ホテルアグスタの裏側
「あたしは…………あたしはぁ…………!」
「いい格好ね」
「!!」
ミスショットで危うく相棒を撃墜しかけたティアナ。後ろから声かけられ振り向くと、そこにはマギーが立っていた。
「…………何ですか?いま警護中なんですけど…………」
そっぽを向き腕で目元を擦った後、マギーに向き直る。
「戦果を取ろうとするのは良いことだけど、それで味方殺したら元も子もないわよ。自分の力量を弁えれないなら、貴方は魔導師をやめた方がいい。」
「…………!!!」
ティアナがマギーに自身の拳銃型のインテリジェントデバイス"クロスミラージュ"を突き付ける。
「煩い!始めてあった時からそう!あんたはいつも高い所から私を見下ろしてくる…………!そんな所から見てるあんたなんかに私たち凡人の気持ちがわかるもんか!」
「…………はぁ、凡人、ね…………下らない劣等感、いや、もうそれは嫉妬心ね…………」
「煩いって言ってんのよ!」
「その言葉…………傭兵なりの言い方で返すわ、"自分を凡人と言えるなら、そいつは才能の塊だ"。」
マギーは素早くティアナの懐に潜り込むと、ティアナの額を指で突く。
「痛っ!?」
「あなたにはあの三人に無いものがある…………今私がここで教えてもいいけど、それはあの子、高町なのはの仕事。」
マギーは踵を返して、ティアナから離れる。
「ああ、後射撃を正確に当てたいなら、今話したのを見つけられたら私のところに来なさい、傭兵なりの撃ち方で教えてあげる」
そしてマギーはヘリへと戻っていく。ティアナはそれを呆然と見つめていた。
「お疲れさん、マギー。」
「はぁ、兄妹揃って同じタイプ、か…………あの手のやつは一度折れると面倒くさいのよね」
「お前と同じだな、マギー」
ヘリから物凄い音がしたのは後日談である。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
数日後、ホテルアグスタの件も穏便に終わり、また訓練の日々が続く。そしてビルの上から、フォワード四人とフェイト、ヴィータの六人が見ている。
「あいつ、動きいいな」
「うん、やっぱりずっと戦い続けてた傭兵なんだね…………でも…………」
「あの歳であの戦闘レベルは、度を超え過ぎてるぞ。」
そんな会話を聞きながら、次々と襲ってくる桜色の魔力弾を撃ち落とし、切り払い、防ぐ。左手に握るのはレーザーブレード、右手には分厚い鉄板のようなシールド、それぞれのハンガーにはパルスマシンガンとレーザーライフルが装備されている。そして肩にはCE弾頭のミサイル。武器の殆どがなのはの指定した武器である。
『魔力、残り30%』
シールドをハンガーに待機させ、レーザーライフルと入れ替える。そしてレーザーライフルをチャージしながら、ビルを蹴って上昇、なのはのいる空中へと躍り出た後、レーザーブレードで斬りかかる。
「…………(うん…………粗悪品って聞いてたけど結構出力は高い…………動きも良いから、あまり私の指摘するところはないかな…………強いて言えば危ない避け方ばっかりしてるのが、玉に瑕かな…………)」
振るわれたレーザーブレードを防御魔法のシールドで防ぎながら、なのははレイヴンの軽い考察をまとめる。そして、自身のデバイス"レイジングハート"で吹き飛ばし距離をとらせる。吹き飛ばされた直後に、チャージしたレーザーライフルをなのはに向け撃つ。それをなのははラウンドシールドを多重に重ねて防ぐ。
(射撃の精度も正確、遠距離も近距離も問題なし、だね。)
レーザーライフルを防いだ後、魔力スフィアを形成、それをレイジングハートで叩くと、魔力スフィアが数十発の誘導魔力弾"アクセル・シューター"に変わる。それが四方八方から襲い来る。それを落下しつつレーザーブレードで切り払い、ビルの壁面を蹴って反転、レーザーライフルとシールドを入れ替え、アクセルシューターを捌いていく。そして、魔力反応を追いなのはの方を向いた瞬間に、リミッターのかかった砲撃魔法"ディバインバスター"が放たれる。
『シールド破損、パージします』
シールドに魔力を付加して身を屈め防ぐものの、シールドが削り切られ破損、パージされる。さらに追い討ちをかけるようにアクセルシューターが数発降り注ぐ。それをレーザーブレードで斬り払うが、数発をなのはが思考誘導し、レーザーブレードを回避した後に、背中や肩、足に直撃させる。
『ダメージを受けています、回避して下さい』
足に魔力を付加、視界の端を見れば魔力を示すゲージがジリジリとは回復しているが、全力戦闘には心許ない。そして後方に退避しつつ、CEミサイルを数発撃つ。着弾前にアクセルシューターに数発撃墜され、残りは防御魔法に防がれる。
『魔力、残り30%』
回復していた魔力が、また赤ゲージに戻る。レーザーブレードで建物の一角を両断、なのはに向けて蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた直後になのはが砲撃魔法でそれを破壊、あたりに粉塵が舞う。その隙に、建物内に隠れる。
『システム、スキャンモード』
リコンに捕らえられたなのはの姿が壁越しに写る。魔力のゲージはようやく三分の一強。
『システム、戦闘モード』
そしてハンガーのレーザーライフルを取り出し、チャージを開始する。そして壁越しになのはをロックオンし、それを維持したまま建物の窓から飛び出る。そして、CEミサイルを最大ロック数で撃つ。
『肩部、残弾30%』
デバイスから警告がなる。CEミサイルはなのはのアクセルシューターにより、撃墜されるが爆炎が目隠しとなり、そのままなのはに接近する。
「…………そこ!」
そして、レーザーブレードで強襲するも、防御魔法に防がれる。その防御魔法にレーザーライフルの銃口をねじ込み、撃つ。
『魔力がありません』
デバイスからの警告の後に、レーザーブレードが消え、そのまま自由落下で落ちていく。そして、ビルの上に着地し、なのはを見上げると既に砲撃魔法を放っており、そのまま為す術なく直撃する。
『深刻なダメージを受けています、回避して下さい』
武装を確認する、レーザーライフル及びレーザーブレードを紛失、CEミサイルは動作不良に陥り全て捨て撃ち。残りはバチバチと音を立て、今も誘爆しそうなパルスガンのみ。大人しく両手を上げた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「レイヴン…………凄かったね。」
「ああ、多分魔力切れさえ起こさなきゃ、いいところまでは行ってた。新人共にもいい薬になったろ。」
「そう言えば…………レイヴンの魔力ランクって…………」
「わかんねぇ、シャマルに聞けばわかるんじゃねえか?」
隊舎の食堂で話すフェイトとヴィータ。話題はもちろん先ほどの模擬戦の結果。撃墜ではなく、降参。フォワード陣もこれに感化されたように訓練に打ち込んでいる。そして話題はレイヴンの魔力ランク。
『ん?如何したの?ヴィータちゃん』
機動六課の医療班であるシャマルに通信を開く。
「いや、お前最初にレイヴンの検査とかやったよな?そん時に魔力ランクは測ったんだよな?」
『うん…………測ったんだけど…………』
ヴィータからの質問にシャマルは口籠る。フェイトも質問をかぶせる。
「シャマルにしてははっきりしないね。どうしたの?」
『レイヴンの魔力ランクは…………測定によるとD+…………本当ならストレージを起動できるギリギリ…………セルデバイスでもほんの少し余裕が出来るだけなの…………』
「でもあの剣や銃からは魔力が感知できた、それだけの魔力はあると思うんだけど…………」
「内臓魔力か…………それともリミッターで押さえつけてんのか…………」
フェイトとヴィータが考え込む。さらにシャマルが補足説明をかぶせる。
『精密検査もしたけど…………リミッターはかかってなかった…………』
「ますます、だな…………」
「うん、でも戸籍がない以上情報を調べることもできない…………」
『後シャーリーから聞いたんだけど…………』
「シャーリーから?」
『レイヴンのデバイス…………何処へかは分からないけど、戦闘データを送信してるの…………』
「…………送信先は?」
『ごめんクラールヴィントで逆探知を掛けたんだけど、途中で妨害されて…………』
「デバイスの機能か…………それとも、送信先の奴がやったのか…………」
『今度もう一回やってみるね。』
「うん、お願い。」
そしてシャマルとの通信を終了する。そしてフェイトとヴィータが食堂の席を立つ。
「ま、あとはなのはを交えてじっくり話すしかねーな。」
「だね、今度時間作るよ」
「頼む」
そしてフェイトとヴィータは食堂から出て行った。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「あ、レイヴン。ここにいたんだ」
機動六課の寮の屋上で空を見上げているとなのはがやって来る。
『お疲れ様』
「うん、少し冷えるね…………何か飲む?」
『大丈夫です』
そしてなのはは隣に来て空を見上げ始める。
「星…………綺麗だね…………」
『そうですね』
「寝れないの?」
『こういう夜は数え切れず過ごしましたから…………こういう、眠りのない夜は…………』
「そっか…………ちょっとだけ、お話ししようか。」
『分かりました』
なのはは色々と話した。フォワード陣の成長、レイヴンの模擬戦により感化されたのか最近成長速度が著しい事。
「そう言えば…………模擬戦、ちょっと危なかったかな…………」
『まだまだです…………全盛期のマギーなら落としてた』
「あはは、カーチスさんなら仕方ないよ。その年でそれだけ出来るんだもん。」
『自分にはこれしかないから』
スケッチブックに書かれたその言葉を目にした瞬間に、なのはは悲しそうな顔をする。
『…………もうすぐ夜も更けます。自分はもう少しここにいます』
「うん…………そうだね。ごめんね。なんか愚痴みたいになっちゃって」
『お気になさらず、お休みなさい』
「うん、お休み」
なのはは寮の屋上を去っていく。そして、声を掛けてくる。
「カーチスさんでも誰でもいいから、何かあったらちゃんと話してね?」
なのはは今度こそ寮の屋上を去っていく。そして空を見上げたまま、目を閉じる。傭兵で無くなった自分を想像しながら。