 

♢♦︎♢♦︎♢♦︎

 

 

 

数時間後、はやてに促され病室に入って行く。既にティアナは起きており、入ってきたこちらを睨みつける。

 

「…………何の用…………?」

 

『はやてに促されたからきた。』

 

「あっそ、なら要は終わったでしょ。早く出て行って」

 

そしてティアナはそっぽを向く。それを見た後にスケッチブックに鉛筆を走らせる。

 

『別に傭兵をどう見ようが構わない、けど、恨みを理由にした八つ当たりはやめて』

 

『こっちも弾もタダじゃない』

 

書かれた文字をティアナが横目で見る、それを見た瞬間にティアナが右手を振り抜く。

 

「煩い!何よ!結局傭兵なんてみんな金と弾丸の事しか考えてないじゃない!」

 

叩かれた頬を拭い、スケッチブックに鉛筆を走らせる。その間もティアナは続ける。

 

「私は傭兵が嫌いなのよ!金に意地汚くて、卑怯で、誰とでも平気で手を組む!だから私は嫌いなのよ!」

 

『別にどう思おうと構わないといった。ただそれをこっちにぶつけるなと言っているだけ。』

 

「黙れ!みんな兄さんと同じ目に合わせてやる!あんたも、あのマギーって奴も!」

 

ティアナ言葉を終えたその瞬間に壁に押し付けられ、喉を的確に指で締められる。

 

『こっちの事は、なんとでも言っていい。心っていうものがないらしいから。』

 

『ただ、マギーやファットマンに手を出すっていうなら今この場で殺す。人一人殺すなら動脈と静脈ごと喉を抉り取るだけで十分だ。それが迷わずできる、心が無いから、正確には切り捨てたから』

 

『少なくとも、傭兵をやる為に、生きていくために必要だったから』

 

喉を締めている指に力をさらに込める。ティアナの喉から紅い筋が一本垂れる。そして扉の方を横目で見るとティアナの喉から手を離す。

 

「ゲホッ!ゲホッ!?」

 

『気をつけて、今回は気まぐれが過ぎただけ。次は黒く焼き尽くしてやる』

 

そう言って、扉を開ける。外には三人の男女がいた。そしてスケッチブックに鉛筆を走らせる。

 

『よく見ておいたほうがいいと思うよ、あなたたちのためにも、こっちの弾代の為にも、ね。』

 

そして今度こそ、病棟から去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

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