昨乃がゴーレムⅡを倒し、楯無達のところへと向かっていたころ。
楯無とアリアは強敵と相対していた。
「はあぁぁぁ!」
特殊ナノマシンによって超高周波振動の水を螺旋状に纏ったランス<蒼流旋>による一点突破の突撃、深紅の体に突き出した。
しかし、その体に届くよりも速く、巨大な左脆がランスを手で掴んで止める。
「温い…温すぎるわ!」
深紅の機体―即ち炎帝のパイロットである道元が叫ぶ。
現在、アリアと楯無はゴーレムⅡに来ていた道元との戦闘を繰り広げていた。
「アリアちゃん、トランザムで加速して私を押して!」
「わ、わかりました!」
水の槍は回転力を増し、甲高い音を立てて炎帝の左腕を削っていく。
「くっー なんて硬い装甲を使ってるの!?」
「楯無さん! いきますー」
「ええー」
アリアの『ラファール・カトラ』による強力な推進力を受けて、楯無と『炎帝』はアリーナ・ゲートへと突っ込んでいく。
「― 」
ぐんぐんと加速していく三機のIS。
楯無の『ミステリアス・レイディ』とアリアの『ラファール・カトラ』がアリーナのシールド接近警告を。発するが、二人はその表示を無視した。
「くらいなさい!」
楯無はきらに強くランスを握りしめると同時に、<蒼流旋>に装怖されたもう一つの武装、四門ガトリングガンを発射する。
「ふむ…雑兵かと思ったがなかなかにやりおるわ」
道元はそう言いながら受けとめたランスとごと楯無とアリアを吹き飛ばす。
「くうっ!」
「きゃあああ!」
投げ飛ばされた二人にに向けと道元は火炎を放つ。
「くっ!」
水を操り、火炎を防御する楯無。
「アリアちゃん、少しの間で良いから時間を稼いで!」
「了解です!」
アリアがトランザムを発動させた状態で道元を引きつける。
「ふふん。
まだまだ、おねーさんの奥の手はこれからよ」
言いながらそれまで両手で支えていたランスを左手一本に任せて、楯無は真上に向かって右手を突き出す。
「『ミステリアス・レイディ』の最大火力、受けてみなさい !」
楯無の掌の上で水が集まづていく。
『ミステリアス・レイディ』の全身から水を集め、徐々に槍の形を作る。
通常時は防御のために装甲表面を覆っているアクア・ナノマシンを一点に集中、攻性形成することで強力な攻撃力とする一撃必殺のの大抜。
その名も-<ミストルテインの槍>。
それを形成するのアクア・ナノマシンが超振助破砕を行う破壊兵器の塊であり、表面装甲がどんなものであれ、紙くずのように突き破ることができる。
さらに、アクアナノマシンは楯無の合図でエネルギーを転換、大爆発を引き起こすことが出来るというものだ。
最大で小型燃料気化爆弾四発分にも相当するいうものである。
今回の場合はアリアを巻き込む可能性があるためと相手が人という事もあり威力は落としてある。
それでもプラスチック火薬で百キロ分の破壊力は十分にある為に残りのアクアナノマシンを部屋と自分、アリアの防御に使用する。
「アリアちゃん!」
楯無の声と共にアリアが大きく飛ぶ。
それと同時に楯無が‐<ミストルティンの槍>を投擲、凄まじい爆風がアリーナ内に吹き荒れる。
「やった!!」
「いいえ!まだよ!!」
もうもうと立ち込める爆煙の中で炎帝の影は未だに健在であった。
「そんな…無傷ですって!」
驚愕に声を上げる楯無。
爆風が晴れた時に、現れた炎帝は無傷だったからだ。
「振動破壊兵器とナノマシンのエネルギー転換による爆弾か…近距離で使われるか、ナノマシンを全てを爆弾に使われればこの炎帝も無傷では済まなかった」
そう述べる道元が構える右腕には篭手のようなものが装着されており、掌の部分には深紅の結晶のようなものがつけられておりそこからシールドが出力されている。
「まさかそんなシールドで<ミストルテインの槍>を…」
「シールド?何を馬鹿な事を…」
唖然となる楯無に道元は嘲笑を浮かべる。
「これは輻射波動…貴様の<ミストルテインの槍>と同じく振動破壊兵器さ…」
言いながら道元は輻射波動が内蔵された右腕を楯無達に向ける…。
直後に凄まじい熱力を伴って熱線が放たれた―。
「楯無殿!アリア殿!無事でござるか!?」
「お姉ちゃん!!神崎さん!!」
「来たか…今し方片付けたところだ…」
昨乃と簪がアリーナに着くと炎帝を装着した道元が倒れた楯無とアリアを足蹴り飛ばしたところであった。
二人のISの耐久度は既にデッドゾーンに達している。
「道元ー!!!!!!!!」
それを見た昨乃は道元に突っ込む。
「全く、学習せんやつだ」
そう言うと道元は右腕の輻射波動を発動させて昨乃の小太刀を受ける。
「つぐ…!」
瞬時に溶解し始めた小太刀から手を放ち、昨乃はサブマシンガンを構えて引き金を引く。
纏雷による強化を受けた弾丸は光の帯を引きながら炎帝に向かうが期待に届くより先にシールド状に出力された輻射波動で防がれる。
『せめて攻撃できる隙があれば…』
炎帝が反撃とばかりに打ち出した熱線を避けつつ昨乃は焦り始めた―。
「お姉ちゃん!」
昨乃と道元が戦闘を繰り広げている頃、簪は楯無の下へ駆け寄っていた。
アリアと共に意識はあるようだが早く処置をしなければならないような重傷だ。
「簪…ちゃん…」
簪が応急処置を行おうとした時、楯無が力無く口を開く。
「お姉ちゃん!しゃべら…」
「簪ちゃん」
心配した簪の言葉を遮り楯無は稟とした口調で言う。
「簪ちゃん、昨乃を援護してあげて…お願い…」
そう言うと意識を失う楯無。
楯無の言葉に昨乃を見ると苦戦を強いられている。
今、簪がやらなければ昨乃まで危険にさらしてしまう。
『ミサイルのマルチロックオンをシステムで操作する』
それはシステムの作成が手詰まりとなった時に何度か試したが上手くいかなかった。
だからこそ簪は昨乃から忍術の手解きを受けようとしたのだ。
だが、結局それも上手くいかなかった。
『でも…やらなきゃいけない!!!』
簪は目を閉じて、意識を集中する。
そして瞳を見開くと同時に、両手と装甲が光の粒子になって消えた。
解放された十本の指。
それを、確かめるよと開閉する。
「いける。
『打鉄弐式』、マニュアル誘導システムを 起動。
四十八個の並列多重で…………」
意識が研ぎ澄まされ、まるで自分の周囲だけ時間が停止したような錯覚に陥る。
簪の指先には、空中投影キーボード……それも、フルカスタムしたものが上下で枚ある。
二本、指五本につき四枚の球状キーボードを、合計八枚呼び出して一斉に入力をはじめる。
「大気の状態……各弾頭の機動性、タイムラグ……爆発における相互干渉、発揮できる攻撃力……」
簪の目の前には数十枚のウインドウが開いている。
「すぅぅ……、はぁぁ……」
息を吸い込み、はき出す。
クリアーになった意識で、簪は極限まで集中力を高め、そして―
「この『山嵐』から、逃れられる……?」
肩部ウイング・スラスクー、そこに取り付けられた六枚の板がスライドして開く。
その中から、ちょうど粒子組成が終わった八運装ミサイルが六ヶ所・計四十八発、一斉に顔を出したのだった。
「力を貸して、『打鉄弐式』!」
簪が叫ぶと同時に昨乃はその場から離れる。
直後にすさまじい音を立てて、ミサイルが一斉に発射される。
「ダイレクト・リンク、確立…!
マニュアル・ロック、開始……!」
炎帝へ向けて、ミサイルが一斉に嬰いかかった。
それも直線的な動きではなく、複雑な三次元躍動をしながら急逮横近しいく。
「くっ!」
道元はシールドユニットを展開、同時に右腕の輻射波動から熱線を放ちミサイルを撃墜しようとする。
しかし、完全マニュアル制御されたミサイルは、炎帝の動きに合わせて回避や加速、方向転換を行い、的碓にシールドユニットの中枢部分を吹き飛ばした。
防御を失い、スラスター制御に友る後退回避をはじめる道元だったがそれを逃がすまいと第二射のミサイル群がまるでコヨーテのように襲いかかる。
脚が、腕が、肩が、腰が、頭が、腹が、ミサイルによる爆発に飲み込まれる。
「ぐがぁぁぁぁ!!」
「はあぁぁぁ!」
苦痛に声を上げる道元に昨乃は最接近、止めの斬撃を放とうとする。
「くっ!」
「つっ!」
だが、それよりも早く道元が閃光弾を放ちその場から離脱した。
『しかし……』
離脱した道元を目で追いながら、昨乃は先ほど簪から感じられた気を思い出す。
恐らく、極限状態に陥ったからこそ発揮されたものだと思うがそれでも簪は忍術を使っていたのだと考える。
『出来るこことならば簪殿や楯無殿を悪忍達との戦いに巻き込みたくなかったでござるが…』
既にそんな事を言っている状態で無いことは確かだ。
だが、出来る事なら悪忍との因縁は自分の力で断ち切りたいと思うところもあったー。
約、1ヶ月振りの更新&五連投となりました。
次は八巻のお話を書かしてもらう予定です