「これよりIS学園新入生歓迎祭を開催したいと思います!」
教壇に手をつき楯無が声、高らかにそう宣言する。
IS学園の入試から1ヶ月が経過し、入学式を終えたその日にサプライズ的に開催されたのであった。
『あー、なる程でござるー』
一人、納得したように心の中で頷く朔乃。
一年生が校舎への立ち入りを禁止されていたからである。
「それで…何で拙者が給仕服を着ねばいかぬのでござるか?」
羞恥に顔を赤らめながらもメイド服を着こなす朔乃。
彼が現在居る場所は生徒会が経営するメイド喫茶である。
虚、簪の三人で校内を回ろうとした所を楯無と本音に確保されて現在に至るのだ。
「人手が足りないから仕方ないよ朔ちゃん~」
朔乃と同じくメイド服姿の本音が丈長のメイド服姿でそう言うとひらりとスカートを翻す。
「それは別に構わぬでござるが、何故拙者だけがこんな超ミニスカのメイド服なのでござるか?」
そう言いながら半眼になり楯無を睨む朔乃。
現在、朔乃が着ている衣装は白のオーバーニーソックスと超ミニのスカートのメイド服を組み合わせた素敵滅法な品物なのである。
「っと言うか見えそうで怖いのでござるが…」
超ミニのせいで下着が見えてしまうのでは?などと考えてスカートを押さえる。
「大丈夫、そのスカートには絶対に見えそうで見えないって言う素敵ギフトが付加されたミニスカートだから」
ウィンクをしてどこぞの星霊みたいな事を曰う楯無。
「そういうものは付いてません…
が下から覗かない限り確実に下着が見えないように作ってます」
そんな楯無の言葉を訂正を入れる虚。
「っと言う訳だから…はい」
そう言いながら楯無はプラカードを取り出して朔乃に手渡す。
「宣伝よろしくね」
笑顔でそう言う楯無にNoとは言えない朔乃であった。
「さてと…」
朔乃が客引きにむかってから数分後。
悪戯を思いついた子供のような笑みを浮かべる楯無。
「本音に…やるの?」
そんな楯無とは反対に簪の表情は不安げだ。
「もちろん!」
そう言うと楯無はマイクを取り出し__________。
「ぬ?」
看板を持ち歩いていた朔乃はそれに気づく。
壁に取り付けられている放送用のスピーカー。
そこから漏れるマイクの調整によるハウリング音。
『なんか無茶苦茶嫌な予感がしてきたでござるー』
嫌な汗が背筋を伝う。
『あー、マイクテスト。
マイクテスト。
只今マイクのテスト中ー』
スピーカーからそんな声が聞こえて来る。
声の主は言うまでもなく楯無だ。
『現在、生徒会の開催しているメイド喫茶。
その模擬店の看板を持っている女の子は実は男の娘だったりしますー』
『なっ!?』
会長の言葉に周囲の女子から視線を注がれる。
完全に飢えた猟犬が獲物を見るような目つきである。
「なる程…あれが噂に聞く男の娘…」
「いい!本気と書いてマジでお持ち帰りしたい!」
しかもそんな声も聞こえてきたりするから尚更にたちの悪い。
『さて…そんな客引き男の娘を新入生歓迎会の開催時間中に捕まえた方には漏れなく、1日デート権がついてきたりしまーす』
『あの会長!何を考えてやがるのでござるかー!!』
そんなことを考えながら走り出す。
後ろからは複数の足音が追いかけてきていた。
「ふふふー」
顔に楽しげな笑みをうかべつながら楯無はモニターを眺める。
モニターには学園内の監視カメラの映像が映っている。
そこに映っているのは言うまでもなく女子から逃げ回っている朔乃である。
「さて、誰があの娘を捕まえるかなー?」
「いやいや捕まらないと思いますよ?
彼そこらへんの陸上選手よりも足が速いですし」
「そんなことは無いと思うよ?
おっ?追い込まれたねー」
虚の言葉にそう返すとモニターを覗き込む楯無。
モニターの中には窓際にまで追い込まれた朔乃の姿が映されていた。
『マズい…非常にマズいでごさる…』
冷や汗を浮かべながら朔乃は窓際へと後退する。
それと同時に女子は包囲網を狭めてくる。
『くっ…こんな所で…』
祈るような気持ちで窓に手をかける朔乃。
幸いにも窓には鍵はかけられていないようで直ぐに開ける事ができた。
そのまま後方へと跳び、空中に身を踊らせる。
「うそ!ここ三階だよ!!」
朔乃を追いかけていた女子の一人が驚嘆の表情を浮かべて叫ぶ。
『このぐらいの高さはムササビの術に比べると大したことは無いでござるよ!』
そんなことを考えながら朔乃は空中で体を捻り、両手両足で中庭へ四点着地。
それと同時に足音が聞こえて来る。
足音から察するに追っ手は一人。
『ならば振り切れるでござるな…いつっ!』
走りだそうとした所で足首に痛みが走る。
着地した時に捻ったらしい。
『くっ…不覚にござる!!』
唇を噛みながらスカートのポケットから取り出したのは忍緞帳だ。
この忍緞帳は光の屈折率を変化させて周囲の風景と一体化できるという便利な代物なのである。
『これを被って追っ手をやり過ごすでござる…』
心の中で呟きながら息を殺す。
追っ手の足音が朔乃が隠れている場所へと近づいてくる。
その距離は10メートルもない。
10メートル…8メートル…6メートル…っと足音がどんどん近づいてくる。
4メートル、2メートル、0メートル。
隠れている朔乃の前で足音は止まる。
『なっ!?何故でござる!?』
「全く、手間をかけさせるをじゃないわよ」
その声と共に忍緞帳が朔乃の体から取り去られる。
それと同時に小柄な少女の姿が目に飛び込んで来る。
身長は150cm程、真紅の髪をツインテールにしている愛らしい少女だ。
「ようやく見つけたわ、転生者さん」
「つっ!」
自分が転成者である事を知っている少女に身構える朔乃。
「安心して、やりあう積もりはないから」
そう言いながら少女は両手を上げる。
「神から聞いてるでしょ?私は天界からの調査員、神崎アリアよ」
『確かに…敵意は感じられないようでごさるな…』
アリアが自分に対して敵意が無いことを確認すると構えを解く。
「てっきり拙者の貞操を奪いに来たのかと思ったでござるよー」
冗談混じりにそう言う朔乃。
「なっ…何をバカな事を言ってるのよ!破廉恥よ!!風穴空けるわよ!!!」
朔乃の言葉に顔を赤くするアリア。
『純情でござるなー、いや…拙者が毒されただけでござるかな…』
等と思っていたりする朔乃であった。
『なるほど…転生者ね…』
朔乃のメイド服に取り付けた盗聴器から聞こえてくる朔乃とアリアとの会話に耳を傾ける楯無。
場所は変わって生徒会経営のメイド喫茶。
現在はある程度、客足が大分、遠のいた為に楯無は休憩中なのである。
隣には楯無と同様に簪が朔乃達の会話に耳を傾けている。
『さて…この会話に簪ちゃんは何を考えるだろう…』
子供の頃から一番朔乃に接する時間が長かった簪は彼のまだ見ぬ一面に触れることが出来た事を嬉しく思う一面もあり寂しく思う面めあった。
『多分…朔乃は未だ何かを隠してる…』
根拠は無いが幼なじみとしての感がそう告げていた。
『もっと頼ってくれても好いのに…』
もやもやとした気持ちが芽生える簪であった。
個人的にラブコメの方が書きやすいー