「私とした事が油断したわ…」
「確かに楯無殿にては珍しいでごさるな…」
IS学園特別医療室、そこで昨乃は入院生活が長引いている楯無の世話を焼いていた。
先月の事である、学園のメインコンピューターが何者かにハッキングを受け、全システムがダウン。
そこに、米軍の部隊がISを伴って強襲。
楯無は生身の部隊を、昨乃はIS部隊を迎撃。
その最中、楯無は敵の銃弾を受けたのだ。
弾丸は楯無の腹部を貫通したのである。
「少し、考え事をしていたかというのもあったけど…」
「考え事というとハッキングを行った犯人の事でござるな?」
昨乃の言葉に楯無は頷く。
未だにハッキングを行った犯人は捕まってはいない。
それどころかハッキングを行った人物の特定すら出来ていないのだ。
だが、昨乃はその犯人について何となくではあるが予想がついていた。
学園のシステムにハッキングできるような人物は限られているからだ。
『…恐らく束音殿でござろうが…一体何の目的で…』
考えるがその目的が全く読めないのである。
「こんなんじゃ全然駄目ねー。
お姉さん、最近は全然良いところがないじゃない」
昨乃が思考を巡らせていると憂いを帯びた表情を浮かべてそんな事を言う。
「ぬ?何故でござるか?」
「だってさぁ…。
最近、全然活躍してないじゃん」
「そんな事はないでござる」
弱音を吐く楯無に、はっきりと答える昨乃。
「楯無殿が必死に努力しているなは拙者も良く知ってるでござるよ」
「努力したとしても結果が出なければ…」
「悖らず、恥じず、憾まずでござる楯無殿」
「?」
昨乃の言葉に頭に疑問符を浮かべる楯無。
「道理に背かず、努力を怠らず、過ぎた事を悩まず。
そうすれば必ず結果は出るでござるよ」
「本当に昨乃は可愛いわね…」
そんな事を言いながら楯無は昨乃の頭を撫でる。
「そこは優しいとかではないのでござるか!?」
そんな楯無に昨乃は病室でありにも関わらず大声を上げたのであった。
「楯無さんと一緒にいるのが一番楽しいかな」
「「「「「なっ…!?」」」」」
「ぬ?」
「?」
翌日、簪と共に楯無の見舞いに来た昨乃であるが病室の前で聞き覚えのある声がしたために立ち止まる。
一夏、箒、鈴、セシリア、シャル、ラウルの声である。
「あんた達来てるなら入りなさいよ。
今、修羅場ってて面白いところだから」
どうしたものかと考えていた昨乃と簪に病室の戸を開けてアリアが手招きする。
招かれるままに病室へと入る昨乃と簪はアリアから事の顛末を聞いたのである。
曰わく、箒達と共に楯無の見舞いに来た一夏が、楯無に誰かと付き合っているのかを問わたのが事の発端だ。
その問いに一夏は誰とも付き合っていないと答えた為、楯無が誰といると楽しいかを聞き、一夏の出した答えが先ほど昨乃達が病室の前で聞いたセリフである。
『思えば、アリア殿も丸くなったでござるな…』
以前は恋愛話となると顔を真っ赤にしていた彼女であるが、一週間前に…ラファール・カトラの補修と新型バックパックの稼働実験から戻ってからは免疫がついてきたのか、そういった話題にも積極的に参加するようになってきたのである。
そして昨乃と簪に全く気づいてない様子で一夏と女子達の修羅場は続いていた。
「なんでよっ!?」
先ず、半泣きで睨んだのは鈴だ。
「だってなあ、まあ、楯無さんってスタイルいいし」
「うっ!」と、鈴。
「高飛車じゃないし」
「ううっ!」と、セシリア。
「ぐいぐい引っ張ってくれるし」
「うううっ!」と、シャルロット。
「暴力振るわないし」
「ううううっ!」と、箒。
「夜這いに来ないし」
「うううううっ!」と、ラウラ。
「でも、みんなもそれぞれ魅力があると思うぞ!」
「「「「「フォローになってない!」」」」」
こうして特別医療室棟に少女達の怒号が響きあったのである。
「全く、一夏殿の朴念仁振りは相変わらずでござるな…」
「タダのバカなんじゃないの?」
一夏達が病室を後にした所で苦笑する昨乃とヤレヤレと首を左右に振るアリア。
「…………」
そんな二人の言葉に何故か楯無は黙っている。
「楯無殿…?」
尋ねる昨乃に楯無は扇を広げる。
そこには『思考中』と文字が書かれていた。
程なくして…。
「良いこと思いついちゃった♪」
満面の笑みを浮かべて言った楯無。
『また、ろくでもないことを考えてるでござるな…』
そんな楯無にそんな事を思う昨乃であった。
前話から約一年振りの投稿となります灰音です。
気分が載らずに作品を放置していました。
続きを待っていた方、お待たせして本当に申し訳ないです。
次はもう少し早く投稿出来るように頑張ります。
ちなみに、作中で昨乃が言っている『悖らず、恥じず、憾まず』は艦これの水雷魂を引用させていただきました。
私の独自の解釈ですので違っていたらすいませんm‐‐m
それではまた、次話で!