出雲「おいおい、第一部まだ半分もいってないぞ」
やめろ!それ言わないで!?
竹林を歩く事1時間、出雲は前後左右どこを見回しても竹しか見えずにうんざりしていた。
出雲「そうか・・・・・・これが迷いの竹林って言われてる理由だったか」
出雲は方向感覚を見失いながらとりあえず前へ進んでいた。少し先は竹に遮られてよく見えない。
こんな状況で敵意ある妖に出会ってしまったらどこから不意打ちされるかわかったものじゃなかった。
その時、出雲の目の前に誰かが現れた。
出雲「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
それは以前、出雲を追い回した青いつなぎを着た妖怪だった。出雲は妖怪が動くより早く妖力を解放して、外見が変わるより早く逆方向に向けて全速力で走り出した。
出雲「ぎゃあああああああああああああ!!なんで!?なんで"奴"がここにいるんだよ!!!」
出雲はふと後ろを向く、妖怪は以前同様アスリート走りで出雲を追いかけて来た。出雲は今妖力解放状態で速力も相当上がっているにも関わらず差は全く開いてなかった。
「や・ら・な・い・か?」
出雲「やるかあああああああああああああああああああ!!!」
出雲はガンホルダーから白陽を取り出すと、「バーストショット」に設定して連射する。その全てが妖怪に命中する、しかし多少仰け反るがすぐに態勢を戻して再び追い始めた。
出雲「ば、化け物おおおおおおおおおおおお!!!!」
出雲は必死にこの際永遠亭に戻ってもいいから兎に角妖怪を振り切りたいと思いながら涙目になりながら走り続ける。
すると、目の前に外壁と門が見えて来ていた。出雲は妖怪を必死に振り切ろうとして人里に行き着いていた。
出雲「ほ、本当に抜けられた・・・・・」
出雲はふと、鈴仙の言っていた事を思い出した。てゐには人に幸運を渡せる能力があると、だから竹林で迷う人間はいても死者は少ないらしい。
出雲(あれはこういう事だったのか・・・・・っ!!)
ふと振り向くと、妖怪はすぐそこにまで迫り両腕を広げて捕獲態勢に入っていた。このまま捕まれば間違いなく大切な何かを失う。出雲は全妖力を足に込めて走る。
??「伏せろ!」
すぐ前方からの声に出雲はスライディングしながら身を屈める、すると丁度頭上を腕が通り妖怪の頭にアイアンクローを決める。
その腕の主、白い髪にもんぺ姿の少女に見覚えがあった。先の異変で里の防衛で共闘した少女、藤原妹紅だった。
妹紅「燃え散れ!!」
妹紅が手に力を込めると、妖怪は一気に火だるまになり投げ出された。妖怪は何度も火を消すように転げながら竹林の中へ消えていった。
妹紅「ふう・・・・・・っとお前、大丈夫かって・・・・・」
振り向いた妹紅と目が合い、出雲は安堵から腰が抜けて溜めていた涙を流した。
妹紅「あれ、出雲じゃないか!」
出雲「妹紅ぉ!怖かったよぉ~!!」
捕まる寸前で現れた救世主に出雲は抱きついて泣き叫んだ。
妹紅「あ~よしよし、あれは怖かったな~もう大丈夫だからな」
妹紅に宥められ、5分後にやっと落ち着いて人里に入った。
妹紅に礼をする為に、出雲は適当な所の甘味処に入った。
妹紅「礼なんて別にいいのに・・・・」
出雲「いや、あのまま捕まってたら一生残る深い傷が出来ていたんだ。そう思えばこれくらいの礼は・・・・・すみません!この春限定桜杏仁二つ!!」
妹紅「い、いいのか?これ結構高いぞ」
出雲「香霖堂で自分の持ち金換金したらさ、なんかかなり多くて有り余ってるんだ。だからこれくらいなら大丈夫」
妹紅「そ、そうか?じゃあ遠慮なく、正直言うと一度食ってみたかったんだ♪」
妹紅は遠慮しがちにもどこか嬉しそうにしていた、男らしい口調や性格をしているがこういう所は普通の女の子と変わらなかった。
藤原妹紅は元人間であって普通の人間ではない、彼女も輝夜や永琳、そして鳳炎同様蓬莱人である。
妹紅はかつて人間であった頃、さる貴族の娘だった。ところが、彼女の父がある少女に求婚したことで彼女の運命は狂い始めた。
父は少女の難題を受けて大恥をかき、以降他の貴族から後ろ指を指されるようになった。妹紅は父に恥をかかせた少女が許せなかった、しかし少女は月に帰ってしまった。妹紅は細やかな復讐の為に帝が富士の山に投げ捨てさせようとした蓬莱の薬を奪い、それを飲んだ。
その少女こそが、蓬莱山輝夜であり、以降不老不死となった妹紅は各地を転々としながらこの幻想郷に行き着いた。
今では、たまに喧嘩はすれど、互いに死ねない身故にかつての憎しみはもう薄れてきていた。
妹紅「バカな話だよな、復讐の為に人間辞めたってのに・・・・・」
出雲「・・・・・・・・どんな憎しみだって、時間が経てば薄れるもんさ。」
丁度、運ばれてきた、桜色に餡子や桜を模した綺麗な装飾のされた杏仁を一口口にする。
ほんのりとした甘さが口の中に広がっていく。
妹紅「・・・・・美味い、この値段も納得だな」
出雲「・・・・・・ああ、これは、言葉に表せない美味さだ」
出雲と妹紅は笑いあいながら、雑談を交えつつ桜杏仁に舌鼓を打っていた。
「ありがとうございました!」
出雲と妹紅は会計を済ませて店の外に出た。
妹紅「お前、結構甘党だな」
出雲「否定はしない。さて、これからどうしようか・・・・・」
妹紅「そうだ、慧音に会ってけよ。」
出雲「・・・・そうだな、慧音さんにも心配かけたみたいだしな」
出雲は妹紅の提案で慧音に会う為に寺子屋の方に向かって歩を進めた。
??「おや?あれは・・・・・これはネタの匂いがしますね~」
寺子屋に行くと、丁度授業が終わった所のようで職員室に通された。
慧音「出雲、すまないな。本当なら見舞いに行きたかった所だが」
出雲「気にしないでください、異変の事後処理とかで慧音さんも大変だったでしょうから」
療養中の出雲の見舞いに行けなかった事をまず謝られた。慧音はこの数日、異変の事後処理の指揮から犠牲になった集落への謝罪回り、そして能力覚醒者やその候補者への講義の義務化などであちこち駆け回っていた。
慧音「だが、君にも迷惑をかけてしまったのは変わりない。情けない話だが、妖怪との交友をよく思わない者は少なからずいる。とはいえ、異変を起こすとは思ってもいなかった。私の落ち度だ」
出雲「でも、過ちに気づいてそれを直そうとすることはいい事だと思います。俺も出来る範囲でなら協力させてもらいます」
慧音「そうか、では一つ頼みたいことがあるんだが・・・・」
慧音は改まって一息つくと、出雲にある事を提案した。
慧音「出雲、自警団に入らないか?」
出雲「・・・・・・・・・え?」
突然の誘いに出雲は困惑していた。
次回予告
慧音「すぐじゃなくていいんだ、もし決心がついたら言ってくれ」
出雲「は、はあ・・・・・・」
自警団にスカウトされた出雲
妹紅「実際、自警団の人手不足は深刻さ」
文「どうも~清く正しい新聞記者、射命丸文です!」
聞かされる自警団の現状と突如現れた自称新聞記者
出雲「次は・・・・・地底に行こうと思うんだ」
妹紅「お前も変わってるな・・・・・・けど、あそこにはヤバい奴もいるから気を付けろよ」
出雲は次の目的地、地底を目指し、一度博麗神社へ向かう
次回、第28話「舞い降りる鴉天狗」