「正直重いんだよね。」
真夏で蒸し暑い廊下にその言葉はあまりにも冷たく響いた。
俺は音ノ木坂学院に通う高校1年生。少子化の今、女子校の経営は厳しく、音ノ木坂学院も今年から共学化された。とはいえまだ男子は少なく、女子に囲まれながら受ける授業はいまだなれず、男友達と食べる昼食の時間だけは俺の至福のときだった。
昼食を食べ終わり5時限目の化学を受けるべき化学室へ向かっている途中3人の女子生徒がいた。遠くからでよく分からないが、なにやら言い争いをしているようだ。3人のうち2人は俺に背を向けているため分からないが、1人は同じクラスの矢澤にこだということがこの距離からでも分かった。というのも、そいつは1学年の間ではちょっとした有名人なのだ。
有名な理由その1
このクソ暑いなかブラウスの上にピンクのカーディガンをいつも着ているのだ。理由を聞いても「あんたには関係ない」の1点ばりだ。
有名な理由その2
“アイドル研究部”というSOS団に匹敵するわけのわからない部活を作ったのだ。よくこんな部活をあのドS金髪美女がいる生徒会が承諾したものだ。
化学室へ行くにはどうしても彼女らがいる廊下を通らなくては行けないので、気分は進まないが俺は渋々通ることにした。
彼女らとの距離が近づくにつれて会話の内容も聞こえてくる。どうやら、部活のことで揉めているらしい。
喧嘩もヒートアップし、さすがに見てられなくなった俺は止めに入ろうかと思ったが、その必要は無かった。
彼女ら2人は矢澤に対して一言いい放った。その瞬間、矢澤は何も言い返せなくなった。そして、立ち尽くすなか、彼女ら2人は振り返り俺の横を通り過ぎて行った。
「だ、大丈夫か。。。」
俺は思わず矢澤に声をかけていた。
「こんなもんで私がへこたれるわけないでしょ」
矢澤は口ではそう言いつつも泣いていた。
5時限目。思わず俺は化学のノートに黒板の板書ではなく
“正直重いんだよね”
という彼女らのセリフを書いてしまっていた。
「彼女はこれを聞いて何を思ったのか。」
俺は矢澤のことで頭がいっぱにになっていた。
放課後、俺は矢澤の方を自然と見つめていた。すると、隣の席の女子が話かけてきた。
「にこっちのこと心配なん?」
彼女の名は東條希。大阪弁の巨乳の生徒会だ。全く、生徒会の奴らはどれだけキャラを立てれば気がすむのだろうか。
「うちには何もしてあげられないけど、君ならできると思うねん」
話を聞くと、東條も俺と同じく廊下の一件を聞いていたようだ。
「俺にも何も出来ないよ」
俺はそう言うと、自分で情けなくなった。無力さを感じた。それでも、東條は
「うちやない、カードがそう告げるんや」
と言うと教室を出て行った。俺は占いなど信じたことがないが、今日ばかりは信じてみた。いや、純粋に矢澤を守ってあげたかった。もう二度と彼女の泣き顔は見たくなかった。
「矢澤。。。」
「なによ、さっきのことならもう気にしてないわよ。」
「俺はお前の見方だ。」
俺はそう言った。心の底からでた本心だった。
「あんただって最後は私を裏切るのよ。あの子達のように。」
彼女はそう言うと椅子から立ち上がりカバンを手にした。
『このままでは帰ってしまう。何か言わなきゃ』
俺は焦った。けれど、なんて言ってやればいいのか分からなかった。だから、俺は彼女をどうしたいかではなく自分がどうしたいかを言った。
「俺は今日からスーパーアイドル矢澤にこの永久不滅のファンだ。なんか文句あるか!?」
「クスッ。なにそれ?」
彼女は笑った。元気になったとまでは言えないが少し気持ちが楽になった様子だった。
それから俺と矢澤は付き合うことになった。矢澤と過ごす日々は楽しく、俺の宝物だった。
そして2年後。俺たち学校のスクールアイドル「u’s」がラブライブ本戦に出場を決めた。俺と矢澤はその様子をネットで見ていた。彼女は泣いて言った。
「なんで私じゃないの。。。」
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