ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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第10話

 ヤマダは何もやる事がなければダンジョンに潜り、夜には豊穣の女主人に行ってリオンに会いに行く。もう既にダンジョンに行くのは習慣。朝の散歩みたいなものだ。

 今日はラスボスが居る層まで行くことにした。

「リスポーンしてっかな?」

 何もない空間にヤマダは転移する。

 周りを見渡してみるが、何もいない。

 魔界のモンスターは倒されても復活が速い。

 基本的に階層主は7日という期間に壁から生まれて来る。最短だと1日。これを冒険者が聞けば有り得ないと信じない。雑魚? 種類によっては無尽蔵にモンスターが生まれる階層すらある。

 ラスボスを倒してから既に7日以上たっているはずだが、未だに生まれていないことに疑問に思う。

 もしや、もう生まれないのではないのかと考え自分一人の空間が嫌に寒く感じる。

 まるでこの世の終わりとはこういう風景を言うのではないのかと漠然と思う。

 ロキは神々の黄昏を起こそうとしたこともあったらしいが、実際にやって天界が終わった光景を見たらどう思ったのだろうと考える。

 少なくとも最初にダンジョンの果てまで来たヤマダは、やっとたどり着いた。そして今は、こんなもんか。

 マンネリ化してしまえば、感情は薄れてしまう。

「そう言えば物語の勇者ってどうなるんだろうな」

 ヤマダは昔読んだ世界支配を目論む魔王と、それを阻止するために戦う勇者の物語を思い出す。

 ありきたりな内容で、省略するが『魔王を倒してめでたしめでたし。勇者は幸せに過ごしましたとさ』で物語は幕を閉じる。

 その勇者の『幸せに過ごした』と言うのはどういうことなのだろう。

 何処かの国のお姫様と結婚でもしたのだろうか?

 それとも暇になって、田舎でゆったりと年老いていったのだろうか?

 ヤマダは勇者でも、英雄でもない。

 だが、魔王と勇者の関係はヤマダにも適応される。

 世界を平和にしていないがラスボスを倒した。

 故に物語の次のページ。

 勇者は、幸せな生活に歩き出した。

 では、自分は?

「進展なし。ラスボスが復活するから停滞してたんだよなぁー」

 まるで、物語のページを読んで、気になるところを読み返し続けるような行為。次巻が出るのはいつになる事か。

「もう、ずっとこのままなのか……?」

 ラスボスを倒して、ヤマダは―――。

「ヤバい。金を生む奴が居なくなった!」

 結構俗世に染まって、金の心配をした。

 

 部屋に転移したヤマダだが、やる事もなくベットの上でごろごろと転がる。

 部屋の中には悪魔たちから手に入れて知識を書いた本がある。薬草学、天文学、占星学など様々である。もう、悪魔たちの知識は未来だけを除いて本に書きだし終えた。

 暇つぶしにやってみたが、書籍と言うよりは学生レベルのノートになっており、所々落書きや箇条書きで終えている部分もある。それでも専門家からしたら、喉から手が出るほど貴重なものには違いない。

 ヤマダにはこの本を売る気はない。

 別に与えてもいいのだが、何せ悪魔の知識である。

 人間にとってどんな影響を与えるか分かったものではない。

 中には詠唱を必要とせず放てる魔法の使い方、魔法の制限の上限を無くす裏技すらある。

 これを魔法大国アルテナ、戦争好きなラキア王国に知れたらどうなる事か。まぁ、なったらなったで仕方がないのだが。

 暇つぶしに復習でもするような感覚の物が、戦争を引き起こしかねないと言うのは何とも、迷惑なことだろう。

「こういうの『蟻の一穴天下の破れ』……だっけ?」

 なんとなく、ヤマダのように部屋に転移してきた黒いローブを被った人物に声を掛ける。

「最強の冒険者が開けた穴だ。蟻ではなく竜の穴になるのではないのか」

「でも、燃やす気にはなれないんだよな。なんでだろ」

「自身が作り上げたものだ。丹精を込めたものであれば失うのは惜しいと考えるのだろうな。私のように」

 自身に何か含むこともあったのだろう。しかし、彼は目の前で作品を壊された訳だが。

「ふーん。で、賢者が俺に何か用?」

「クエストを託したい。24層のモンスターの大量発生を調査、鎮静してくれ。今回は調査の為に協力者も居る」

 実はヤマダの実力はギルド、もっと厳密に言えばその主神であるウラノスにばれている。

 ダンジョンを鎮めるために捧げる祈祷。

 ヤマダが持ち帰る未だ発見されていないドロップアイテムや高価な魔石。換金していれば、疑問に思って当然。

 そして、ヤマダの中に居る悪魔に目を付け、問われた。

 モンスターと人の共存は可能か、と。

 ヤマダは、まず支配して自身が格上だと示すことで、関係を構築したので共存とは違う。また、理性を持ったモンスター、悪魔の中にも性格がやばい奴もいると答えた。 

「それって冒険者? それとも異端児?」

「冒険者だ。先程、剣姫とヘルメスファミリアの団員にも依頼した」

「……一々記憶を消すのも面倒なんだが。ってか、そんだけ居るのなら俺は過剰戦力だろ」

「それだけ急を要する。また、これ以上好き勝手をさせる訳にはいかないのだ」

「……わかったよ。あー、面倒だ。適当にモンスター蹴散らすし、結構暴れると思うけどその辺ギルドの方で誤魔化せよ」

「承知している」

 ヤマダはベットから跳ね起き【ゼパル】を身に纏う。

 赤のフルプレートアーマーとマントの姿をした悪魔【ゼパル】。禍々しく燃えるような鎧を模っているが、その姿は陽炎のように歪み認識しづらい。

 【ゼパル】には認識を阻害する能力を持つ。

 視覚、嗅覚、聴覚、感覚、六感、記憶などの情報を惑わし正体を分かり辛くする。簡単に言えば濃い霧で人影は見えるが顔が見えないようなものだ。

 【ファラス】のように完全に姿を消してしまうと協力者と会った時、連携が取れない恐れがある。まぁ、ヤマダはするつもりがないが。

「じゃ」

「頼む」

 【セーレ】を手に持った真紅の鎧の騎士は、一気に24層まで転移した。

 

「さてと」

 いきなり植物の蔦がダンジョンの壁を覆ている所に転移する。まるで血管のように廻っている。

 しかし、24層はあまり来ないがこんな風景だったかと首を傾げてしまうヤマダ。

 【セーレ】を戻し、【フルフル】に武器を変更する。

「適当にぶっ放すか」

 象牙の色をした巨大なランスの刀身が二股に分かれる。

 そこからヤマダから大量に流入される魔力が雷撃を生み出し、無造作にダンジョンの壁を突き刺した。

 一筋の光となった雷撃は無理矢理に通路を作る。

 高熱で焼かれた通路は融解してぽっかりと穴が開き、ジュウジュウと香ばしそうな音がする。

「さて、釣れるか?」

【釣り……?】

【ツ リ ?】

「大きな音を出したら何事かと出てくるもんだろ」

【家の窓を割った強盗犯のような気がするがな】

 ヤマダが言った直後、下から蔓が伸びる。

 それは先端に肉食植物のような、二枚貝の口に棘が並んだような植物であった。

 大きさからして人すら飲み込める植物が、目の前を覆い隠すほどに殺到する。

 全てヤマダに向かってその口で捕食しようとするが、無造作に振るわれたランスで叩き潰された。

「……全く歯応えがねぇ」

 まるでその辺の草を薙ぐように、呆気ない。

 LVからすれば仕方ないがあんまりだと思うヤマダ。

「ゴブリンと何が違うんだっていうんだよ」

 しかし、無尽蔵に湧くらしく、次々とヤマダに向かって来るが数の一手しかしてこない。その度に【フルフル】で薙ぎ払う作業をしながら、植物が出てくる方向に向かいだす。

 

 あれから植物は雪崩のようにして襲ってきたが、全て返り討ち。

 いい加減飽きてきたところで、人の気配が背後にあるのをヤマダは感じ取る。

「お、第一冒険者発見」

 殺気を抑え、不意打ちを仕掛けて来る女性の攻撃を躱す。

「!?」

 完全に隙を突いた攻撃を躱されたことに警戒して距離を取る赤髪の女。

「単刀直入に聞くけど何やってんの?」

「さぁな」

 赤髪の女は構えながら距離を十分に取ったところで、地面に手を刺し、長剣を引き抜く。

「おお、面白いことするなアンタ」

 ヤマダがやる気のない拍手を送くろうとしたところを狙い、剣を構え跳躍してしてくる。

 ヤマダはその攻撃に避けるわけでも、防御するわけでもない。

 ただ、腕を振るい【フルフル】を蠅叩きのように扱い、赤髪の女性をダンジョンの壁に叩き付けた。

 長剣でいなそうとした赤髪の女性だが、全くの無駄。

 相手の力が尋常じゃなく強くいなしきれない。

 叩き付けられた時、骨が5本ほど折れ、内臓が損傷したが尋常ではない回復力でもすぐには元に戻らない。

「で、それだけ?」

 次の行動を待つ退屈しのぎで、問いかけるヤマダ。

 目の前の長剣で斬りかかって来た女性に、危機感など感じていない。

 そのことを感じた赤髪の女は全力で逃走する。

 いきなりヤマダの地面から蔦が伸び拘束し、あわよくばそのまま絞め殺そうとするがヤマダが体に力を入れた瞬間に、ブチブチと引きちぎれていく。

 傍から見れば見かけ倒しのような、抵抗などないかのような拘束。実際には鉄の鎖より厄介な柔軟性が在る為、体に巻き付けられると第三者に刃物で斬ってもらうしかない拘束なのだがまるで意味をなさない。

「あ、逃げられた」

 もう既に距離を開かれていることに気付き、ポリポリと頭を掻く。

「うん、次は足くらい捥いでおこう」

 

 なんだあれは!?

 と、赤髪の女、レヴェスは叫び出したかった。

 敵わないと知るや全力げ逃げる。その最中に大声を出して居場所を悟られるようなことはしたくない。

 考えてみれば、地上や人が住む安全地帯で騒ぎを起こせば調査しようとするのは当たり前だ。しかし、地上の連中は調査と生ぬるいことをせず、いきなり殲滅しに掛かって来らしいとレヴェスは結論した。

 そして、逃げた先にアリア―――アイズと他の冒険者がこちらに気付いた。

「!?」

 いきなり飛び出してきた剣先を躱すアイズ。

 入口の壁を破壊し侵入しても何もなく順調に進んでいて、いきなりのレヴィスの攻撃に反応する。LVが上がった恩恵か反射神経も上がっている。

 そのまま抜刀して反撃する。

 剣と剣が火花を散らし、それが合図だったように他の冒険者も戦闘態勢に移行した。

「アリア、今は構っている暇はない」

「待っ」

 突然現れ、一撃だけ仕掛けて逃亡するレヴィス。それを追いかけるアイズ。

 しかし、アイズと一緒に行動していたヘルメスファミリアの冒険者たちの前に、いきなりモンスター化した植物が大量に雪崩れ込んでくる。

「げぇ!?」

「何あの数!?」

「落ち着きなさい! 今は目の前の敵に対処しなさい! ルルネ、相手の魔石はどこですか!?」

「えっと、確か、口の中!」

 アスフィー・アンドロメダが指揮を取り、すぐに体勢を立て直しモンスター化した植物と戦闘を開始する。

 巧みな指揮と連携によって植物型のモンスターを撃退出来ると思われた。

 しかし、植物型のモンスターに謎の男たちが紛れ込む。大型のローブに口元まで隠す頭巾、ぎりぎりまで顔を隠すように設計された額当て。

 その中にはモンスターのドロップアイテムと思われる牛の頭の骨を被った人物も居た。

「不甲斐ないな。たった一人の冒険者に逃げ出すとは」

 いつの間にか探索は石英、食糧庫のとこまで難なく来たヘルメスファミリアのメンバー。

 だが、道中で何もなかったのは何処かの阿保が手当たり次第に暴れてしまったからである。

 待ち構えるようにして現れた集団は、剣呑な雰囲気でヘルメスファミリアを迎える。

「侵入者を生かして返すな!」

 そして、戦闘が混沌と化した。

 ヘルメスファミリアは植物型のモンスターと謎の集団による攻撃を受ける。

 数ではモンスターと一緒に戦う方が有利。

 が、巧みな連携とLV差で数の差をひっくり返してしまう。

「さて、お前ら、どこのファミリアだ?」

 再起不能にした謎の集団の一人に、ルルネは懐から小瓶を取り出す。

 開錠薬。

 背中に刻まれた神の恩恵を浮かび上がらせる為だけに作られた薬品。

 それを見た瞬間、まるで祈りを捧げるようにして男が呟いた。

「神よ、盟約に沿って捧げます……この命、イリスのもとに!」

 次の瞬間、男が爆ぜた。

 火炎石。

 巻き起こった爆発に対し、寸前で男を蹴飛ばしたルルネは危うく難を逃れる。

 それが引き金だったかのように、次々と謎の集団は自爆し始めた。

「愚かなるこの身に祝福を!」

「今御身のところに向かいます!」

 耳をつんざく爆音があちらこちらで鳴り、道連れに、証拠隠滅に彼らは自爆特攻を始め出した。

「アスフィ、こいつら死兵だ!?」

 当然、ヘルメスファミリアは混乱しメンバーも自爆によって負傷、鼻には火薬と肉が焦げた異臭が入ってしまう。

「同胞よ、死を恐れるな! 死を超えた先が我々の悲願だ! 我らが主神に忠誠を捧げよ!」

 それが凶行を加速させる。

「咎を許したまえ、ソフィア!」

「レイナ、どうかこの命で清算をもって!」

「ああ、ユリウス!」

 爆音が連鎖する。

 しかし、唆すようなことを言った本人はその凶行を見て嘲笑う。

「壊れた連中め、神に縛られる愚者ども……滑稽な」

 謎の集団による凶行、それに加えモンスターが敵味方問わず襲い掛かる。

 場は混沌を加速させてゆく。

「……わー。滅茶苦茶だから片づけるか」

 だが、流星が瞬く間に全てを破壊した。

 幾重にも走る光の軌跡。

 それがすべて植物型のモンスターに着弾し、一掃する。誤射、外れは一切ない。

「で、この事態は誰が元凶なわけ?」

 揺らめく赤い鎧を着た謎の人物は、まるで道を尋ねるように聞いてきた。




今年はこれが最後の更新になると思います。

また来年もよろしくお願い申し上げます。
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