「目を覚ましないよ、一夏ぁ!」
白騎士の攻撃を受けながら、鈴たちは必死の説得を試みていた。
「……」
しかし、一夏の意識は覚醒しない。
それどころか、攻撃はますます激しくなる。
「どうする!? このままでは私たちのシールドエネルギーがもたないぞ!」
そこは箒さんの《絢爛舞踏》を期待していますわよ!
「あれは、しかし……!」
いまだに発動条件が「一夏を思うこと」なので、今の状況では難しい。
しかし、それを伝えようにも気恥しさが前に出てしまう。
「だがっ、みすみすやられはしないぞ! 目覚めないというなら、叩き起すまでのこと!」
防戦一方から一転、箒は単騎で突撃する。
《空破》が白騎士の《雪片壱型》とぶつかる。
「いまならわかる、どうしてフォルテが裏切ったのか!」
好きな人のために何もかも捧げる。
全てを捨てられる。
命を懸けられる。
「何を賭しても、私はお前を救うぞ! 一夏!!」
叫びながら白騎士の刀を弾き飛ばす。
しかし、白騎士は左腕から荷電粒子砲を放つ。
ゼロ距離から放たれたそれは箒の腹部を焼く。
「がはっ!」
体勢を崩した箒に、白騎士が追撃にかかる。
それを遮ったのが、ブルーティアーズの鋭い狙撃だ。
「わたくしだって、一夏さんのためなら!」
「そうよ。私だっているんだから!」
戦線にセシリアと鈴が加わり、戦闘は更に激化する。
しかし、白騎士に刷り込まれた織斑千冬の動きは、三対一という逆境さえ跳ね除けた。
「負けませんわ! わたくしの想いは、それほどお安くなくってよ!」
一夏との出会い。
思えば、あのときから惹かれていたのかもしれない。
だからこそ、最初は素直になれなかった。
けれど、共闘して、敗北して、そこで気づいた。
自分の初恋と、素直になる気持ちを。
「一夏さんをわたくしから奪おうなどと、1万年早いのですわ!」
セシリアのビットによる集中攻撃。
更には、鈴の衝撃砲が白騎士に距離をとらせる。
「なにサラッと一夏を自分のものにしてんのよ、あんたは!」
巣の思いも負けていない。
小学校時代に異国の地だった日本に来て、不安で強がっていた鈴。
そんな鈴に出会って、気持ちを解きほぐしたのが一夏だった。
つらいときも、さみしいときも、いつもそばにいてくれた一夏。
その一夏がいま内なる闇と一人戦っている。
それなら、手をさしのべよう。
かつて、一夏が鈴にしたように。
今度は、鈴から手を差し伸べよう。
それが、いまもずっと続いている初恋なのだから。
「一夏は、千冬さんの影になんか渡さないんだから!!」
鈴の《双天牙月》の連結と投擲により、白騎士が揺れる。
そこに、畳み掛けるようにショットガンの散弾連射が襲いかかる?
「シャルロット!」
束に受けたダメージから回復したシャルロット、ラウラ、朔乃が空域にたどり着くと同時に、戦線に加わる。
「どういう状況かはオープン・チャンネルで聞いていたからわかってるけど、なんだか告白大会になってない?」
「ふふん、そういうことなら私の出番だな!」
「やれやれにござるな……」
鼻息荒い2人と、呆れる1人は攻撃を開始する。
「お先に!」
そう言って飛び出したのはシャルロットだ。
「目を覚まして、一夏!」
シールドをパージして、パイルバンカー《グレー・スケール》を出現させるシャルロット。
それはやりすぎだろう、と全員が思ったが口には出さない。
「これで!」
一夏との出会いを経て、心を救われたシャルロット。
自分の居場所をくれた、一夏。
心の置き所も、もう決めてある。
だから言葉にしたい。
伝えたい。
「僕の大好きな一夏に戻って!」
パイルバンカーが左腕の装甲を打ち砕く。
アームド・アームを失った白騎士に、今度はラウラのプラズマ手刀が差し込まれた。
「私を守ると言っただろう!」
最低の出会いから、最高の初恋へと変えてくれた一夏を思う気持ちは、誇れるほどに強い。
自分を守ると言ってくれた。
だったら自分も一夏を守りたい。
一夏を包み込める存在でありたい。
「一夏、私の声が聞こえるか!」
「私たち、だよ。 ラウラ!」
白騎士に朔乃が展開したプラズマ・スフィア《フォトン・ブラスター》が降り注ぐ。
朔乃が《フォトン・ブラスター》の展開が終わると共に離脱したシャルロットとラウラは箒達と並んで朔乃と白騎士の戦いの顛末を見届ける。
《フォトン・ブラスター》の展開を終えた朔乃が手に顕現させたのは納刀状態の長刀だ。
「そういえば……」
意識を研ぎ澄ませながら、朔乃は思い出す。
一夏と代表候補を巡った戦いで最終的に使ったのもこの長刀だ。
あの戦いの後、一夏は兄貴分であり親友みたいな存在になった。
銀の福音との戦闘で1度失いかけた一夏との絆……もう二度と失いたくない。
「戻ってくるでござる! 一夏殿!!」
《フォトン・ブラスター》の掃射が終わり、白騎士との距離を一気に詰め、腰を落とした体勢から一気に長刀を抜き放つ。
「天翔龍閃!!」
神速の抜刀術が炸裂し、ダメージが限界を超えた白騎士が地表へと落ちていく。
その姿は、もはや白騎士のそれではない。
装甲も姿も白式のものへと戻っていた。
「一夏!」
全員が叫んで、その姿を地上に激突する前に受け止める。
「良かった……」
誰かが呟いた。
こうして、一夏の暴走と少女たち+αの告白劇は幕を閉じたのだった。
今回は早めに投稿できました……次回で修学旅行編の方は終わりかな•́ω•̀)?