ISカグラ‐雷光の担い手‐   作:灰音穂乃香

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第二十四話 『忍術修行』

「昨乃!お願いっ!」

 

キャノンボール・ファストからひと月が経過しようとしたある夜。

夕食後のランニングで外周を走ってから部屋へと戻ってきた昨乃に簪が手を合わせる。

今月に行われる専用機持ちのタッグトーナメント。

それに出場するために現在簪が専用機を作っている途中らしい。

 

その機体の武装である八連ミサイルポッドのマルチロックオンシステムの作製がうまくいかず昨乃の知恵を借りたいとの事だった。

 

「っと言っても拙者にアドバイス出来るようなことは…」

 

無いと言いかけて昨乃は黒鉄の誘導式のプラズマ弾を思い出す。

 

「…っといってもプラズマ弾の制御は拙者がマニュアルで制御しているのでござるよ」

昨乃の言葉の通り黒鉄の役割はあくまでも補助でありプラズマ弾の制御は昨乃がマニュアルで行っているのだ。

 

「それは昨乃が前世で忍者だったからできたの?」

 

驚愕に目を見開いて問う簪に頷く昨乃。

 

「っと言うわけでは無いでござるが…」

 

簪も更識の家でそれなりの修行はこなしている…そり故に出来ないわけでは無いのである。

しかし、自分の忍術を他の人に教える事に些か抵抗感を感じるのである。

 

「あらぁ…昨乃の強さの秘密。

私も気にになるわぁ」

 

っと言ったのは部屋のドアを開けて室内を覗いている楯無しだ。

「楯無殿!いつの間に!」

 

「部屋の前を歩いていたら大変興味深い話が聞こえたからねー」

驚く昨乃にそう答える楯無。

口調こそ軽いものであるが先日スコールと遅れを取ったことが彼女にとっても何か考えさせられるものがあったらしくその目は真剣そのものだ。

 

「………」

 

片や簪も昨乃を無言で見つめている。

 

「はぁ…」

 

そんな二人ににため息を漏らす昨乃。

 

幼い頃から二人と一緒にいた昨乃は二人がこういう状態で主張を曲げないことを知っているからだ。

 

こうして、昨乃による忍術修行が始まったのである。

 

 

「忍法は気功と同じように体内の気を練る事から始まるのでござる」

 

翌日の放課後、昨乃は道場で楯無と簪を前に講義を行っていた。

現在、昨乃の手には差し棒が握られており電子モニターに映されたイラストを指している。

イラストは簡易的な人型が描かれており、人型の胸の部分には気という文字が描かれている。

 

休み時間を利用して昨乃が制作した教材だ。

 

「まー、二人は既に更識家で気功もやっておったでござるからここは割愛するでござる」

 

そう言うと昨乃はモニターを切り替える。

今度、表示されたのは円に内気功、外気功と書かれたものだ。

「気功における内気功は気の質をコントロールすること内気功と、身体に必要な気を外から取り入れ、不必要な気を体外に排出する外気功が存在するでござる。

それを更に強化したのが忍法の大元となったものでござる。

説明すると難しいでござるから一度実践してみるでござる」

 

そう言うと昨乃は黒鉄の右腕部と小太刀を展開する。

それと同時に小太刀を思い切り左手首に向けて振り下ろす。

 

「ひっ…」

「なっ!」

 

いきなりの昨乃の行動に悲鳴を上げて目を瞑る簪と驚いた声を上げる楯無。

 

「嘘…」

 

呆然として声を漏らす楯無に目を開く簪…。

 

「え…」

 

彼女もまた、姉と同じように驚いたような声を漏らす。

 

何故ならば切り落とされるかと思われた昨乃の左手が小太刀の刀身を受け止めていたからだ。

筋肉の動きを見ても昨乃が刀身に力を入れているのがわかる。

 

「これが内気功、体内の気を操って強度などを上げるでござるよー。

 

次に外気功でござるがこれは二人ともしょっちゅう見てるでござろう?」

 

「?」

 

「なる程…黒鉄の展開装甲ね」

 

昨乃の質問に首を捻る簪に対して答えたのは楯無だ。

 

「さようでござる気功を外部に放出し自然界の気を借りて己の気と混ぜ合わせたものが秘伝忍法でござる。

 

っと…ここまでで質問は…」

 

無いでござるか?と尋ねると二人は頷く。

 

「では…先ほどの説明を踏まえて二人には先ず内気功の練習をしていこうと思うでござる」

昨乃が今回、簪と楯無に教えるのは、簪が打鉄ニ式の八連ミサイルのマニュアル制御を行うため、楯無が戦闘力を上げるための内気功である。

 

昨乃が二人に内気功を習得させるために選んだ修行方法が水面式と呼ばれコップに注がれた水を触れずに揺らすというものであった…。

水は気を通しやすいとされ、体内で練った気を掌に集めるというものである。

 

 

そして、現在…開始から三時間が経過しようとしたところで楯無のコップの方に変化が現れる。

 

 

楯無のコップの水が小さな波紋を作り始めたからである。

 

「おー、流石は楯無殿凄いでござるなー」

 

「ふっふっふー」

 

胸を張る楯無に落ち込む簪。

 

「大丈夫でござる、簪殿。

タッグマッチまでの日はまだまだあるでござるからー」

 

そんな簪を励ます昨乃であった。

 

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