「そう、よ」
悲痛な面持ちで彼女は語る。
「この区の仲間が大勢やられた……それも……真正面から」
それを聞いたヤス。
(24区の喰種を真正面からって……本当に何者なんだ、ナツメ……)
「強い人達だった……!私より古参なのに!私を支えてくれていたのに……!」
吐き気を堪えながら、ヤスがずっと疑問だった事を口にする。
「………ナツメは、何を使って喰種達を……」
「武器……クインケ……で殺されてた……」
「……見て、ないんですね……」
気づけば女は涙目になっている。このままでは話がどんどん他の方向に行ってしまうとヤスは確信、(本当にこの人が24区仕切ってたのか……?)と思いながら切り出した。
「で、協力とは」
鼻をすすりっていた女はまたきりりとした表情を繕い、本題を口に出した。
「私達の組織、ツヴァイクに入って欲しいの」
24区の喰種が口にしたのは、他の所なら当たり前の事だった。ヤスは疑問に思い、何故そんな当たり前の事を、と言った。
「ここに来ても私に挨拶に来ない喰種が沢山いてね……組織に入るなんて当たり前の事、中々実行してくれないの」
「確かに、24区に来る喰種は協調性が無いのが多いのかも知れませんね。で、ツヴァイクとは」
「ここに入る前、扉の上にあったでしょ?ツヴァイクって」
思い返すと、確かにネオンの文字にアルファベット系の言葉がかかっていた。アレはツヴァイクって読むのか……
「勿論僕ら入りますけど、メンバーってどんな人らなんですか?」
「紹介するわ。それと、私まだ自己紹介がまだだったわよね?私の名前は久遠鳴子。CCGからは「ナルカミ」って呼ばれてるから、呼び合うのはナルカミでお願いね!」
「いい名前ですね…自分は舟波ヤスです。鳩に付けられたのは変な名前で、ですね。「異形」と言います。呼び合う時はこれで。あと、あっちのは舟波ヤシャっていいます。「九尾」ですんで、そこも呼び合う時はお願いします」
「あれ?兄妹なの?」
「いえ、僕ら───結婚してます」
───────
「今日皆に集まってもらったのは、新しいメンバーを紹介する為だよーん。夫婦の舟波ヤスくんと、ヤシャちゃん!拍手!」
シーンと静まったバーの中に久遠の拍手だけが響く。中に四人の喰種が居るが、皆ヤスとヤシャの方を見ない。マスターらしい壮年の男、ヘッドフォンを首にかけて眼鏡を手元で弄る男子学生、露出の激しい女と、耳すら傾けず本を読む女。
仲間を大量に失ったのが大きいらしく、気だるそうにしている。
「このヤシャちゃんは隻眼で、こっちのヤスくんは無眼なの!」
この一言が一同の態度を変えた。露出の激しい女がヤスの目の前に来て口を開いく。
「“眼”、見せてよ」
「…無いんですって」
ヤスが眼を見開いて見せるが、納得しないとばかりに大きな鼻息を出し、今度はヤシャに迫って、
「“眼”!」
と言った。
「……ん」
一つの眼に赫眼が出現した事に満足し、久遠に
「コイツは戦力になるわ、ただこの男はダメだね。赫眼が出ないなんて論外よ」
「なぜ?」
「なぜって……喰種じゃないみたいだからよ!大体無眼ってなん……っ!?」
「まぁ待て。……ヤス、と言ったかな。ここで戦力になる事を証明してくれ。ここで生きるなら力がある事を示す必要がある」
訳のわからない先入観で話す女を制した壮年の男性が、眼を出現させながら話す。
「えぇ、ではどうしましょう。ここで皆さんを皆殺しにしてさしあげましょうか?」
「地下に来なさい、そこで実力を見よう」
バーの奥の扉の鍵を開けたそこには、地下に繋がる階段があった。明らかに不審だ。久遠を見るが「行きなさい」という目で降りるのを促してきた。
(行くしかない、か)
他の喰種がどんどんと降りる中、誰にも気づかれずにヤスはこう呟いた。
誰か死んでも知らないよ