黒鉄…その名から判る通り打鉄の系列機である2.5世代機である。
打鉄との外見的な違いがあると言うならばその機体のカラーリングぐらいだ。
『真っ黒でござる…が、忍びである拙者にはぴったりでごさるな…』
そんな事を考えながら量子変換されている武装から双振りの小太刀を呼び出す。
ISサイズに作られた小太刀はかなり大型であるがPICが働いているからか重さを殆ど感じない。
「やっと見つけましたよ篠ノ之博士!全く!やっと我々に協力して頂けると思ったら逃げ出して…どういうつもりですか!」
声と共に現れたのは髪を腰まで伸びた黒を根元で束ねた高校生ぐらいの少女であった。
「ってIS!…まさかおびき寄せられたのですか!」
独りで勝手に騒いでいる少女。
「だってさー、あんな狭い潜水艦の中に閉じ込められてたら息苦しくなるんだもーん」
頭の上で手を組みながらそう文句を述べる束。
「でも、君も手ぶらで帰ったら偉い人から大目玉!
ってな訳でここで一つ提案!
もし仮にだけどそちらのISー黒鉄を倒すことが出きるならば君の顔を立ててあげても良いよー」
ニコニコと笑みを浮かべながら脇のコンテナ上へよじ登る束。
「ならばこちらも好都合です!
篠ノ乃博士が作っていったコアを使い組み上げられたら無人機‐ゴーレム・プロトタイプの試験をさせてもらうです!
来いゴーレム!」
少女がそう言うと同時に上空から五つの影が降り立つ。
全身装甲の無人機‐ゴーレムのプロトタイプである。
見た目はアイアンマンスーツに良く似ており、両腕にはガトリング砲が装着されている。
「さあ!ぶっ壊すです!」
少女がそう言うと同時に十門のガトリング砲から凄まじい量の銃弾が撃ち出される。
『なるほど…これは厄介でござるな…』
機体に直撃しそうな弾だけを撃ち落としてはいるが流石に五方向から来る大量の銃弾を捌ききる事が出来ずシールドエネルギーがガリガリと音を立てるように削れていく。
『仕方ないでござるな…』
心の中で一人、ごちると朔乃はその言霊を口にする。
「秘伝忍法…」っと…。
「これは第二世代ISには少し荷が重いかなー
朔ちゃん&束さんピーンチ」
コンテナの上で朔乃の戦いを観戦していた束がそんな言葉を漏らす。
「どうした!どうした!ちょっとは反抗してみるです!まぁ、こんな弾丸の嵐の中をまともに動けたらですけどねぇ!」
などと大声で叫ぶ少女。
「反抗?今し方あの木偶人形は片付けてきたでござるよ?」
背後から聞こえてくる朔乃の声に少女は振り向く。
バチバチと音を立てる雷をISに纏わせた朔乃が小太刀を突きつけていた。
秘伝忍法『纏雷』…雷獣の力を借りて武器や身体に雷撃を纏う朔乃の秘伝忍法である。
身体に纏えばその身を雷と一体化し超高速で移動する事が出来、武器に纏えばその武器の攻撃
力を上げる事が出来るなど非常に使い勝手が良い技なのである。
「撤退して貰えば拙者としても有り難いでござる」
背後でゴーレムが爆散する音を聞きながら少女は顔に薄ら笑いを浮かべる。
「秘伝忍法!…あなた忍だったのですのね?」
「何故その事を?」
少女の言葉に目を見開く朔乃。
「知れたこと…」
少女では無い第三者の声に朔乃は先ほど少女が来た方角を見る。
長身の男がこちらに向いて歩いてきていた。
「道元様!」
少女が叫んだ男の名に朔乃は息を飲む。
蛇女子学園について調べている時に耳にした名だからだ。
蛇女子学園のスポンサーである。
「道元様…申し訳ありません…私。」
「椿、仕方があるまい…。
善忍が転生しているとは私とて思わなかったのだからな…」
頭を垂れる少女‐椿にそう声をかける道元。
そんな道元に警戒したように朔乃は構える。
「まあ、待て…我々が標的としていた人物は既にここにはいない。
それなのに争うのはバカバカしいとは思わないか?」
道元の言葉に周りを見回す朔乃。
確かに、彼の言うとおり束の姿はどこにもなかった。
「確かに、その通りでござるな…」
そう言いながら視線を戻すと道元と椿の姿も見えない。
撤退したようである。
朔乃はISを解除すると携帯を取り出し簪に連絡を入れる。
束を取り逃がした事を報告する為であった。
ゴーレムとの戦闘から数日後…。
朔乃はIS学園の門前にいた。
簪や本音の付き添いと言う訳では無い。
ゴーレムとの戦闘後に束がIS学園への紹介状を書いてくれたのである。
新たな生活に不安はあるがきっと上手くいく。
そう思いながら朔乃はIS学園へと足を踏み入れた。
upー