島村卯月冒険譚~この世界で平和を取り戻す~ 作:アカツキ=ニュー
「依頼の内容とは、ある予告に備えた警備です」
「……あれ? どうして春菜さんが知っているですか?」
「それは本来、国に届いていた依頼だからだよ」
頭を掻きながら割って入る春菜、どうも複雑な事情を抱えていたのは彼女たち国家のようだ。
話を聞けば、確かに“この話全体”の主導は櫂だ、
そこから自身の目的のために連結させた別の問題が、春菜と卯月たちであった。
櫂は自身の目的である少女をその貴族から奪還出来る。
春菜たち国家は、その貴族が発注した無茶な依頼にかける手間を減らせる。
卯月一行は、結果的に以上二組の支援を受けつつ種子の回収作業を行える。
―― 三方に得がある、上手い話だ。
「本来は我々がこなすべき依頼なんですよ、依頼者が胴元ですからねぇ。
普通、いかに貴族でも国へ直々に声を響かせる相手なんていないはずなんですけど」
「いつも資金提供しているから、こっちのピンチに手を貸せって事」
「ま、そんな困ってた依頼を……櫂さんがうまくご自分の都合に合わせたって事です。
私達も櫂さんも、卯月さん達も得になるよう利用してしまおう、と」
「この国は大きいからね、いろいろ援助や支援してもらわないと
幹部だけじゃあ見て回れない管理できない事も多い、そこに付け込んで来たのさ」
「別に悪い事ではないんですけど、こういうお話を断り辛いのです、国の立場としては」
「なるほど、いつもしぶりんからお菓子を貰っているしまむーが、
『いつもお菓子あげてるでしょ』って理由で、おつかいを頼まれたみたいな」
「そ、そういう事でいいの……?」
「だったら断るのは難しそうですね……」
(あ、それでいいんだ)
そして問題は根幹へと言及される。
受けるべき依頼があるのは分かった、ではその依頼内容である警備とは何か?
依頼を受けて、達成する事の報酬が何故“人助け”になるのか?
「予告って、何ですか? まさか『今から襲撃します』なんて予告は――」
「それが、その言葉通りなんですよ」
「えっ?」
「依頼者の貴族一門へ届いた“予告”、その予告が届けられた者には……義賊がやってくる」
「義賊?」
「弱きを助け強きを挫く、権力財力の潤沢な貴族から富を奪って民衆に配る盗賊団です」
聞けば、予告とはずばり予告状、
国家を裏から支える貴族を“強き者”とし、財を徴収しに行くと言い放った一派がいるらしい。
確かに春菜が手を焼き、櫂が間接的に攻撃の対象と定めた一族だ、
こうしてそのような集団から狙われる事になるのは、さもありなんといった所か。
「……いい人たち、じゃないの?」
「難しいところですねぇ。ま、正義か悪かの議論は置いておきましょう?
仮に結論が出たとしても民衆は“善”と判断する人の方が多いのが事実……
そうなると狙われた貴族の方々に付く警備の人材なんて、探せないんですよ」
「だから国に泣きついてきた……っていうか、利用しに来たんだね」
善が“悪”と認定した組織を守るための人材を“善”の側から確保するのは難しい、
そこで貴族は断れない縁を持っている春菜たち国家へと打診したのだ。
前述の通り、国はこの依頼を断れないし受けにくい、
そしてギリギリ譲歩できる丁度よい妥協点が、外部の人間の紹介する程度、
卯月達が介入する枠だ。
総合すると、依頼を出した方も切羽詰まっている事が分かる、
何せ他にアテが無いのだ、断られる心配こそ無用かもしれないが
最終手段に近い、なるべくならば切りたくはないカードだったはず――
「ま、だから結構な報酬見返りを用意しても通ると踏んでいる。
……例えば『人間を一人、要求する』なんて交渉も、ね?」
逆に、そこへと付け込む。
『無理難題を受け付けたのだから』と、春菜がようやく探した適材である卯月一行は
貴族へ一見無茶な要求を通してもらう――櫂の作戦だ。
櫂本人が出張って警備を行ったのならば、こうはならないだろう、
そもそも櫂が受ける仕事としては“英雄”の肩書きに、まったく相応しくない。
「櫂さん……」
「ん、何かな愛梨」
「……いえ、結構です」
「なるほどなるほど……部下を渡せって事かな?」
「櫂さん、その要求する人って、立場とかは? 偉い人なの?」
「いいやぜんぜん、だから余計に通りやすいと思うよ」
財力だけでなく、動かせる人員も豊富、
無数の中からたった一人を引き抜くのは不可能な話ではない。
多少は無茶でも、元々無茶な依頼をぶつけたのはあちら側なのだ、交渉の余地はある、
もしかすると『なんだそんな事か』と、簡単に引き抜けるかもしれない。
「相手の情報とかは私達が教えるよりも、現地で依頼主の話を聞いた方が確実だよ。
下手にあたしが知っている事を伝えすぎて、あたしと繋がりがある事を悟られたくないし」
義賊とは何者か、という疑問には回答が来なかった、
あまり正確な情報を持ち過ぎて卯月たちが只者ではないと勘付かれ、
さらに背後に控える作戦が気付かれるのは避けたいところ、らしい、
あくまで『必死で探し回って、なんとか用意できた人材』に留めるのだ。
「緊急事態や依頼の失敗を懸念しているなら、そこは春菜がサポートしてくれる、
だって本来は国に向けた依頼なんだ、三人は『国が用意した人材』として任務に就く、
その三人が失敗すると国の面目が潰れるから――」
「ちょっとそれは卑怯な言い方じゃないですか?
いえ、嫌ではないですし、もちろんご協力は致しますけども……」
「とにかく、仕事に完璧は求めない、むしろ粗があって十分、
そういう意味では……悪い話じゃあ無いと思うよ、愛梨」
「……卯月さん、構いませんか?」
どちらかと言えば、これは卯月達が望む行動指針ではない、
櫂が、個人的に愛梨へと向けた依頼だ。
愛梨は一度、三人に答えを求めた、この仕事を――受けてもらっても良いか、悪いか。
「受けましょう、愛梨さん」
「私達は構わないよ」
「うん……色々複雑で分かんない事も多いけど、やらなきゃいけない事なんだよね!」
「ん、そっちの三人は乗り気?」
「櫂さんじゃ出来ない事なら、私達で……!」
「……皆さん、ありがとうございます。
櫂さん、春菜さん、答えは出ました……その話、私達が担当しましょう」