ISカグラ‐雷光の担い手‐   作:灰音穂乃香

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第二十三話 『キャノンボール・ファスト』

盛大な歓声がピットの中にまで聞こえる。

キャノンボール・ファスト当日、今は二年生のレースが行われている。どうやら抜きつ抜かれつのデッドヒートのようで、最後まで勝者がわからない大混戦のようだ。

 

「いよいよね…私も腕が鳴るわ」

 

っとピットで呟いたのはアリアだ。

彼女はすでに『ラファール・カトラ』と『アラストール』展関している。

 

 

ガトリングシールドや実刀、レールガンは取り払われており、高機動スラスターだけとなったこれにトランザムを用いてスピードを上げるつもりらしい。

 

ビットには昨乃とアリア以外にも参加者である一夏、箒、セシリア、鈴、ラウラ、シャルが控えている。

 

(皆、やる気滴々でござるなぁ…。

だが、拙者も負けぬでござるよ!)

 

っと意気込む昨乃。

 

「みなさーん、準備はいいですかー? スタートポイントまで移動しますよー」

 

それと同時に山田先生の若干のんびりとした声が響く。

 

昨乃ちは各々うなずくと、マーカー誘導に従ってスタート位置へと移動を開始する。

 

「それではみなさん、一年生の専用機持ち組のレースを開催します!』

アナウンスが響き一夏たちは各自位置に着いた状態で、スラスターを点火した。

超満員の観客が見守る中、シグナルランプが点灯。

 

カウントダウンタイマーがゼロになると同時に発進する一夏達を見送りながら順位を見る。

 

(まずはセシリア殿が飛び出したでござるか…いや…)

あっという間に第一コーナーを過ぎ、セシリアを先頭にして列ができる。

だが次の瞬間には列の後ろの方を走るアリアが急加速、一気に他を追い抜く。

 

『さて、拙者も行くでござるよ!』

 

心の中で叫ぶと同時に昨乃も遅れて発進すると一夏達を一気に抜き去る。

 

『このまま、ぶっちぎるか…後半に備えて纏雷を制限するか…どうすべきでござろうか…』

 

 

トップを独走しながらそんなことを考える昨乃。

 

『警告!ラファール・カトラが武装を展開!!』

 

「つっ…!!」

 

システムボイスと共に回避行動を取る。

 

直後に赤い光を帯びた銃弾が今し方、昨乃がいた場所を走り抜ける。

 

トランザムによって威力を強化された銃弾である。

いくら纏雷で防御力が強化されているとはいえ当たれば一溜まりもない。

 

 

スピードを上げてラファール・カトラを引き離そうとした瞬間。

 

「「つっ!」」

 

二人が何かを感じて急減速する。

 

直後に、二人がいた場所を光が貫く。

 

高出力BTライフルだ。

昨乃とアリアがレーザーの来た方向に視線を向けるとダークブラックにカラーリングされたブルーティアーズの姿があった。

背中には左右六つずつ、合計12個のビットが搭載されている。

 

『ちっ…やはり外したですか…』

 

オープンチャンネルで舌打ちと共に少女の声が聞こえる。

その独特のしゃべり方に昨乃の主は以前、道元と共にいた少女‐椿のものであることを思い出す。

 

『奪取したサイレント・ゼフィルスを元に製造されたBT兵器搭載IS三号機・ルシファーの運用試験に手伝ってもらうですよ!』

 

そう叫びながら椿がビット兵器を解放してビームを放つ。

 

それを昨乃とアリアは難なく避ける。

 

『ふっ…甘いです』

 

完全に避けたと思った瞬間にビームが軌道を変えて再び昨乃とアリアへと襲い来る。

 

「っと!」

 

「危な!」

 

だが、纏雷とトランザムを展開させた二人にはやはり当たらない。

 

『やりますね…ではこれならばどうですか!』

 

その叫びと共に椿は背中のビットを解放し、それぞれのビットからビームを放つ。

「つっ!!」

 

「くっ!」

 

ビットから放たれた12の光線はそれぞれが生き物であるように別々の軌道を描きながら昨乃達を襲う。

 

「きゃあ!」

「アリア殿!」

 

昨乃は忍時代から磨いてきた直感で何とか避けることが出来たがアリアはそうはいかずに何発か被弾する。

 

『あはっ!被弾しましたね!!ならそのまま死んでください!!!!』

 

椿が嘲笑を含んだ笑みを浮かべると同時に昨乃はアリアが脂汗を浮かべていることに気づく。

 

『秘伝忍法…毒牙絶障。

自分の攻撃を喰らった相手に激痛を与え続ける技です』

 

笑みを浮かべながら自分の技の解説をする椿。

そんな椿の言葉に昨乃の背中を冷たい汗が伝う。

 

「一応、言っておきますが他に応援を頼もうとしても無駄ですよ。

マドカさんに足止めをお願いしてありますからね!!」

 

叫びながら椿はライフルとビットからビームを放つ。

 

「くっ!!!」

 

アリアと自分を護るように電磁フィールドを張り防御するがビットから続けざまに放たれるビームに攻撃を行う暇すらない。

 

部分的にではなく、全体的に電磁フィールドを張りつつ動く敵に攻撃を当てることは黒鉄の演算能力をフルに使用しても難しいのだ。

 

だが、それは昨乃、独りで椿と相対する場合のみだ。

 

『アリア殿…大丈夫でござるか?』

 

プライベートチャンネルを使って後ろにいるアリアに呼びかける。

 

『身体中が恐ろしく痛いけど何とか大丈夫よ…。

それで…あれをぶっ倒す方法は思いついたの?』

 

『一応は、但し…アリア殿の協力が必須でござるが…』

 

『良いわよ…協力してあげるわ…それで…あんたのプランってのは?』

 

苦痛に顔を歪めながらも問うてくるアリアに頼もしさを感じながら昨乃はその計画を説明し始めた。

 

 

『ああ…弱い人間をいたぶる優越感…たまらないです!!』

 

自分が圧倒的優位に立っている状況に椿は身を悶える。

 

先ほどから昨乃達は防戦一方。

その原因はビットの全方位攻撃を警戒して展開した電磁フィールドにあると椿は考える。

電磁フィールドに演算能力を裂いているせいで武装を展開できないのだと。

 

『ですが…何時までも展開していられると思わないことです!』

 

電磁フィールドを展開しているのはISであるがそれに使用される電力は昨乃の纏雷だ。

 

『ならば相手の体力が無くなった時点で私の勝ちは決まるです!』

 

そう考えていると何かが数発程ルシファーの装甲を叩く。

 

『損傷は軽微、サブマシンガンによる銃撃です』

 

ハイパーセンサーがそう告げると同時に椿は昨乃がサブマシンガンを展開しているのを気づく。

 

「どうやらその程度の武装は展開できるようですね。

ですがそんな豆鉄砲を何度も喰らいませんよ!」

 

等と叫びながら回避行動を取る。

 

だが、椿が回避行動を取り始めた次の瞬間。

 

『危険!高エネルギー弾接近!』

 

「なっ!きゃあああああああぁぁぁぁ!」

 

ハイパーセンサーが告げたその報告に目を見開く椿。

 

次の瞬間に十数発の小型のプラズマ弾がルシファーに直撃。

 

地面へと落ちていくところをサイレント・ゼフィルスが回収していく。

 

 

コアにアクセスしISの限界以上の出力を出すラファール・カトラのワンオフ・アビリティ『トランザム』。

 

それを利用し、ラファール・カトラと黒鉄のコアを共鳴させる事で一時的に処理能力を上げたのだ。

 

「ぶっつけ本番だけど…なんとかなるもんね…」

 

息をあげながらしてやったりといった表情を浮かべたアリアは糸が切れたように意識を失い落ちていく。

 

「おっと…」

 

そんなアリアを受け止める昨乃であった…。

 

 

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