島村卯月冒険譚~この世界で平和を取り戻す~   作:アカツキ=ニュー

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矛先

「愛梨、あんたが姿を消した時、絶対に戻ってくるとは思ってた、

 それも確実に準備万端、姿を消した目的は達成した状態でね」

 

共に戦場を駆けた信頼、何らかの障害を前にしても姿を消し、逃げる人物ではなかった。

事実、愛梨は戻ってきて卯月達という新たな戦力を発掘しスカウト、功績と共に帰還した。

――だが、愛梨を取り巻く環境が全て、櫂と同じように彼女を待っていたわけではない。

 

「消える時と戻って来る時じゃあ事情が変わってる、

 せっかく見つけた逸材を、使う舞台へ送り出せないなんて馬鹿な真似も起きる」

「…………」

「だからあたしが代わりに待ってた、愛梨が帰ってくる場所を用意して」

「我々も協力者は欲しいのです、そんな時に打診があったのが櫂さんでした」

 

春菜サイドも櫂を味方――後に合流する愛梨とも協力関係を築ける可能性がある案、

大きな国家に幹部という強力な人材が数多く存在しても、さらに多いに越したことはない、

こうして縁を結んだ櫂の元へ届いた“十時愛梨の接近”の報、

実際に接近を感じ取ったのは櫂だが、こうして対面したのだ。

 

「ありがとうございます」

「で……あたしは用意した、その用意したものをどう使うかは自由だよ、

 言っちゃあなんだけど、この国も“あたし”じゃなく愛梨が本目的だろうし」

「んー……正直に言いますと、そうですねぇ……

 あ、いえ、櫂さんも戦力として非常にスカウトしたいところなのですが」

「残念、あたしは組織に縛られたりするの、あんまり好きじゃないんだ」

 

口ではそう告げるものの、櫂とて戦闘力に自信はあっても権力には身動きが取りづらいもの、

一時でも間柄を築けた実績は大きい――そして、その“縁”を、やはり彼女は求めていた。

利用といえば聞こえは悪い、お互いが相互に協力して全員が利益を得られるための同盟だ。

 

「で、あたしの本題……あたしの目的の話」

 

 

 

「一番最初に狙って欲しい“種子”がある」

 

真っ先に計画の立案人となっていた櫂が、やはり最初の目的を話す。

そして連鎖的に、告げられた単語が愛梨含む卯月達ないし春菜にも関係性を紡いだ、

種子と言われてしまえば、耳を傾けざるを得ない。

 

「誰かも、何が能力かも分かっているのですか? そのターゲットは」

「分かっているよ。 ……ただし、ほぼあたしだけが知ってるんだけど」

「?」

「つまり本人は隠しているってコト」

 

「そこまで情報が分かっていて、どうして櫂さんが向かわないのですか?

 戦闘事なら得意ですよね? 手の内が分かっていて強敵ならなおさら――」

「それ、あたしに聞く?」

 

櫂の反応で、愛梨は察した。

彼女は戦闘のスペシャリスト、特に強者と戦いは望むところである、

そんな櫂が戦いを避けようとするのは有り得ない――つまり、戦う相手ではないのだ。

 

「救出……ですか」

「ご名答。ね? あたしじゃ向いてないでしょ?」

「櫂さんが助けたい人……そんな人が?」

「心外だなぁ、あたしも人の子だから助けられた話なんていっぱいあるよ?

 今回の子はその中でも特に……ま、恩をキチンと返さないといけない相手なんだ」

 

 

 

「話は理解しましたよ櫂さん、で……その話を、我々に依頼しなかった理由は?」

 

傍らで眺めていた春菜が割って入る。

愛梨の到着を待たずとも、種子の回収という話はさておき

恩人を救出というミッションならば、国家の後ろ盾を持った櫂の方がスムーズなのでは?

春菜の疑問ももっともであったが

 

「……相手が悪いから、かな」

「それは我々が動いても説得や介入が困難な相手なのでしょうか?」

「むしろ、あたし個人よりも面倒になると思うよ」

「ほう?」

 

実力や人員も揃う櫂と春菜達にはこなせず、

まだ名も知れていない卯月一行のが最適役となるのか、

その条件が満たされる特別な相手とは、いったい誰なのか。

 

「あたしの依頼は、とある“貴族”が囲っている子供の救出だよ」

「貴族、ですか……?」

 

 

 

貴族とは明確な官位ではない。

複数の国に分かれた今、統一された権力を持った地位など無いに等しい、が、

それでも貴族と呼ばれる地位が完成したのは、ひとえに全国共通の力を持っていたから。

 

「なるほど……貴族、貴族の方がターゲットですか……」

「ね? 国からじゃ、狙いにくい相手でしょ? もちろん国と直接関わったあたしも」

 

その力とは、財力である。

どの時代にも経済力の援助は強い手助けとなり、国家でさえ後ろ盾が貴族の資金という例も

少なくは無い、むしろ当たり前のように提携している。

 

もちろん、この国も例外ではない、特に大きな国家は特に多大な資金が必要だ、

人材を雇うのも管理するのも、戦いの準備にも須らくマネーは多ければ多いほど良い、

その資金源として“援助者”となった貴族は多かった。

 

「なるほど。つまり櫂さんは、私達の“身内”に狙いがある……と?」

「危害を加えるつもりは無いよ、もっと平和的なギブアンドテイクだって」

 

貴族の所有物を奪うと、その大小関わらず犯人として特定された暁には目を付けられ、

持ち前の資金源と“国家へ口を出す”事で、最終的には大罪扱いになるだろう、

そういう意味でも櫂自身が実行するにはリスクが高すぎる、

春菜はなおさら不可能だ、自国の財政を握っている人物に交渉を行うなど、分が悪い。

 

「“貴族”に春菜や櫂さんが手を出しにくいのは分かった……でも、

 だからって私達なら大丈夫っていうのは、どういう事?」

「それは簡単、実は切り込む口は向こうが作ってくれているからね」

「?」

「その貴族が出している、とある依頼を受けて欲しい。

 どうやら今度、ちょっとした事件が起きるらしい、その警備協力としての人材募集にね」

 

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