島村卯月冒険譚~この世界で平和を取り戻す~   作:アカツキ=ニュー

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天邪鬼

「…………」

「おいッ、卯月も何か考えろよッ!」

「あっ、す、すいません」

 

戦いの渦中で上の空、最前線でないとはいえ迂闊だろうか。

しかし卯月も、思考停止で立ち惚けていたわけではない。

 

「どうにかして切り抜けないと、まだ一回もまともに当たってないから大丈夫だけど――」

「……一回も当たってない?」

 

そして、気付きの切っ掛け、天啓が舞い降りたのは美玲の発言を受けて。

思い返せば麗奈が繰り出す攻撃の派手さと高性能な威力、さらには瞬間移動など

規格外な道具の数々に踊らされていた。

だが冷静に考えてみれば、卯月達は致命的な一撃を喰らってしまった記憶は、無い。

 

「いや、だってそうだろ? あんな爆発、ウチらが耐えるのは――」

「もしかして……!」

 

ダッ

 

「おまっ、卯月!?」

「あっ! またそうやってアタシに刃向かおうとするのね? そんな奴には!」

「卯月!! 危ない!!」

 

(“賭け”かもしれないけど……きっと、当たってるはず! この予感は!)

 

木陰から颯爽と飛び出す卯月、向かうは地雷原の迂回路ではなく一直線、

麗奈が場所を変えて現在陣取っている高台。

堂々と向かいすぎているせいか一瞬で察知され、バズーカの照準が視線と合致する、

凛が制止するが引き金を麗奈が引く速度には間に合わない。

 

「おみまいしてやるわッ!!」

「しまむー!!」

 

バシュンッ!!

 

 

 

ヒュゴォッ――

 

「っ~……!!」

「さ、避けた!? いや……?」

「助かったけど、ほとんど掠ってたぞ卯月! 危ないぞ!」

 

僅か数メートル直前、弾丸の軌道が上向きになった影響で

文字通り卯月の顔面スレスレをすり抜け、はるか後方の大木に爆炎が上がった。

安堵の吐息を漏らす凛達と、舌打ちしながら次弾を装填している麗奈、

そんな中で一人、卯月だけは考えていた事が他の全員とはまるで違って

 

(やっぱり“当たらなかった”……! ただ直進しているだけの私なのに、外れた!)

 

「ったく何なのよ! 運がいいだけでレイナサマをてこずらせるなんて!」

(それに……きっと本人は分かってない! この“能力”の仕組み!)

 

好きな武器、道具を作り出せるという万能な能力――と、麗奈は認識しているだろう、

少なくとも何かを作る能力であるのは彼女の発言から間違いは無い、

だが、バズーカ砲も地雷も瞬間移動の装置も、全てにおいて“共通点”があった。

そしてその気付きに辿り着けたのは術者の麗奈はおろか、卯月のみ、

さらに確信にまで至ったのは当然、彼女だけ。

 

ドオォンッ!! ドガァンッ!!

 

「く……!」

「アイツ撃ちすぎだぞッ! これじゃ卯月のところまでも……」

「しまむーは!?」

「大丈夫、撃ってるって事はまだ向かってるはず……でも」

 

時間の問題、三人が感じる危機を前に救助へも向かえないもどかしさ。

それでも――白煙の中を走る卯月には確証があった。

決して、この大量に飛来する砲撃のただ一つも

 

 

自分に被弾する事はない、と。

 

 

「なによ、なんで全部避けられるのよ!! ぐ……もうこんなに近づいて……」

 

ダンッ!

 

「やああっ!!」

「仕方ないわ、この距離なら……先に当ててやればいいんでしょ!?」

「卯月! 跳んじゃ駄目!!」

「ばっ……馬鹿ね! 恰好の的よ!」

 

高い跳躍で麗奈へ向けて急接近するのは問題ないが空中で軌道修正は、もう叶わない。

真正面から動きの予測が簡単な卯月が向かってくる、

動揺しつつも麗奈は構えたバズーカ砲、その発射口を正確に彼女へとかざし

 

「喰らいなさいッ!!」

 

ギリリと引き金が絞られる様子が見える位置、それでも――卯月は前へ。

 

 

 

カチッ

 

「ッ…………!」

「……あ、あれ? 弾が出な――」

「やぁっ!!」

 

バキィッ!

 

「わっ!? ちょ、危な……」

 

卯月が攻撃したのは麗奈本人ではなく、彼女が足場としていた木の枝。

突如地に足が付かなくなった麗奈は重力に従って遥か下の地面へと

 

「あだっ!!」

 

身長の三倍以上もの距離を垂直にバランスを崩したまま落下、

とはいえ着地の衝撃で大ダメージを負うような高さではないだろう、

しかし一方で完全な無傷もあり得なかった。

 

「ぐぅ……ハッ!? あ、アタシのレイナサマバズーカは――」

「これの事?」

 

「あっ!? か、返しなさいよ!」

「騒いじゃダメ……うっかり撃っちゃうかもしれない」

「なっ……こ、こっち向けないでよ!」

 

攻撃の矛先が卯月に向いている間に接近していた凛は

隙を逃さずに麗奈の武器を奪取、逆に抑止力として利用する。

破壊力を最も知っている麗奈は当然、外しようがない超至近距離の銃口を向けられれば

大人しく両手を上げて無抵抗の意思を見せざるを得ない。

 

「凛ちゃん、それを下げてください」

「卯月、本当に撃ったりなんてしないよ」

「そうじゃありません」

 

「そのバズーカじゃ、相手に攻撃は出来ないんです」

 

 

 

「は、はぁ?」

「え? ……卯月、どういう事?」

「言った通りです。麗奈ちゃんが作る武器じゃ、私達は大きなダメージは受けないんです」

 

卯月の口から発せられた内容に、凛は当然、武器の所有者であるはずの麗奈も困惑する。

自ら製作した強力な武器が、まるで役に立たない宣告を受けてしまっては動揺もしてしまう。

何より、麗奈は夕美から得られた力の説明をされていた、だからこそ

 

「そんなの聞いてないわよ! アタシは好きな道具を作れる力って!」

 

言われた通り、望めばそれに近いものが生み出された、

一度に出現させられる道具の数にこそ制限はあったがバズーカも地雷も

試し撃ちやテスト段階で、満足した結果が得られていた、それなのに肝心要の本番では――

 

「本当に、望んだ道具が……作れていますか?」

 

思い返せば、麗奈の数々の道具は一向に正面からの戦闘を躊躇わさせるには

十分すぎる第一印象を与え、実際に凛はそれらに苦戦していた。

だが、こうして半ば決着がついた状況に追い込んだ時の凛の姿は至って万全、

どこにも大きな負傷を抱えずに佇んでいる。

 

「麗奈ちゃんの敵を木っ端微塵にするバズーカ、踏んだら即吹っ飛ぶ地雷、

 それと……相手に見つからず、気付かれずに移動する装置でしたよね」

「……あれ?」

「凛ちゃん、気付きましたか?」

「何よ、それがアタシの武器と道具! 見たでしょ、この威力を!」

「……そうです、威力は本当に強かった。でも、違うんです」

 

「麗奈ちゃんが言った、この道具の使う“目的”を、何一つ達成できていないんです」

「目的? 目的なんて……アタシはアンタ達を倒そうとして――」

「違う、出来てないんだ……倒すことじゃなくて、道具の役割を果たせていない!」

 

バズーカは大木や地面を穿つ大爆発を何度も引き起こして見せた、

しかし麗奈が求めていた“敵を木っ端微塵”には出来ただろうか?

地雷を踏んだ凛は即座に全身を吹き飛ばされるようなダメージを負ったか?

そして瞬間移動の装置は、その移動先を看破される事無く静かにワープできただろうか?

 

「その能力は、望んだ道具を作る事は出来ても……望んだ通りに使えない、そんな能力です」

 

 

 

「…………」

 

ぽかんと開いた口は、卯月の言葉を信じられないと言った様子がありありと伝わる。

が、彼女の発言を疑おうにも心当たりがありすぎた、信じざるを得ないそれぞれの挙動、

なぜ大量に放ったバズーカのただ一つも相手に命中しなかったのか、

外しようがない標的を目前に不発という不具合が出てしまったのか。

 

「そんな、聞いてないわッ! あいつはアタシに――」

「言わなかったのは、その方がうまく動いてくれそうだったからじゃない?」

 

知ってしまえば、酷く扱いが難しい能力である。

上手く扱おうとすると、これらの道具は全てブラフにしかならず

直接攻撃のぶつけ合いではなく心理戦、恐らくはこの少女に向いていない戦術が必要、

それならば詳細を知らせぬまま堂々と攻めさせた方が脅威となるだろう。

 

「だから私は、思い切って一直線に進みました。……当たらないと、分かったので」

「ぐ……うぅぅ……このレイナサマバズーカ、何の役にも立たないクラッカーじゃない!

 この地雷だって、ただの派手な爆竹レベルよッ!」

 

隙を突いて反撃するつもりだったのだろうか、

隠し持っていた地雷――恐らくは、殺傷能力が皆無なそれを

手の内がバレている相手に対して使い、場を切り抜ける作戦が思いつかなかったのだろう、

ヤケクソ気味にガシャンと放り投げ、地面へ仰向けに倒れ伏す、決着がついた瞬間だった。

 

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