島村卯月冒険譚~この世界で平和を取り戻す~   作:アカツキ=ニュー

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招待

「凄い……」

「こんなにすぐ能力を見抜いて、はぇぇ……」

「慣れたものですよ、何度もありましたからねぇ最近は」

 

みくを抑え込み、春菜の観察眼に助けられこの場を切り抜けた卯月一行、

このような対処は初めてではないらしき春菜だが、それにしても卓越した技術である、

巨大国家幹部級の肩書きは伊達ではない。

 

「ですが、一番危険な前線を皆さんに放り投げてしまったのは申し訳ありません」

「いえいえ、こちらこそ助けていただいて……」

「ウチは大丈夫だ、頑丈だからなッ! ……で、みくは大丈夫か?」

「ええ、今は眠っていますが目が覚める頃には――」

「……覚めているにゃ」

 

加減していたのか、本人の回復力か、拘束されたみくから早くも返答が届く。

が、今までのような無機質な言動ではなくしっかりと感情の籠った、

しかし明らかに自身の行動を省みた沈む調子の声で

 

「大丈夫……? ほんとに、みく?」

「……そうにゃ、美玲チャンの知ってる、前川みくだにゃ」

「よかった……元に戻ったんだな……」

 

つまり、先程までの異常な状態ではない、

早坂美玲のよく知る前川みく、村を統べる長のものであった。

 

 

 

「これも、誰かの“能力”?」

「いえ――」

「いや――」

 

返事は二人から、事を収めた春菜と、卯月から。

 

「卯月も何か分かったの?」

「そういえば卯月ちゃん、あなたからは他の二人よりも強い魔力を感じますね、

 きっと魔術に関する知識はあると思いますが、感じ取れましたか?」

「はい……少し、気付くのが遅かったですけど」

 

「あれはきっと能力じゃなく、人の行動や意識を操る催眠状態です」

「そんな便利なものが?」

 

魔術が広く伝わった世の中、しかしこの種類の魔術は

難度や成功率の困難さに比べて得られる効果が想像よりも低いという点で

選択肢として浮かぶ事はまずない、教科書通りの知識を持つ卯月は特にそう思い込んでいた。

 

「催眠や暗示の魔術を掛けるのは……かなり難しかったはずで……」

「みくは猫の“獣人族”にゃ、みく達は魔法なんて全然分かんないし、

 耐性なんてとーぜん持ってないにゃ、野生児なもので」

「……だそうです、掛かりやすいって事ですね」

 

しかし“掛かりにくい”というだけで、術中に落とす事は可能であり

対象が魔法に縁もゆかりも無い人物ならばなおさら、

対抗手段を知らない相手を罠に嵌めるのは容易である、

このあたりの発想は“経験不足”が卯月の気付きを遅らせた。

 

「もしくは、みくちゃんに掛けた相手がかなり高度な幻術使い、かもしれませんね」

「そんな未知の難敵、まったく無関係の人を巻き込んでまで集めようとしているモノ……」

 

 

 

「もうお察しの通り、ここに格納されているのは皆さんが探しているモノです」

 

やや非効率な手駒の増やし方を取らざるを得ない程に奪い合いは苛烈を極めている、

もしくは“奪い合い”に参加している実力者の高い練度が垣間見える一幕、

どちらにせよ卯月達にとって、そして春菜にとっても喜ばしい事ではない。

 

「こんな大きな国から横取りしようと考えている人まで出始めているなんて……」

「簡単に奪えるつもりでここへ来たのなら、大きな間違いですけどね」

「……確かに、この保管庫とか、かなり硬そうだもん」

「我が国の技術は素晴らしいんですよ? 保管の方法もですが収集の方法も、です。

“発芽”したものを奪う事はさすがに出来ませんが、まだ眠っている、

 いつの間にか体内に宿った種子を回収する技術は確立しています」

「えっ?」

 

異能の種子は、発芽してこそ能力が開花する、

夕美が持っていた不完全な種子も同様、これは変わらない。

体に種子が宿っても花を咲かせる才能を持たない者もいる、

その場合は体内で無害なまま種子は留まり、開花か摘出の時を待つのだが

春菜たちの国家は独自技術によりそれらの回収を可能としていた、らしい。

 

「まぁ、貴重な装置が壊れてしまったので、修理が完了するまで不可能ですが」

「……申し訳にゃい」

 

その手段が例の国家入口の検問というわけだ。

しかしみくの強引な突破――“能力”や“種子”などのキーワードを発言した人物へ

攻撃するよう暗示が掛かっていた際、その装置が対象に反応してしまい攻撃対象に、

手元の機械を破壊後は装置が“回収した種子”を輸送する先である保管庫へ矛先が向き

みくがひたすら倉庫へ反応を続けていたのはコレが原因だったようだ。

 

「なるほど、正気でなかったならばあの行動も頷けます」

「魔術って難しいんだね、しまむー」

「はい……」

「たいした理由も無く、目立って仕方のない強行突破を私の前でするなんて」

 

「それで、あなたがそうなった原因の犯人が知りたいのですが、まぁそう簡単に尻尾は――」

「覚えてるにゃ」

 

肝心要の情報は、意外にもみく自身が覚えており

 

「でも、見た目と顔だけ、名前は分からないにゃ」

「……十分ですよ、むしろ手がかりがある方が驚きです」

「みくと同じ、獣人だったにゃ……だから招いたのに、迂闊だったにゃ」

「ほう」

 

美玲、みくと遭遇しているためにそうは感じないが

獣人族は決して総人口が多いわけではなく、ある程度の知恵と技術を持っている者となれば

余計に“アテ”は限られる、そういった意味では種族が判明した点は情報として大きい。

 

「他には? 見た目の特徴もだけど、その中でも特に! みたいな」

「とにかく、白かった……っていう印象」

「白……? どゆコト?」

「なんていうか、気配とか……わかんにゃいけど、頭に残ってるにゃ……」

 

 

 

あらかたの情報を聞き、それ以外の話も多少はやり取りしたものの

春菜側、国家の被害は一定数、機械の損害があるがみくは被害者、

必要以上に問い詰める事は無かった。

 

そして次に、卯月一行が春菜に説明を始める段階、

なんだかんだで共同戦線を組み、みくの誤解を解く仲裁にも入った、

が、肝心要の“種子”に関する話題は深く行えていない。

 

「……さて、ここまで深く内情をお話しました、ちょっと一方的でしたけど」

「ええと……春菜さん」

「今度は、そちらが知る情報も詳しくお聞きしたいのですが……場所が悪いですね」

 

どこから説明すべきか、そもそも信用してくれるのか――諸々の心配事はあった。

しかし先に話し始めた春菜側から提案が、そしてその内容は予想外なもので

 

「出来れば安全な場所でお話をしたいと思っています、招待されてくれませんか?

 当国家の中枢、本部……あの建物の中へ」

「……えっ?」

「色々と私に説明をされる予定だったのかもしれませんが……

 こちらも一つ“事情”が出来まして、お互いの目的が一致したのですよ」

 

急すぎて怪しい話かもしれませんが、とも付け加えて春菜は卯月達を

いきなり諸々の段階をすっ飛ばし、直接国家中枢へと招待したのであった。

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