島村卯月冒険譚~この世界で平和を取り戻す~   作:アカツキ=ニュー

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第八幕 - 武神 -
第二の英雄


「あの」

 

トントン拍子に進んだ話、事情を話す前に招待された中枢への道すがら、

どうしても解決しておきたい疑問を思い切って春菜へとぶつける。

 

「ありがたい話なんですけど、どうして急に?」

「皆さんを招いた事ですか? それは、協力していただけたからですよ」

「確かに協力はしましたけど……」

「……というのはカタチだけです。……本当は、“上”から連絡がありました」

 

もう“隠す”必要が無かったのか、やはり裏側にあった真意へと春菜は触れだした、

とはいえ口封じなどの物騒な話題ではないらしい、あくまで招待の理由が

卯月が自分自身を説明するよりも早く、信頼に足るものであった、

故に一行から身分証明を待たずして踏み切った――というものだ。

 

「重要な来客の方が、あなた達の中に見覚えのある……間違いなく知っている人物がいると。

 その人が、あなたに会いたいからと是非、ね」

「私達に?」

「……しまむー、しぶりん、外にお友達とか知り合いとか居るの?」

 

要約すると『一行が危険人物でない』と証明できる人物からの招待、

それも国家本体でなく国家と縁が深い人物からの提案、ならば無下に断る事も出来ないだろう。

さて、ここで問題があるとすれば一行である卯月たちに、

そんな権威ある人物の心当たりが皆無な点だ。

 

「いえ……こんな大きな国と関わっている人なんて、居ないです」

「私も」

「……じゃあ、私達はいったい誰に招待されてるの?

 私達三人の中で、誰にわざわざ会いたがっているの?」

「会いたい相手というのは……うーん、私は少し半信半疑なのですが」

 

 

 

「十時愛梨、さん」

「えっ?」

 

春菜の告げた名前は、本人も恐らくは“分かっていない”まま口に出したのだろう、

視線を向けた先は卯月、つまり愛梨の名を告げたものの当人の存在を感知できていない。

それもそのはず、愛梨が身を隠しているのは卯月がそれとなくただの荷物のように抱えている

一冊の本、その内側なのだから、知らずにピタリと当てられるはずがない。

 

「まだお目にかかってはいませんが……“居る”そうですね?」

「ど、どうして――」

 

だが実際に名前を出された、十時愛梨が卯月一行に付いていると知っている者が、

卯月たち――いや、十時愛梨を呼べと春菜へ間接的に連絡を行ったのだ。

疑問も当然、どうして存在を感知できたのか、まさか早くも存在がバレてしまったのか――

 

「はは、そりゃすぐに分かるよ。愛梨が大事に持ってたモノ、あんた達が持ってるじゃないか」

 

 

 

「えっ、誰――」

「隙あり!」

 

――ヒュンッ!

 

「きゃっ!?」

「っ、卯月!?」

 

素早い、というよりもあまりに突然現れて即座に迫った人影、

状況を理解するのに頭を働かせるのが限界な所を突いた“上手い”戦法であった。

 

「……あ、あれ?」

「大事なモノはきちんと抱えておかないと、って教わったんじゃない?

 ま、ちょっと本気で奪いに行ったつもりだから阻止される気は無かったけど」

「……!? そ、それ! 返してください!」

 

奪い去るつもりなら、とっくに消え去っていると掠め取った本人の談、

やや背丈の高い謎の人物は明るい口調で諭す。

どうやら普段からこの調子のようで、春菜は彼女を警戒してはいない。

 

「あたしが君達を呼んだ、怪しい者じゃない……ってのはあたしが言っても信用できないよね」

「……第一印象が最悪ですね」

「あはは……いや、ちょっとどんなものか確かめてみたくなって」

「んー……ひとまず、この方は怪しい人物ではありません、私が保証します。この方は――」

 

――カッ

 

「わっ!?」

「きゃっ!?」

 

閃光は、卯月の目の前から発された。

しかし卯月も閃光に驚き、声をあげている、つまり彼女の仕業ではない。

 

 

 

「なぜ……あなたがここに居るかは分かりませんが」

「――お?」

 

謎の人物が卯月の手から奪取した経典――を、さらに奪取し、

数歩ほど先の位置に噂の彼女が現れた、十時愛梨だ。

まるで先程と同じ、一瞬の隙を生み出しつつ丁寧に突いた奪取、

再び経典は卯月たち――愛梨の手に戻る。

 

「卯月さん、もしかするともう分かっているかもしれませんが……

 あなたが“経典を奪われた”事を悔しがったり、情けなく思う必要は皆無です」

「…………」

「卯月?」

「しまむー…………あの人は……誰なの?」

 

「はは、あたしも少し有名だからね」

「少しで済むでしょうか?」

「昔ほどやんちゃじゃないつもりだし……それで、自己紹介は、しなくてもいい?」

 

 

 

上着の内側に、独特な薄手の生地により作られたと思わしき衣服、

そしてこれ見よがしに背負われた長槍――

彼女を知る者が、真っ先に“彼女”であるとイメージ出来る獲物であった。

 

「愛梨さんと同じ“英雄”の肩書きを持つ戦士……西島 櫂さん、ですね?」

「そう呼ばれてるよ、今はただのフリーランサーだけどね」

 

世界を救った英雄その五人に名を連ねる、魔術の達人十時愛梨と真逆の位置に立つ、

武芸の達人、西島櫂だ。

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