「さあさあ、 続いての競技は軍事障害物走です!」
楯無の声が勢いよく響く。
「あの、もう訊いてもしょうがないですけど、『軍事』ってなんですか?」
隣に座る一夏が楯無に尋ねる。
「ミリタリーよ」
「はあ」
「わかってないわね」
「まぁ…」
釈然としない一 夏にため息をひとつ落としてから 楯無はマイクを握り直す。
「いいでしょう、説明しましょう!
この軍事障害物走とは、まず最初に分解されたアサルトライアルを組み立てます!」
と楯無が指さす先には、パーツ状態の銃が置かれたテーブルがある。
「そして、組み立てたライフルを持って三メートルのはしごを登り、パランスをとりながら五メートルの鉄骨を歩きます!」
下にネットがあるから安心してと、ウインクは忘れない。
「そこを過ぎたら今度はポールで一気 に落 下、着地、そのあとは匍匐前進で網を抜けます。
もちろん、ライフ ルは両手で抱えたままね!」
楯無の解説に何となく、前世の忍術修業を思い出す昨乃。
「そして最後はお待ちかね!
実弾射撃です! 弾は一発のみ!
外したら一度取りに戻らないといけません!」
これがIS学園だとばかりに 参加者は大いに沸いた。
「やほー、 おりむー! みてみて!」
箒組の本音が、一夏に手を振っている。
一夏も手を振っ て応えると、 第一走者全員が手を振り返す。
走者が全員位置につき、スタートピス トルの音とともに女子が一斉に走り出す。
『やはり本音殿が出遅れたでござるな…』
最後にテーブールにたどり着いた本音は銃のパーツを並び替えている。
そうこうしている聞に、 他の女子はてきぱきと銃を組み立てて いく。
だが、それを上回るスピードで本音は銃を汲み上げる。
「じゃっじゃじゃーん!!」
ゆがみの ない、 完全な完成形。
それを誇らしげに両 手でかざして本音は他の女子が唖然とする中、二歩も三歩もリードして走り出した。
『流石でござるな…』
感心した表情でトップを走る本音を見る昨乃。
更識の家で対暗部の為に必要な技能習得に臨んだのであるが銃の分解を虚、組み立てを本音に教わったのである。
『しかし、本音殿の場合は…』
視線を戻すと本音が射撃を行うところであった。
炸薬独特の破裂音で弾丸が飛び出す。
しかし構えだけは様になっているのに、弾丸は明後日の方向へと飛んでいく。
「あれ? おっかしいなあ?」
首をかしげて、弾丸を取りに戻る本音。
しかし、次も、その 次も、その次の次も、すべて 弾丸は外れ、 結局最下位でのゴールとなった。
本音の場合、組み立ては得意なのであるが、射撃となると空っきしなのだ。
『ドンマイでござる』
等と昨乃が心の中で本音にフォローをいれると………。
『がぁんばれええええええっ!!』
解説席から一夏の声援が聞こえてくて女子の目の色、が一斉に変わった。
一夏が見ているとなれば、接点も緩やかながら生まれることになるだろう。
そこに淡い期待を想わずにはいられないが十代乙女の桃色思考回路と言うものである。
その後もレースは大 いに盛り上がりこの競技では事前に訓練をしていたラウラ組が勝利を収めた。
『…こういう風に観戦に回るのも久し振りでござるな~』
相変わらず、チアの衣装を身に纏って昨乃は体育祭の観戦を行っていた。
「―ぬ?」
そんな中、突如として軽快なアニソンが応援席に鳴り響く。
昨乃の携帯電話からである。
『簪殿でござろうか…?』
簪には昨乃が二年の応援席にいることをまだ伝えていなかった事を思い出す。
ポケットから電話を取り出して相手を確認すると楯無からであった。
次の競技は騎馬戦。
楯無が各組代表騎馬の紹介を開始する。
『さて注目はやはり現役軍人のラウラちゃ んですが、おーっとここでアクシデントです。
織斑先生にナイフを取り上げられました』
『いや、ナイフとかダメだろ!』
『織斑先生は次に鈴ちゃんから青竜万を取り上げました』
『おい、 鈴!』
『箒ちゃんは、あれは日本刀ですねl』
『馬鹿か、 おまえらは!!』
『シャルロットちゃ んは円月輪を没収されています』
『シャル……おまえまで………』
『さて、セシリアちゃん?
そろそろ隠し持っ てる狙撃銃を出しておきなさいね』
ギクッという擬音が聞こえた気がした。
ともあれ、これで大運動会の華、騎馬戦の幕が切って落とされた。
『それでは騎馬戦、 開始!』
笛の音で一斉に動き出す数十の女子騎馬たち。
その中でも最も早く動いたのはラウラの軍団だった。
「右翼展開! 左翼はフォローに回れ!」
仁王立ちのラウラが指揮する部隊は、一般女子生徒の騎馬でありながら鋭い動きをしていた。
「よし、 中央突破する!」
「させないよ、 ラウラ」
移動を開始したラウラの前に、シャルの騎馬が立ちふさがる。
「ふっ。
やられにきたか!」
「そうやすやすとやられはしない!」
はちまきを掴もうとしてくる手をはじいて、シャルロットは自分からも攻撃をしかける。
しかし、そこはさ すがに戦い慣れしたラウラ、なかなかはちまきにたどり着かせてはくれない。
「プラズマ手刀があれば!」
「それをいったら僕だってパイルバンカーがあれば!」
互いにあーだこーだと言いながら、大将同 士のいがみ合いが続く。
「ふん、やっぱりこうなったわね……セシリア!」
「わかってはいましたわ……鈴さん!」
龍虎相まみえるとはよくいったもので、鈴とセシリアはお互いにドラゴンとタイガーのオーラをほとばしらせていた。
「でやああああ!」
「はあああああ!」
お互いの騎馬が激突し、 両腕が両腕を封じ込める形で硬直する。
「せ・し・り・あぁ……あきらめ、なさい、よぉ!」
「り・ん・さ・ん、こそぉ…!」
互いの力の押し合いが続く。
双方とも力加減を変えて相手の体勢を崩そうとするが、組み合っ た腕はなかなか離れない。
鈴とセシリアが体を揺らす。
違うのは、 セシリアの方は豊満な胸の膨らみが弾んでいることだった。
「………」
そして、それはシャ ルロットと対峠して いるラウラも同じである。
そんな中、箒は昨乃と対峙していた。
一人あぶれるからと言う理由で楯無から参戦をするように電話で命じられたのだ。
「大人しく、負けを認めれば痛い目を見ずにすむぞ?」
「そうしたいのも山々でござるが…こちらも会長からの命令でござるからな……」
苦笑を浮かべる昨乃。
「そうか…では仕方あるまい!」
そう言って、組み付いてくる箒を昨乃は真っ向から受け止め、攻撃の応酬が始まった。。
しかしいきなりの大声アナウンスに戦場の全員がざわめいた。
「さて、ここで織斑一夏騎馬を投入です!
彼のはちまきを獲っ たら五OO点差し上げます!」
楯無だった。
「またこんなんですか!?」
「乱入があった方がおもしろいじゃない。
がんばれ~」
昨乃チーム以外の騎馬全員が一夏の方を向く。
なにせ五OO点である。
最下位のチームでさえトップに立てるという大チャンスに、十代女子が燃えないはずがない。
「「「そのはちまき、 置いてけえええええっ !」」」
一斉に一夏に向かう騎馬たち。
その攻撃から身を守ろうと手を伸ばすと、あろうことか女子の胸をわしづかみしてしまった。
「やぁんっ。
織斑くんのえっち☆」
出席番号一番、相川清香!と続ける。
「い、ち、かあああああっ!」
胸の恨みは七代たたると、誰、が言ったか言わなかったか。
「しねええええええええ!」
鈴はIS甲龍を高速展開し、衝撃砲を放つ。
「どわああああっ !」
対して、一夏も白 式を展開してシールドを張った。
「続けて、 行くぞ!」
シューヴァールツェア・レーゲ ンの大口径リボルバーキャノンが火を噴く。
「死ぬっ ! 死ぬっ !」
騎馬の女子を逃がして、空中に舞い上がる一夏。
しかし、それを蒼い閃光が遮った。
「空中戦ならお手の物、ですわ♪」
『ブルー・ティアーズ』のレーザービットが四方から一斉に射撃する。
《雪羅》のシールドによって事なきをえる 一夏だったが、逃げ場所はもう上昇しかないい。
「ここで!」
「……チェックメイト!」
上空から箒の攻撃、地上からシャルの追撃。
逃げ場はもうなかっ た。
「たっ、助けてくれ昨乃」
「観念するべきでござるよ~」
助けを求めた一夏に昨乃は苦笑で返す。
次の瞬間、一夏は爆発に呑まれた。
『さて…昼餉でござるが……やはり簪殿と…共に取るべきでござ…ぬ?』
騎馬戦でひとまずは午前中のプログラムは終了し、昼食休憩の時間となる。
自販機で購入したお茶を抱えながら昨乃はそれを発見する。
IS学園の制服を着た女生徒である。
そこまでは問題は無い。
問題があるならばその少女が昨乃と因縁がある相手だからである。
年齢は一夏や昨乃達と同じぐらい、腰まで伸ばした黒髪を根元で束ねたどこにでもいるような平凡な見た目の少女である。
少女の名は椿―道元の手下であり、BT兵器搭載IS・ルシファーのパイロットである。
『何故、あの者がこのような所に…?』
疑問に思いながら昨乃は気配を完全に絶ち、待機状態の黒鉄を部分展開。
忍び緞帳の原理を用いて開発した光学迷彩を作動させると椿の後を追跡し始めた―。
―灰音穂乃香です。
割とテンプレな感じでお送りさせていただきましたISカグラ三十二話。
次回はオリジナル要素を大量に織り交ぜていきたいかと思いますー。