島村卯月冒険譚~この世界で平和を取り戻す~ 作:アカツキ=ニュー
小悪党
「あー……」
「ううう……」
「二人とも、引き摺りすぎだって」
一行の冒険に進展が無い、それどころか各所で亀裂を巻き起こす事態、
凛は仕方がないものと割り切れてはいるが残りの二人はそうはいかない、
何よりも、気が合い仲も良くなった面々が、先の分からぬ道を選び発ったとなれば猶更。
「私達と目的が同じなら、どこかで会うかもしれないし」
「……そうですよね」
味方か敵かは分からない――と、喉元まで出かかった言葉を抑えて。
奈緒や加蓮が欲で動く人物かはさすがに分からない、
危険をいち早く認識して去ったのかも分からない。
だが人型の生物というのは“目的”に対して、強い力を発揮する事も、あるのだ。
「……?」
(卯月はいい方向に傾いたみたいだけど)
とにかく今は次の中継地点となる村まで進むことにしている。
この前よりも距離は短いはず、疲れが頂点に達しないうちに、ゆっくりと進むべきだ。
「三人とも遅いぞ! ゆっくりしてたら陽が暮れちゃうだろッ!」
「まだ明るいから大丈夫ですよ美玲ちゃん」
「そんなコト言ってたら、前みたいに何が起きるか分からないんだからなッ!」
「分かった分かった! でもそんなに走り回っちゃ危ないよ? ここ狭いし」
「へん! ウチが森の中でどれくらい過ごしてたか! これぐらい――」
ズボッ!!
「のわーーッ!?」
「美玲ちゃん?!」
突如、獣道を走っていた美玲の姿が垂直に消えた。
平坦なはずの道筋に現れた大口、地面の穴へと彼女が吸い込まれるように落ちる。
慌てて一行が駆け寄ると小柄な体格の彼女がすっぽりと、凹んだ地面に収まったまま
「あ……浅かった」
「……ぷっ」
「な、なんですか? これ……」
「笑うなッ! 恥ずかしいからッ!」
大した怪我は無く、笑い話のような雰囲気で場は和む。
綺麗に引っかかった体を卯月と凛が引っ張り上げ、
落ちた当人は背中の泥を払いつつ彼女を嘲笑った穴に悪態をつく、
どうして道の真ん中に穴が開いているだの、そもそもさっきまで開いていなかったなど
「嘘じゃないからなッ! 本当に穴が開いてたら落ちてないモン!」
「またまた美玲ちゃん、途中でいきなり道に穴が開くなんて
こんな場所じゃあ普通ありえないよ」
そう、普通は考えられない。
未央の頭にほんの少し、本当に一瞬だけ過った考えは『誰かの悪戯かも』である。
しかしこの可能性は限りなく低い、そもそも悪戯ならば何故こんな場所に仕掛けがあるのか、
ここは人通りも少なく村からは離れている、獲物が掛かる事など滅多に無いだろう。
だが、とある一つの可能性を考えれば、矛盾は解消される。
残念ながら一行がその可能性を考える事は無かった、が、
美玲を手助けする卯月と凛に対し、手持無沙汰の未央は偶然にも背後に振り返る。
ヒュルルルル……
「……は?」
刹那の認識であったが、少なくとも自然の生物ではなく
それどころか明らかな人工物の角ばり、そして軌道に残る白煙。
これほど自己主張の激しい色味と形状を持つ物体を
たまたま振り向くまで一切気が付かなかったと思うと不思議に感じ、その次に思ったのは
「危な――」
ドゴォンッッ!!
ギリギリで未央達の脇をすり抜け、そのまま数メートルほど離れた地面へ落ちた“それ”は
着地と同時に激しい爆発音と、地面や木々を破壊する衝撃を発する。
もしも未央が気付かず、軌道も反れる事無く全員を爆破の中核が襲っていたら――
「こ、攻撃!」
「そんな、いきなり……!?」
「なんだなんだ!? 今の爆発ッ!?」
不意により混乱を巻き起こす目的の初手であるならば大成功だろう。
実際、完璧な虚を突かれた一行は落ち着く暇なく状況の理解に追われる羽目となる。
この場へ向けて第二射が飛来したならば、まるで対抗策の用意できていない彼女達は
二度目の偶然を起こさぬ限り壊滅的被害は免れなかった。
「アーッハッハッハッ!!」
――そう、実際に第二射は放たれなかった。
それどころか絶好の機会を棒に振ってまで森に轟かせられた威勢の良い大声、
ついでに咳き込む声も聞こえたが、それは身を隠していたはずの
射手の居場所を容易に晒け出していた。
「何? ……だ、誰?」
「聞いて驚きなさい! アンタ達を仕留めるのはこのアタシよ!」
「あの道具……まさか、さっきの爆発は!」
「そうよ! この特性レイナサマバズーカは、アタシの敵を木っ端微塵にする力があるのよッ!」
ふざけた名前をつけられた道具、それも持っている人物は子供も子供、
美玲と見た目の年齢は似通っていても人と獣の種族差は、確実に肉体の年齢が異なる。
しかしそんな武器らしき道具も見た目は立派な重火器、
実際に先の爆撃がこのバズーカによるものであれば、驚異的な武器である。
「ウチらに何の用だ! 危ないだろッ!」
「うっさいわね! 目的はアンタじゃないわ、黙ってなさい!」
「じゃあ何で私達を狙ってるの?」
「それは当然……そこのアンタ!」
びしりと差された延長線上、少女の目標となる人物、それは卯月。
物資でも全体でもなく一人だけの宣言、対して卯月は相手にまるで心当たりが無いが
「まさか……!」
「この力があれば、レイナサマの新たなる伝説の始まりよッ!
あいつ、えーっと……とにかく、アタシの為にここでくたばりなさい!」
レイナ――麗奈と間接的に名乗った少女が、半ば勝手に吐露し出す裏側、
あいつと示された第三者、そして力、様々なキーワードに心当たりが浮かび上がり
最終的には確信をもって感じる、襲撃は形を変えて続いていたのだ。
「やっぱりこれは、あの人の……!」
「まさかこんな手段で来るとはね」
恐るべきは昨日、あれだけ卯月と凛を苦戦させた元凶、
それらは何も特別なものではなくこうして数を撃って繰り出せる手段であった事。
相葉夕美――彼女が奈緒に分け与えた力、それと同様の何かを麗奈にも与えたのかもしれない。
その対価、もしくは更なる力を報酬にして、島村卯月を討てと。
「ばら撒いてる……奈緒で実験して、もう完成したのかそれとも……」
「まだ別の手段で、力を与える方法があるのかも、ね」
「だったら猶更――」
「ごちゃごちゃ言ってんじゃないわよ!」
「っ! またあのバズーカが飛んでくるぞッ!」
バシュンッ!!
ドゴォンッ!!
「うわぁッ! ぐ……なんだよコレ! 卑怯だぞ! オマエ、降りて戦え!」
「チッ、運の良い雑魚ね! そこからアタシの攻撃を指を咥えて見ていなさいッ!」
砲撃は幸い、爆発の被害が及ぶような位置に着弾はしていない、狙いは甘いようだが
とはいえ威力は折り紙付き、そしてこの麗奈との距離間が戦いを容易には進ませない。
思わぬ角度から即座に降臨した刺客、戦いはいつも唐突に――始まる。