24区。
「ここが新しい住居か……中々、古くない?」
「贅沢ゆーな。これでも頑張って探したんだから」
フェンスに囲まれ「立ち入り禁止」のポスターが貼られた古い廃ビル。ここが彼らの新居だ。千葉出身レート不詳の喰種二人組が住んでいるなんて、誰も思わないだろう。
捜査官の手から仲間達を守るため彼らは喰種対策国制支部からさえ恐れられる24区へ身を移した。ここではSレート以上の怪物ばかりが居ると聞いていたので、白鳩達も狙っては来ないだろう、という見解だ。
「さて、荷物ほどき終わったら、ここのリーダーに挨拶行くよ」
「居場所わかるの?」
「聞いてきた」
「さっすがー!」
「早く終わらせて早く行こう」
「うん!」
生活に必要な物だけ持ってきた彼らは、すんなりと荷物を定位置へ運び終えた。
───────
「……ほんとにここ?」
「……多分な」
教えられた所に来てみれば、会員制のバーがあった。何か合言葉を言えってのも無いしな……
「……取り敢えず叩いてみよ?」
「……そうだね」
コン、コン。コン、コン。
木製の扉が気持ちのよい音を跳ね返してきた。もしかしたら誰もいないかも。そう思いもう一度しようとした時、
ガチャ。ドアが開くと、中の女が色気を微塵も隠さず立っていた。
「眼、見せてくれる?」
彼らは取り敢えず、事情を説明した───────
「成る程、あなた達がグィンから聞いた子達だったのね……それにしても、そっちの彼。隻眼でもないのは驚いたわ。そんな喰種に今まで出会った事が無かったものだから」
女はある意味、彼─ヤスに当然の反応を示した。眼は赫眼でなく、栄養も人間の物でカバーでき、しかしRc細胞の量が過多で赫子の強靭さが共食いをともわずとも成長と共に強くなっていくという、異色の喰種。二人とも違う親に育てられてはいるが、ヤスは親が隻眼で赫者だ。その影響か、最近では成長と共に頭に何かができてゆく感じが多いと言う。おそらく自然的に赫者になっていくのではないかとヤスは推測する。
「まぁ、奇妙すぎる生い立ちですからね」
「私達二人とも、というのがまた奇妙さを呼ぶ、といいますか」
隻眼が産まれる確率が極めて低いというのに、二人の隻眼の喰種から子供が出生する確率はほぼ0に近いのではないだろうか。
その0に近い確率から産まれた1人の無眼と、確率は無眼より高いもののまた0に近い隻眼が出会うなど、偶然も偶然という言葉で片付けられなくなってきたと本人達も自虐する。
「隻眼の子達なんかは六人いるけれどねぇ……」
と呟いた。
「ところで」
と、女が口を開く。
「その力を見込んで貴方達、少し助けてもらえないかしら」
「助ける、とは」
今までとは打って変わった真剣な態度だ。空気も共に、真剣なピリピリとした雰囲気になる。
「この24区は今、混乱の中にあるの。その混乱の原因がCCG……白鳩の介入」
初耳だった。24区に白鳩が来ていたなんて。
「支部が、作られたんですか?」
「答えはNOよ。まだ大規模な介入はされていないけれど、厄介な相手を送りつけて来たわ」
「……それは?」
数瞬の沈黙の後、躊躇しながらたどたどしく言葉を紡ぐ。
「聞いた事があるかしら……喰種でもない、白鳩の中でも非公認。でも多数の強力な喰種を駆逐して来た都市伝説じみた奴の事……」
ヤシャのまわりに漂っている空気が、尋常でないものに変わる。
「時に喰種の根幹に触れた人間でさえ殺す、残忍な一人の男」
「………ナツメ……!」
彼女ヤシャの顔色が真っ青になり、隻眼が出現している。激怒、憎しみ、悲しみ。そんな空気がヤトを包む。
「知ってたのね」
落ちつくような深い深呼吸を何度も繰り返すヤトを見兼ね、背中をさすってやりながらヤスが答える。
「……この子、ナツメに親を殺されてるんです」
そう言った時、女の顔が悲痛なものを浮かべる。ヤスは察した、この女の人もか、と。
ちょっとあっちで水飲もうか、とヤシャに退席を促す。
「そう……話を戻して、いいかしら」
平気な顔を取り繕った女が本題を切り出してくる。
「そのナツメが、この混乱の原因なの」
「それって……」
「ナツメが、24区に居るって、事、ですよね」
ツヴァイクの意味?わからんとです(⌒▽⌒)