ISカグラ‐雷光の担い手‐   作:灰音穂乃香

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第三十四話『そうだ京都へ行こう』

秋も深まる頃、朔乃達専用機持ちの面々は引率の千冬、山田先生と共に京都へと向かうため東京駅にいた。

 

これまでに起こった様々な騒動が原因で延期となっていた修学旅行であるが、またしても第三者の介入が無いとは言えない。

そういうこともあり、前記のメンバーで京都へと下見へ行く事になったのだ。

 

ー実を言うなれば下見と言うのは建前で本来の目的は『亡国機業』の掃討作戦である。

 

今回の作戦にはISの補修を終えた二年のフォルテ・サファイアと三年のダリル・ケイシーも加えた一大作戦になっていた。

 

(ここは拙者も気合いを入れ直さねばいかぬな…)

 

そんなふうな事を考えていたのはどうやら朔乃だけだったようである。

 

「一夏! 貴様という嫁は、貴様という嫁はっ!」

 

怒りの声をあげながら一夏の首を絞めてかかるのはラウラである。

 

駅弁屋で見つけたひよこ饅頭を買おうとしていたところを新幹線の時間に間に合わないとのことで一夏に連れてこられたのだ。

その目は少し涙ぐんでおりいかにひよことの別れが辛かったのかを物語っていた。

 

「ぐええっ! や、めっろ!死ぬ、しんでしま、う……!」

 

だんだんと青ざめていく一夏の顔。

流石にこれ以上はまずいと朔乃が止めに入ろうとしていたところ先に動いた者がいる。

シャルロットである。

 

「ラウラ、一夏は無駄遣いを止めてくれたんだよ?」

 

「無駄!? なにが無駄だと言うのだ!

だいたい、金などあっても私は使わんのだぞ!?」

 

「えーと、そこは結婚資金に回せば良いんじゃないかな?」

 

そう言ってからシャルロットはしまったと口を手で押さえたが、もう遅い。

 

ラウラは一夏の首から手を離し、目を輝かせる。

「結婚資金! そ、そうか!

ならば無駄遣いは家計の敵だな!うむ!うむ!」

 

「あちゃあ…」

 

時すでに遅し、一夏とのハネムーンに胸踊らせるラウラにシャルロット以外のメンバーは悟りきった目をしていた。

 

「平和でござるなー」

 

何と言うべきか一人だけ気構えてきた自分がバカらしく思えてきた。

 

「朔乃…」

 

「ひゃう!」

 

簪の不機嫌そうな声と共に首筋に冷たいものが当たり朔乃は声をあげる。

 

「何をするでござるか簪殿!?」

 

「だって朔乃、すごく気難しい顔してたんだもん。

いくら任務だからって、せっかくの京都なんだからもう少し楽しまないと駄目だよ」

 

ジュースを片手に頬を膨らませる簪。

 

「そうでござるな…申し訳ない簪殿」

 

 

そんな簪に申し訳なさそうに謝る朔乃であった。

 

 

 

 

「まもなく京都、京都です。

ウィール・メイク・ア・ストップ・アット・キョート」

 

外国人向けということもあり、京都のみならず新幹線は英語の案内がある。

 

それを聞きながら、各人が荷物の準備をしだしあ。

 

「ん? あれ?」

 

「どうしたでござる?一夏殿?」

 

荷物をあさりだした一夏に朔乃が不思議そうな顔で様子を伺う。

 

「あったあった!」

一夏が取り出したものは年季の入ったアナログカメラである。

 

「一夏殿?それは?」

「ん?ああこれは俺と千冬姉との絆みたいなものかな…」

 

どこか遠い目をしながら言う一夏。

恐らくそのカメラは一夏と千冬の記録を残し続けてきたものなのだろうー。

 

そんなことを朔乃が考えていると新幹線は直ぐに京都についた。

 

駅から出ると京都駅名物の長い階段が姿をあらわす。

 

「おお。ここで集合写真撮ったらすごい良さそうだな」

 

何気なく漏らした一言に、千冬が賛同する。

「そうだな。

記念に一枚撮っておくとしよう。」

 

「えっ、いいんですか?織斑先生」

とっさに千冬姉と呼ばなくなったあたり、一夏も学習している。

それならと全員が整列した。

「じゃあ、撮りますよ」

 

「は?」

 

「え?」

 

シャッターを切ろうとした一夏に鈴が歩み寄る。

 

「あんたが写らなくてどうすんのよ!

ほら、はい!山田先生、よろしく」

 

カメラを押し付けられた真耶は最初は困惑したものの、千冬のすまなさそうな顔を見て了承した。

「じゃあ、撮りますよ~。

三、二、一」

シャッター音響き、一夏の絆に一枚の写真が付け加えられることとなった。

 

 

「さて、それでは行くでござるか!」

 

意気込む朔乃であるが楯無はおかしな事を言ってくる。

 

「いいわよ、今は京都を漫遊してて」

 

「ぬ?トラブルでござるか?」

 

「実は情報提供者を待っているんだけど、どうも連絡が取れなくてね。

仕方がないから私が探そうと思うの。

京都にはいるはずだから向こうから接触してくるはずよ」

 

どうにもきな臭い話ではあるが楯無に限って万一と言うことはないだろうー。

 

「そういうことならば拙者も京都を楽しませてもらうでござる」

 

そう言いながら朔乃は一夏を取り囲んで何やらやいのやいのやっているクラスメイト達の元へと向かったー。

 

 

一夏に自分の写真を撮ってもらおうと躍起になっていた女性陣であるが二人一組のペアを作って変わる変わる写真を撮ってもらうことに決定したー。

 

ちなみに組分けは朔乃と簪、箒と鈴、ラウラとシャルロット、セシリアとアリアとなったー。

 

 




どうも、前回の投稿から三年以上経過しての投稿となります灰音穂香です。

原作で言うところの10巻をお届けさせていただきます。
とりあえずこれからは隔月ぐらいで投稿できるように心がけていこうかと思います。


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