ISカグラ‐雷光の担い手‐   作:灰音穂乃香

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第十三話 『闇と光』

暗い。どこまでも続く深い闇に彼女はラウラ・ボーディウィッヒはいた。

彼女にとってその人物―織斑千冬は闇の中にあった自分にとって光のような存在であった。

初めて出会ったときにその強さに恐怖と感動と歓喜に心が震えた。

胸が熱くなり千冬のように強くありたいと願った。

空っぽだったラウラにとって絶対にして完璧の存在。

故にこそ彼女には千冬に汚点を残させた織斑一夏と影宮朔乃を許せない。

(排除する。どんな手段を用いたとしても………)

暗い闘志に火を放ちラウラは静かにまぶたを閉じる。

闇へと潜り込むようにラウラは夢のない眠りへと落ちていった。

 

 

「そ、それは本当ですの!!」

 

「う、嘘じゃないでしょうね」

 

教室へ向かう朔乃は同室の一夏と共に廊下でそんな会話を耳にする。

 

『ああ…成る程でござる…』

 

月末に行われる学年別トーナメント。

 

それに優勝すれば一夏と交際できるという噂が流れているのだ。

情報源は原作と本音からである。

「なんだ?」

 

そんな噂を知らぬ存ぜぬな一夏は目を瞬かせる。

この場で一夏に噂の事を教えたらどんな態度を取るだろうっと朔乃は考えるがあえてそれをしないで首を傾げて「何でござろう?」っと答える。

理由は単純、面白そうだからだ。

 

『って…最近、楯無殿に毒されてきてるでござるなー』

 

更識家の用事で時折楯無に呼び出されることもあり、楯無の性格が朔乃の性格を浸食しているような気がするのだ。

 

そんなことを考えながら教室に入ると鈴が声高らかに言葉を繋いだ。

 

「本当なんだってば!この噂、学園中で持ちきりなのよ?月末の学年別トーナメントで優勝したら織斑君と交際でき―」

 

「俺がどうしたって?」

 

「「「きゃあああっ!」」」

 

鈴のセリフの自分の名前が出てきたことに一夏が女子の会話へと入り込む。

それと同時に返ってきたのは取り乱した悲鳴であった。

 

 

「おいおい、どうしたんだよ?悲鳴なんかあげて??…でっ何の話をしてたんだ?俺の名前が出ていたような気がするが?」

 

「うん?そうだっけ?」

 

「さ、さぁどうだったかしら?」

 

あたふたとしながら話を逸らそうとするセシリアと鈴。

そこにちょうど良いタイミングで予鈴が響く。

 

「じゃ、じゃああたし自分のクラスに戻るから!」

 

「そ、そうですわね!わたくしも自分の席につきませんと」

 

どこかよそよそしい様子で二人はその場を離れていく。

その流れに乗るように何人か集まっていた他の女子達も自分のクラスや席へと戻っていく。

 

「…なんなんだ?」

 

「とりあえず、席に着いた方が良いでござるよ」

 

首を傾げる一夏に朔乃は忙々と自分の席へと向かった。

 

 

 

その日の放課後―朔乃は一夏と共に第三アリーナへと向かっていた。

学年別トーナメントに向けて機体の調整などを行うためである。

 

「確か今日は使用する人数が少ないはずでござるから模擬戦も可能で…ぬっ?」

 

そこまで話したところで朔乃はアリーナ付近が慌ただしい事に気づく。

先ほどから廊下を走ってアリーナへと向かう生徒も多い。

その中で見知った人物を見つける。

 

「箒!アリア!シャル!!」

 

一夏も三人の姿を見つけたらしく声をかける。

 

「一夏!朔乃!」

 

三人の中の一人。

箒がこちらに気づき足を止める。

他の二人も同じように足を止めているがいつでも走り出せる体制を取っている。

 

「何があった?」

 

「鈴とセシリアがあの転校生と模擬戦をやっているらしい」

 

転校生―とは恐らくラウラの事だろうと朔乃は思い至る。

 

「急ぐでござる!何か嫌な予感がするでござるよ!!」

 

朔乃がそう叫ぶと同時に人ごみを掻き分けて走り出す。

それと同時に何かの爆発するような大きな音が響いた。

 

「ちっ!」

 

制服姿のまま黒鉄を展開した朔乃がアリーナへと到着した時にはワイヤーブレードで二人の体を拘束し、一方的な暴力を行っている最中であった。

 

既に鈴とセシリアのシールドエネルギーはデッドゾーンに突入しようとしていた。

 

「うおぉぉぉっ!」

 

それでも未だ攻撃を続けるラウラに朔乃は纏雷を作動させてラウラに肉薄する。

 

「早い…だが…動きが直線的すぎる」

 

「ぐっ!」

 

ラウラへと攻撃を仕掛けようとした朔乃だがその動作の最中に動きが止められ、朔乃が纏っていた纏雷も消失する。

シュバルツェア・レーゲンのPICだ。

辛うじて目を動かしてシャルルと一夏が鈴達をアリーナの端まで連れて行き介抱をしているのが見えた。

 

「ふん、雑兵を助けたか…。

だが…やはり敵では無いな。この私とシュバルツェア・レーゲンの前では貴様も有象無象の一つでしかない。消えろ!」

 

肩に装着された大型のレールガンが動き朔乃へと狙いをつける。

 

「させると思った!?」

 

だがそれよりも早く赤い閃光がシュバルツェア・レーゲンを呑み込む。

アリアの機体ラファール・カドラが放った緋弾だ。

 

「ぐっああああああ!!」

 

苦悶の声を上げながらラウラはPICを解除し瞬時加速で射線から退避する。

 

「貴様ら…よくも!!」

 

憎々しげにラウラが朔乃を睨みつけ、腕にプラズマブレードを出力させる。

アリアの緋弾でシュバルツェア・レーゲンのシールドエネルギーは八割以上削れていたがその目にはまだ戦意が残っていた。

 

「その位にしておけボーディウィッヒ…」

 

だが、その場に乱入してきた第三者によりラウラは腕に出力したプラズマを消す。

即ち―織斑千冬の乱入によって。

 

「模擬戦をやるのは構わん―が、相手にデッドゾーンを超えてダメージを与えるのは些かやりすぎだ。

かの戦いの決着は学年別トーナメントでつけてもらおうか」

 

千冬の言葉に朔乃、ラウラ、一夏、シャルロット、箒が頷く。

 

「では、学年別トーナメントまで死闘の一切を禁止する。以上!」

 

千冬が強く手を叩き、アリーナ内の全ての生徒に向けてそう叫んだ。

 

幸いと言うべきか鈴とセシリアが負った怪我は打撲で済んだとのことでシャルロットはほっと胸を撫で下ろす。

もちろん、二人の事も心配ではあるがシャルロットにはもう一人心配すべき人物がいた。

その人物とは言うまでもなくラウラである。

妾の子と言うことで虐げられてきた彼女は何となくだがラウラの黒い感情のようなものが一瞬だが垣間見たような気がしたのだ。

別に自分がニュータイプだとかそういうものではないのだがラウラの事を放っておけないのだ。

だからこそ、学年別トーナメントがタッグ戦になった事は彼女にとって僥倖と言えた―。

 

 




ある者は師の汚名を晴らす為に、ある者は自分と似た者を暗い闇から救うために…学年別トーナメントへと挑む!


前回から1日間が空いての投稿となります。
ヤバいくらいに神が降りてきてます。
灰音穂乃香です。
次の話も早くupできるように頑張りますー。
それにしてもシャルロットが良い子すぎてかわいいよシャルロット
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