ISカグラ‐雷光の担い手‐   作:灰音穂乃香

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第三十話 『告白』

「全く、楯無殿は困った御人でござるな…」

 

苦笑いをしながら昨乃は呟く。

先日、猛アピールする女子達に煮え切らない態度を取る一夏に、楯無が一年生対抗一夏争奪代表候補生ヴァバーサス・マッチ大運動会なるものの開催を宣言したのだ。

 

「私は楽しいよ、こうして昨乃と買い物に出られたから…昨乃は楽しくない?」

 

「そういうことではござらんよ……。

ただ、楯無殿の手のひらの上で踊らされているようで釈然としないのでござるよ」

 

どこか不安げに問うてくる簪に昨乃はそう答える。

二人は現在、学園の放課後を利用して、大運動会の備品の買い出しに来ていたのだ。

 

「流石に昨乃の考えすぎじゃないかな?」

 

「そうでござろうか?

だが、あの楯無殿の事ござるよ…一夏殿だけでなく。

拙者を商品にしないとも言えぬのでござる」

「それは無いと思うよ…多分」

 

「簪殿…今、多分と言わなかったでござるか?」

 

「気のせい、気のせい。

それよりもバスが着いたみたいだし早く降りよう」

 

そう言いながらバスを降りる簪にどこか釈然としない昨乃。

 

『無理にきくのも気が引けるでござるしな…』

 

そんな事を考えながら簪の後を追ってバスから降り、さっそく何でも揃うステーションモールへと入る。

 

 

「先ずはあんパン五十個……これは配達してもらう必要があるよね…」

 

「ぬ?拙者が運べぬ訳では御座らぬが?」

 

「良いの…早く行こう」

 

そう言って、簪が昨乃の手を引く。

 

『ぬぅ…今日の簪殿は妙に積極的でござるな…』

 

普段は大和撫子の如く、三歩下がって歩いてくる感じの簪であるが今日はいつもよりも肩に力が入ってるような…そんな気がするのだ。

そんなこんなで借りてきた猫状態の昨乃と共に簪はパンの注文を済ませたのだ。

 

「あとは何でござるか?」

 

「次ははちまきと軍手」

 

「それも学園へ発送するのでござるか?」

 

「うん」

 

頷く簪に昨乃の脳内に疑問符が浮かんでくる。

 

「それでは何故拙者を誘ったのでござるか?」

 

「ここのメイドカフェに新商品が出るらしくて。

昨乃、一緒に…飲もう」

 

服の裾を掴んで上目遣いで言う簪に昨乃は思わずドキドキしてしまう。

 

『本当にどういう事でござろう…』

 

人通りの多いモール内、繋いだままの手を意識する昨乃。

 

昨乃の手と同じく小さくも温かい簪の手。

その温もりにずっと浸かっていたくなる。

 

「昨乃、あれ」

 

ドキドキする鼓動を静めようとする昨乃に、簪がメイドカフェの前に出ている『新商品タピオカミルクティー』と書かれた看板を指差す。

 

「昨乃、緊張してる?」

 

「そ、そんなことは無いでござる」

 

体温から図星であることが気づかれてしまいそうな錯覚に陥り、意図的に鼓動を抑える。

 

そして、そのまま店内へと入る。

席に着くメイドさんを呼び、タピオカミルクティーを注文する。

 

「申し訳ありませんご主人様。

実はタピオカミルクティーは後一個しか作れないんです~」

 

申し訳なさそうに頭を下げるメイドさんが頭を下げる。

 

「ならタピオカココナッツミルクでをおねがいします」

「はーい、かしこまりました」

 

簪が注文を変更するとメイドさんは奥へと入っていった。

それを見届けた昨乃は簪に気になっていた事を問うてみる。

 

「簪殿、今日は一体どうしたのでござるか?」

 

「何が?」

 

小首を傾げる仕草を採る簪に昨乃は更に追求しようとする。

 

「お待たせしましたー」

 

だが、それもメイドさんが商品を持ってきたために中断せざる得なくなった。

 

何事も無かったかのようにタピオカココナッツミルクを飲む簪。

 

昨乃はそんな簪を見ながらタピオカミルクティーを一口飲んで、目を見開く。

 

「おいしいでござるな…これは。

茶葉はアールグレイ、にプーアル茶。

タピオカは茹ですぎずにもちもちした食感はキチンと残すと言う基本を踏襲しつつもミルクは練乳では無くジャージ牛乳と…なかなかに手が込んでいるでござる」

 

昨乃にしては珍しく語る所を珍しげに見る簪。

 

「そんなに美味しいならもう少し早く来て二つ頼めば良かった…」

 

「それなら一口、飲むでござるか?」

 

そう良いながら昨乃がミルクティーを差し出す昨乃。

 

「ありがとう」

 

簪はそう言うとミルクティーを受け取り、ストローに口を付けて一口飲む。

 

「うん、美味しい」

 

「間接キスでござるな…」

 

笑顔を浮かべる簪に昨乃はそんなことを言ってみる。

 

「気にしてないよ……」

 

『やはりどこか変でござるな…』

 

普段ならば間接キスを指摘されただけで顔を真っ赤にする簪である。

それなの今日の簪は少し無理をしてるとまではいかないが背伸びしているような印象を抱いていた。

 

 

 

メイドカフェで精算を 済ませた昨乃と簪はゲームセンターでクレーンゲームをしたり、プリクラ撮影をしたりしたのであるがやはり、簪の様子がいつもと違いかなり積極的で昨乃をドキマギさせた。

 

そして、時刻は五時を回った所でありそろそろ戻らないと門限に間に合わなくなる可能性があった。

にも関わらず昨乃は簪と共にショッピングモールの屋上へと来ていた。

 

「簪殿、今日は一体どうしたのでござる?

いつもはその…お淑やかなのに…今日は何というか」

 

「…あんだったんだもん」

 

夕日を背に何事か言おうとする簪。

 

「ぬ?」

 

だが、その声が小さく聞き取ることが出来ずに首を傾げる昨乃。

「不安だったんだもん!

昨乃、いつも神崎さんやお姉ちゃんとばかり楽しそうにして!!

 

私の事は全然見てくれない!」

 

「か、簪殿!?

一体どうしたでござるか!?」

 

声を上げる簪に狼狽する昨乃。

 

「最初は勘違いだと思ってた。

でも、意識し始めたらもう自分でもて止められなくて!!

どうしたらいいのかわからなくて!!!」

 

「簪殿…?」

 

簪が何を言おうとしているのかわからなくて…否、頭ではわかってはいるのだが理解が追いつかないのだ。

 

「私は昨乃の事が好き!!

家族とかそういう意味ではなくて異性として好きなの!!!」

 

その言葉に昨乃は簪を抱きしめていた。

 

「……昨乃?」

 

目を見開く簪に昨乃は言葉を紡ぐ。

 

「……簪殿……今まで、気づいてあげられず辛い思いをさせてすまなかったでござる。

拙者のようなもので良ければその思いに応えさせて欲しいでござる」

 

――――――――と。

 




大体育祭に買い出しのはずがいつの間にか簪の告白話に―。
皆さん、灰音です。
ISカグラ三十話を上げさせていただきました。
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