「ちょちょちょ、まってまって!」
久遠が手を全力で振りながら四mはありそうな九尾、ヤシャを制する。
「実力を示すのはヤスくんだけだから!乱入しなくていいの!」
赫者のゾーンに入っていたヤシャは仕方なさそうに形態を解除する。
(あ、ため息ついた)
「はい、ちょ、マスター全力!?やめてよ本当!」
久遠の戸惑いの視線の先に、赫胞を全解放したのであろう喰種が。
眼がぐっぽりと空き、全身をベルトのように赫子が覆う。
「…………摘ム」
「俺全力で行ったらここ壊れるけど」
い い よ ね
「……!ヤスッ!」
「ゥぐへクくくクぇえ"エ"ベへぶざゃびがぁがかかカカカカカ」
あぁ、頭いてぇな……
意識は、途切れた。
───────
「で、なんでこうなった」
「ヤスが“成って”あの人やってから皆止めにかかったんだけどね……」
血、血、肉、腕
「やっちまった……!」
天国の様な色だったここは今や地獄の様な有様だ。ヤシャも俺を止めるのに尽力してくれたのだろう、血まみれだ。
対して俺は無傷。罪悪感でいっぱいだわ。というかあの親父は?
「あのジジィは?」
「救護室みたいなところに連れていかれてたよ?もう腕が再生しなくなっちゃったから、回復するまで戦えない」
なんだよ大口叩いてた癖に。案外よえーんじゃん。
「そか、合格でいいのかな?」
「久遠さんがよんでるよ。バーまで来て、だって」
「ok」
───────
「合格ってマスターに言われてたわよ。本当に強いのね……全力のマスターは10分経たずに戦闘不能にしちゃうし、止めようとした私達を逆に細切れにするなんて……」
自分の体験を思い出して怖くなったのか、顔が青くなっている。悪い事したなぁ、と思う。
「ほんと、ごめんなさい。全力で行ってしまって……」
「……意識あった?私達を殺す事に躊躇がなかったみたいだし」
「あの時は本当に無いですね。あるとしたら、九尾状態のヤシャの上に居る時ですね」
九尾状態のヤシャ。その上に居る時はなぜか意識が戻る。
「赫子の相性がいいのか分からないんですけど、その時は“融合”のようなものも出来るんです。ヤシャの赫子の中に入って赫子を展開する感じ、と言った方がいいか。そんなです」
ちんぷんかんぷんの様な顔だが、とりあえず理解したわようんうんといったように何度も頷く久遠。
「とりあえず、マスターに挨拶に行ってきて?彼、貴方の事気に入ったみたい。救護室はあの廊下曲がった先ね」
久遠が指差した先はお手洗いがあった廊下だ。
(奥なんてあったのか……)
てってれー
ヤス は 隠し部屋 を 見つけ た 。