真剣で恋について語りなさい   作:コモド

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自分語りは蜜の味

 問わず語りの自己紹介をさせてもらうが、おれの名前は三河千という。

 

 生まれは、日本の北の方の、少し裕福な農家の次男として育った。家族は曾祖母と祖父母、両親と兄と姉の八人。田舎ではありふれた構成だったと思う。少なくとも周りは二世帯、三世帯住宅は当たり前で、近所に遊びに行けば居間でテレビを眺めているじいちゃんばあちゃんがお菓子をくれた。長居するといつも、「メシ食ってけ」と薦められて、好意に甘えると兄姉か母が迎えにきて頭を下げていた。帰り際も「また来い」と笑顔で送り出されたものだった。近所の子供がうちに来ても同じことをしていた。

 この門戸の気安さと顔の広さは、田舎特有の信頼から成り立つものだと思うが、それにしても可愛がられていたと、思い返すたびに妙な気分になる。

 末っ子で家族には甘やかされたが、それ以上に地元の人々にもちやほやされた。まだ歩き始めたころから、『この子は大物になる』と評判だった。

 

 その理由を説明するには、名前の由来から説明しなければならない。

 おれの誕生に際し、奇妙な逸話がある。おれが生まれてから退院まで、郊外の病院の周りを本来渡来しない鶴が取り囲んだ。冬の珍事として注目を集めた鶴は、おれが退院すると家までついてきたという。

 これを偶然と考えなかった祖父は、この慶事に肖って子供の名前は『千』にしようと提案した。先に生まれた兄と姉の名前は、自分たちで決めると頑として祖父母の介入を嫌がった両親も、この時は反対しなかったという。

 

 ……と、ここまでなら珍しいこともあるものだと、親戚の集いで面白おかしく語り草になる程度の話であるが、それからも奇妙なことが起こり続けた。

 まず、産後から元より体が丈夫でなかった母が壮健になったことから始まり、寝たきりが続いていた曾祖母も外に出歩けるまでに回復した。これならまだ新しい家族に誕生に家が活気づいたで済むが、近所の悪ガキ同士の喧嘩で石を投げられた兄の頭のケガが、おれに撫でられてみるみるうちに回復したことで、おれの出生の逸話と合わせて特別視されるようになった。

 

 一度注目を浴びると、次に何か起きるたびにおれの所為にされた。

 今年はコメが豊作だっただの、台風でウチの地区だけ水害が起きなかっただの、遊びに行った家で宝くじが当たっただの、○○さん家が火事になったけどみんな無事だっただの、とにかく何でもおれに結び付けられた。

 人の噂が回るのも早い田舎だから、あっという間におれは有名になり、どこからも有り難がられ、ひっきりなしにやってくる来訪者に、ご利益がありますように、と手を握られたり、頭を撫でられたり、果てには家族の病気を治してくださいと頼み込む者が訪れるようになった。

 

 始めは自慢の存在で鼻高々だった家族も、このころになるとほとほと困りはじめ、毎日知らない人の相手をさせられたおれも、玄関のチャイムがノイローゼになりかけていた。あまりに神聖視されるものだから、逆に天邪鬼になって祟りでも起こそうかと思っていたとき、変なおじさんが音もなく目の前に現れた。

 いかつい風貌の外国人のおじさんはおれを見るなりこう言った。

 

『なるほど。この赤子は赤子だが、なかなか見どころのある赤子だ。今はまだ赤子だが、近い将来赤子から赤子とは呼べない赤子に育つだろう。できるならおれが直々に育ててやりたいが、あいにく今は暇がない。川神院に預けるとするか。なに、話はつけておく。あの男ならきっとお前を骨のある赤子に育ててくれるだろう』

 

 きっと赤子がマイブームだったんだろう。変なおじさんは赤子を連呼して去っていった。

 おれが不法侵入者を通報しようと電話を取りに行くと、おっさんは居間で緑茶を啜っていた。

 おれが姉に兄弟部屋に隔離されたあと、おじさんは長々と家族と話し合っていたらしく、数日後にはおれが川神院に預けられることが決まっていた。

小学校に入学する前に親元を離れることになり、発つ前に家族と別れを惜しんでから、暇がないはずのおじさんがいきなり現れて、川神までの引率を九鬼財閥が引き受けると言い出した。

 九鬼財閥が何なのか当時は分からなかったけれど、家族が絶対に大丈夫だというので、安心してついていった。

 道中、変なおじさんが質問してきた。

 

『小僧、なぜ泣かない。家族との別れが悲しくないのか』

『かなしいけど、それよりうれしいから』

『何がうれしいんだ?』

『これから行くところでは、ぼくよりすごい人がたくさんいるでしょ?』

『たくさんではないが、赤子と呼べないやつは何人かいるぞ』

『それがうれしい。あそこでは、みんなぼくにやさしかったけれど、わるいことをしても誰もしかってくれなかった』

 

 一度、評判を下げるために、悪ガキだった兄の真似をして家のガラスを割った。でも怒られることはなく、心配されるばかりだった。次に、隣の家のガラスを割った。それでも家族はおれを叱ることはなく、隣人に謝り続けた。隣人も微塵の怒気も見せずに、『こんなことしちゃダメだよ』と笑顔で頭を撫でるだけだった。

 同じことをした兄は長い説教をされて、一晩中離れの小屋に閉じ込められていたのに。隣人も人が変わったように怒鳴り散らして修理費用を請求してきたのに。

 

……後に、ジジイに聞いて知ったことだが、川神家のような武道の家ではない家系にも、おれや釈迦堂さんのような突然変異の異形の天才が生まれるというのは、稀にあるらしい。

 親戚筋を何代に渡って遡っても百姓の変哲のない家系で、おれだけがおかしかった。

緩やかに衰退していく緩慢な世界に、常識外れの化け物が生まれてしまった。

 その影響で片田舎の住人の歯車まで狂ってしまった。元に戻すには、原因を取り除かねばならない。

 

『きっとぼくは、あそこにいていけなかったんだ』

 

 そのときは直感的に思ったことを呟いただけだったが、実際に普通に暮らすことは厳しかっただろう。

 あのままならいずれ誘拐されていたと思うし、たとえされなくても知識がつけば自分から故郷を離れていたと思う。

 まあ、おれが天才過ぎたのが悪いわけで、誰が悪いというわけでもないし、こう生まれたことを呪ったこともなく、むしろ感謝もしていた。

 川神に移り住んでからも連絡は取りあっているし、偶に里帰りもしたりと家族仲も悪くないし。

 

『ふん……』

 

 話を聞いたおじさんは、しばらく黙りこくってから、無言で飴をくれた。おじさんは優しいおじさんだった。

 だが渡された飴が嫌いなハッカ味だったので、おれはそれを道端に捨てた。優しいおじさんは怖いおじさんになった。

怖いと思う間もなく、『ミニマムジェノサイドチェーンソッ!』という蹴りが飛んできて、おれのHPはゼロになった。

 動けなくなってから背負われて移動している最中、『小僧、食べ物は粗末にするな』と説教されて拾った飴を無理やり食べさせられた。

 

 たぶん、これも性癖の形成に一役買ったと思う。

 

 

 

ж

 

 

 

 川神院での生活は楽しかった。

 

 ここでは誰もおれを特別扱いしない。新入りのおれは雑用を押し付けられ、おれは悦び、率先して奉仕した。

 兄弟子の修行僧は人格が優れた者も多く、子供にだけやらせるわけにはいかないと積極的に手伝ってくれた。

 おれは仕事を奪われてなるものかと全力で遠慮をしたが、それでも手伝いをしようとするので、雑用を修行並みに消耗する勢いでこなした。

 すると負けるものかと要らん意地の張り合いで修行僧がおれの仕事を奪うので、おれはジジイに泣きついたが、『うむ、皆、励んでおるの。掃除も鍛錬のうちじゃぞ』と宇宙人みたいな笑い声で温かい目で見守っていた。

 そしておれの頭を撫で、『千、頑張りすぎるのもだめなのじゃ。休むのも修行の一環と心得よ。……のう、千や。儂らはそんなに頼りないか? もう少し、人を頼ってもいいんじゃぞ。儂はおぬしのことも、孫のように思っておるからの』となにやら知った風な口ぶりで語り始めた。

 

 いま思うとこのジジイの目も中々に節穴である。

 

 おれが雑用をしようとすると兄弟子が仕事を取り上げるので、おれはおれを舎弟として奴隷扱いしてくれる姉さん――川神百代に懐いた。

 姉さんとの出会いはセンセーショナルだった。川神院に連れていかれた日、ジジイに同じくらいの歳の孫がいると顔を合わせたのだが、開口一番に姉さんはこう宣言した。

 

『お前が千か。私は川神百代だ。これからお前の姉になる。そしてお前は弟、舎弟だ。舎弟は兄弟子に絶対服従、弟も姉に絶対服従するものだ。つまり、お前は私の命令に逆らえないということ。

 お前は一生私の奴隷になるのだ!』

『は、はい!』

 

 おれは意味もわからず赤面して返事をした。姉さんはジジイにしばかれた。

 姉さんは兄弟子に雑用を押し付けられていたこともあり、その鬱憤を晴らす為か、様々なことでおれに奉仕させた。

 パシリから自室の掃除、鍛錬後のマッサージに食事の配膳に本の読み聞かせ、果ては添い寝など、とにかく生活の大半を奉仕するよう言い渡された。

 もちろん、自堕落な生活を許すジジイではないからおれを解放するよう姉さんに言ったが、『私は一人っ子で寂しかった。だから弟がいたらしたかったことをしてるだけ』と言い返されると引き下がった。

 武道家としては並ぶものない川神鉄心も、孫には甘く、弱かった。思い返すとおれや釈迦堂さんにも妙に甘かったが、それは天稟に恵まれていた以外にも身を預かったことで情が生まれ、肉親に近い感情を懐いていたからだろう。

 

 ジジイは釈迦堂さんと姉さんの矯正ができなかったことを、人生における後悔のひとつと言っていた。

 おれの性癖を見抜けなかったことも、そのひとつに加えていいんじゃないかと思う。

 

 

 

 川神院の荒波に揉まれているあいだ、おれと姉さんの与り知らぬところでは、ルーさんと釈迦堂さんの派閥争いが繰り広げられていた。

 もっとも修行僧の大半は真面目で武道の本質を重んじるルーさんを支持し、粗暴で武道は暴力と説く釈迦堂さんは孤立していたが、その釈迦堂さんを支持したのがおれと姉さんだった。

 姉さんは戦闘狂で、強さこそすべてという考えに本能で同調して弟子入りしたが、おれは一番厳しい稽古をつけて痛めつけてくれるのが釈迦堂さんだったので弟子入りした。

 釈迦堂さんは嫌われ者だったが、だからこそ懐いてくる子供がかわいくて仕方なかったのか、おれと姉さんの面倒をよく見てくれた。

 だが一方で、将来有望な幼い二人を懐柔して危うい道に誘い込んだ、と釈迦堂さんへの非難はますます激しくなった。ルーさんは厳格な態度でしばしば苦言を呈した。

 

『千、なぜ心技体のうち、『心』が先にくるのか分かるかイ?』

『語呂がいいからでは?』

『チガウヨ! いいかイ? 武道は――』

『心が重要だというのは分かります。でも、鍛錬は体と技を磨くばかりで、心の鍛錬は気休め程度の瞑想だけです。どんなスポーツ選手も格闘家も心が一番重要だと説きます。でも、実際は体と技の練習しかしません。体技を鍛えた末に心が身につくというのなら、ぼくはまだ未熟なだけなんだと思います。

 僕も姉さんも、学び始めたばかりで未熟なだけなのに、どうして習ってもいないことで怒られるのか分かりません』

 

 姉さんに言っても話を聞かないか癇癪をおこされるかの二択なので、ルーさんは歳に似合わず賢しいおれに諭したが、おれも口を尖らせて反論した。

 ルーさんも大人なのでムキに反駁することもせず、おれが怒る前に身を引いた。この年頃の子供に理屈は通用しない。自分が信じていることを否定されれば、自分そのものを否定されたように感じて、感情的に、反抗的になるだけだ。

 ジジイもまたこう質した。

 

『天才には凡人の心が分からんというが、武道に置いてもそれは変わらんのかもしれんのう。通常の人が長い修練を積んで辿り着く道のりを一足飛びで超えてしまう。それゆえに過程で得られるものが足りておらん。

 じゃが、天才にしか分からぬ苦悩もあるはずじゃ。千、釈迦堂と百代といて何を知った?どう感じた?』

『苦悩と言われてもわかりませんが、知ったことは、人は強い生き物に従う生き物であることと、痛くないと覚えないことです』

 

 そう答えると、まるで獣の如しじゃ、とジジイは憤り嘆いた。いま思うとただの性への芽生えでしかないのに。おれはもっと痛くして欲しかっただけなのに。

 他の修行僧と同じことをしているのに、心を疎かにしていると非難され、保護者には将来を危惧される。姉さんは状況を理解しておらず、釈迦堂さんは弱者の論と取り合わない中、頭が痛くなるような説法がおれに毎日のように降り注いだ。

 

 

 

 風間ファミリーと知り合ったのは、そんな折であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、今週号のいちご1000%、西田と真田がエッチしちまったよ!」

「これ絶対西田ルートだよね! どうせ最終的に勝つのは東堂だと思ってたけど、面白くなってきたよ」

 

 金曜日、鍛錬をサボってアジトに行くと、ガクトとモロがジャソプをかじりつくように読みながら興奮気味に語っていた。

 どうやら毎週パンチラを楽しみに読んでいたラブコメが佳境に突入したらしい。隅っこでは京が楚々と小説を読み耽っており、大和はソファに座って携帯をいじっていた。

 姉さんとワン子はまだ稽古の最中、キャップはバイトで遅れている。おれは大和の隣に座ると、ふと変なことを口走った。

 

「そういや何でおれ、風間ファミリーに入ったんだっけ?」

「来て早々にボケ老人みたいなこと言い出したぞ」

「この歳でボケてたらシャレにならないよ?」

 

 おれのつぶやきを耳聡く聞き取ったガクトがツッコミ、モロが呆れた様子で追随した。おれは頬を掻き、気恥ずかしくなって言った。

 

「いやさ、そのころのおれってバカみたいに鍛錬漬けの毎日だったから、川神院以外の記憶がうろ覚えなんだよね。京が入ってからは適度に気を抜いてたから、だいたい覚えてるけど」

「そういや学校ではずっと寝てたんだっけ……」

「懐かしいね。私と同じぼっち仲間だった」

 

 モロが目を細め、京がとても嬉しそうに語った。たしかにおれと姉さんは学校では孤立気味だった。

 おれの質問に、大和たちは遠くを見つめて過去に立ち返る老人のような顔をした。

 

「たしか、上級生と喧嘩中に俺が同級生の千に用心棒を頼んだら、『人の舎弟をこき使おうとはいい度胸じゃないか』ってモモ先輩が襲来してきたんだ」

「あったなぁ。そんで事情を話したらモモ先輩が上級生ボコボコにして、凹された上級生が千に助け求めたら、『こういう輩は、人をいじめたことを将来若気の至りだったと悪びれもなく語って、むしろ楽しい思い出だと主張するような人種だ。人に助けを求めるのは自分が悪いと思ってない証拠。姉さん、もっと痛くしてやって』って煽りやがったんだよなぁ」

「そんで居心地がいいからってモモ先輩が居着いて、モモ先輩に引きずられて千も来ちゃったんだよ」

 

 大和とガクトが怯えた様子で語り、モロはやはりどこか呆れながら言う。そんな感じだったっけ。

 まあ、風間ファミリーが川神院に呼びに来るたびに、ジジイに稽古を抜けてもいいから遊んで来いと放り出されていた記憶はあるのだが。

 話を聞いた京はすこぶる上機嫌に言った。

 

「千はいいこと言うね。人をいじめたのを『俺様も若かったからなあ』なんて言う人は痛い目みないとダメだよ」

「俺様、これ一生言われ続けるんだろうなぁ……」

 

 根に持つタイプのジメジメ系エロ電波ヒロインの京は、数年経つ今でもガクトにチクチク仕返しをしていた。

 ガクトは涙目になったが、まあ自業自得の面もあるので庇えない。

 

「そういえば京って、風間ファミリーに入ったころから千と仲良かったよね」

 

 過去を振り返ると、付随する記憶も思い出すのか、モロが笑って言うと、京にとっては愉快な思い出なのか微笑んで返した。

 

「うん。実は千とは席が隣で、ぼっち同士でよく話してた」

「え? 全然覚えてないんだけど」

「そうだろうね。だって私が、寝てる千に一方的に話しかけてただけだし」

「ええ……(困惑)」

「高度なお人形遊びだな……」

「さすがの俺様もそれは引くわ」

 

 いま明かされる衝撃の真実に男全員がドン引きした。が、京は悪びれるでもなく平然と続けた。

 

「でも話しかけると、千も寝ぼけながら返事してくれたよ? 本の話すると、ちゃんと中身について答えてくれたし、いじめられてぼっちだった私は、それで孤独を癒していたのです」

「まさか小学校でのおれって無意識に会話してたのか……?」

「意識なくてあんな発言する小学生とか怖すぎるよ!」

「なあ、俺様が謝るからこの話は止めにしようぜ。な?」

 

 段々と居た堪れない空気になってきたため、仕切りなおすことにした。ちょっとシーンと静寂が包んでから、ガクトが切り出した。

 

「しかし、今の聞いたら京が大和を好きになったのが不思議だよな。普通、千の方を好きになりそうじゃね、その感じだと」

「これは何度も言ってるけど……私に手を差し伸べてくれたのが大和だから男として好きになったわけで、千に救われてたのも事実だけど、そこはloveとlikeの差があるわけで。

 だから『お友達で』とか『京には千の方が釣り合うと思う』なんてやんわりとお断りされても意志が揺らいだりしないわけですよ」

「大和、お前、おれをだしに使ってたのかよ」

「いや、その……」

 

 おれが大和を横目で見ると、大和は顔を背けた。正直なところ、おれは京に何の不満があるのか分からないが、他人の恋愛に口出ししたくないので黙っていた。

 けど、おれを巻き込まれると黙ってもいられなくなる。いい機会だからひとこと言ってやろうと思ったが、先んじて京が言った。

 

「まあ、色々あったけど、私は風間ファミリーのみんなが大好きだから。大和だけじゃなくて、千もガクトもモロも、ここにいないモモ先輩、ワン子、キャップも、私にとって特別な仲間。

ずっと一緒にいられたらいいって、心から思ってる」

 

現在の京は隣県に引っ越しており、毎週末に、バイトをして得た金で川神市に滞在してまで風間ファミリーとの時間を作ろうとしている。

離れ離れになっても仲間という意識は全員にあったが、そこまではっきり口に出されると、面映ゆいものがあり、口を閉ざしてしまったが、やはりガクトが真っ先に口を開き、ポージングをとった。

 

「俺様も特別な仲間だと思ってるぜ。ところで京、特別なナイスガイである俺様なんて恋人にどうだ?」

「ガクトは椎名菌が感染したら危ないから、もっとお似合いの人を探せばいいと思う」

「本当にこれ一生言われ続けるんだろうなぁ……」

 

 いやらしい笑みを浮かべながら自虐する京に、ガクトは涙を流しながら悔やんだ。

 一方、おれは京が恋人なら、色んなプレイをしてもらえただろうに、と心の中で悔やんだ。

 

 

 


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