ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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第11話

 いきなりであった。

 突然すべての植物型モンスターが消えた。

 正確に言えば倒されただ。

 誰に?

 恐らくではあるが、陽炎のように揺らめく赤い騎士に。

 しかし、詳細を見ようと目を凝らせば凝らすほどぼやけてしまう姿。恐らく姿を隠蔽する魔道具だと思われるが、なぜそのようなものを身に付ける理由があるのか。

 ヘルメスファミリアを助けた。

 しかし、味方ならそのようなものを身に付ける必要はない。

「……あなたは?」

 アスフィ・アンドロメダは敵の敵は味方と言う事は思わない。だが、それなら自分たちごと消してしまえばよかったはずなので、聞いてみることにした。

「んー。 賢……じゃなくて黒ローブの男に頼まれた助っ人? 多分俺が障害物排除で、そっちが調査担当じゃねぇの?」

 戦場のど真ん中で気の抜けた会話をし始める赤の騎士。

 そのことに危険はないと踏んだのか、先程の魔法も隠れて遠くから撃っただけで詠唱にかなり時間が掛かるのではと考えたのか、ともかくすっぽりとローブで顔を隠した一人が赤の騎士に斬り掛かる。

 だが、振られた剣は大型のランスによって受け止められる。想定済みと言うように、彼はにたりと口を歪める。

「今もとに行く! サーシャ!」

 赤の騎士の近くで男は爆散。

 その行動で植物型モンスターの殲滅で唖然としていた彼らは、突然出て来て突如消えたと認識したが、まるで何も無かったように爆炎から歩いて出て来る赤の騎士に絶句した。

「……これだけ?」

 と、落胆する赤の騎士。

 その場の全員が驚きで途方に暮れている中、ヤマダはもうさっさと終わらせようと手の平に魔力の塊を作り出した。

 5mほどの正方形の魔力の塊。

「ま、死ぬなら殺してしまってもいいか」

 それが小さく分裂し、ローブで顔を隠す集団に殺到する。

 それが攻撃だと気付いた彼らは逃げようとするが、もう遅い。

 認識した時にはもう、心臓を貫かれ、頭を貫かれ、起爆装置を破壊されていた。

 自爆も許さない無慈悲な攻撃に成す術がなく、地面に倒れる。

「え、詠唱をしていない……」

 目の前の光景。

 一瞬にして死屍累々を生み出した人物をヘルメスファミリアのメンバーは見る。

 ヘルメスファミリアは何年かオラリオで冒険者家業をして、ファミリアの情報に詳しい。

 だが、このような規格外の冒険者など知らない。

「でさ、あんたどうする? こいつらと同じく自爆するならさっさと殺すだけだけど」

「そいつらと一緒にするな」

 あの魔法を撃たせまいと、目にも止まらぬ速さで移動し一撃で仕留めようとする牛の骨を被った男。

 近づく瞬間、甲冑の隙間から見える騎士の目を見てしまったオリヴァス。

 背筋がゾッっと寒くなるほどの威圧感を感じ全力退避。

 一瞬にして壁際まで移動する。

「っは!」

 その一瞬で全身に汗を掻いた牛の骨を被る人物、オリヴァス。

(あれ以上近づいていたら殺された!?)

 オリヴァスの頭に想像されたのは、呆気なく死んだ自分の姿。

「貴様は何者だ!?」

「冒険……いや、今の俺はダークヒーローデビルキングだ」

 と、何やらポージングを決め出す赤の騎士。

 馬鹿にしているとしか思えないその行動に、オリヴァスは憤慨したくなるが出来ない。

 自分の勘と、経験が目の前の騎士に勝てないと心が挫けてしまった。

 何より、常人から見れば何をされたか分からないような最速な自身の攻撃も、あの騎士は兜の隙間から目で追っていた。まるで、虫がどのような行動を起こすのか観察するような目で、無感情に。

 揺らめく姿で確証を持たなくても確信できる。

 パフォーマンスでもなければ、英雄気取りでもない。

 自分をはるかに凌駕する化物。

 全てをぶつけ、それでも敵わない可能性。

「で、なに? どうした?」

 せめて逃げる時間だけでも稼がなければならない。

「こ、来い食人花《ヴィオラス》!」

 ヤマダの足元から、頭上から、側面から、前方から、後方から、取り囲むようにして巨大な花が生まれ、飲み込もうと同時攻撃する。

 だが、瞬く間に巨大なランスで刺し、足で踏み潰し、拳で砕いた。

 瞬きをする暇もなく殲滅。

 この場に居た者たちがどれだけそのことを認識できたか。

 誰もが分からない。勝手に食人花が吹き飛んだようにしか見えなかった。

 目を凝らしていたオリヴァスさえも。

「は?」

 今度こそオリヴァスは呆けた。

 自身では理解不可能な怪物が、問いかけて来る。

「で、他に何かないのか?」

 幸い相手は待ってくれるらしい。

 逃げるにしても半端な牽制は意味がない。

 オリヴァスの思考はもう既に目の前の騎士との戦闘を放棄して、逃げるためにはどうすればいいか思考を続けている。

 そんな時、部外者が現れる。

「おい、こりゃどういった状況だぁ?」

 剣呑な雰囲気で聞いてくる狼人、ベート。その後ろにエルフの魔導師が2人、レフィーアとフィルヴィス。

「ルルネさん? どうしてこんなところに」

「レフィーア!?」

「おい、アイズはここにはいねぇのか。答えろ」

「剣姫はさっきまで私たちと一緒に居たんだけど分断されて」

「ああ? 分断?」

 あちらが何やら盛り上がっているが、ヤマダはどこと言う風のように眺める。そして、見ていたのはヤマダだけではない。

 オリヴァスが逆転の一手を見つけたように歪んだ笑みを浮かべる。

 その瞬間、食人花がヤマダの方ではなく、ベートたちやヘルメスファミリアに殺到する。

 先程のように大量に四方八方から襲い掛かる食人花に対し、迎撃をするものの数が多く捌き切れない。ヤマダが援護しようと手に魔力の塊を浮かべた、その一瞬の行動の隙を突きもっとも非力な者の足元から蔦を伸ばすオリヴァス。

「きゃ!」

 レフィーヤの足元から伸びた蔦は、体を伝い身動き出来なくなる。

 混乱の只中、オリヴァスは無我夢中で混乱の只中を駆け、レフィーヤの喉を掴む。

「離れろ! そうして動くな! 妙な動きを見せれば殺す」

「貴様!」

「動くなと言ったはずだ! 特に赤い騎士!」

 レフィーヤの喉を絞める力はギリギリ首が折れないように手加減されていた。

「それ意味なくね?」

 動きをオリヴァスもベートも、ヘルメスファミリアのメンバーも、目の前まで来たレフィーヤにも全く悟られず一瞬にして、距離を詰める。ヤマダはオリヴァスが力を入れるよりも、ヤマダが近づいたという認識をするよりも早く腕を切断した。

 刃物ではない。

 手刀を魔力で強化しただけである。

「ぐぁあああああ!」

「うるさい」

 理不尽なことに顔面に拳で殴られる。

 被っている牛の骨は砕かれ、ダンジョンの壁に叩き付けられる。瞬間、衝撃で息が出来ず、口をパクパクと鯉のように動かすものの声が出なかった。

 牛の骨が破壊され、素顔が見えた時狼狽し始める面々。

「……オリヴァス・アクト」

「オリヴァス・アクトって白髪鬼の!? 嘘だろ!」

「だってあいつは」

「馬鹿な! なぜ死者がここに居る!」

 生き返ったことがそんなに驚くことだろうか、と見当違いに考えるヤマダと睨み付けるベート以外が驚きの表情を見せる。

「死んだ。だが、死の淵から蘇った。彼女のおかげで」

「……彼女?」

 誇らしげに言うオリヴァス。

 ヤマダが落とした腕の傷口も出血が少なく、顔面打撲も尋常ではない体の治癒力が働き出し、ゆっくりと傷が塞がっていく。

 そこで、レフィーヤが見てしまった。

 足が食人花のように黄緑色に染まり、極彩色の魔石が体に埋め込まれていることに。

「そう! 私は彼女によって生かされた!」

 アスフィーが何やらオリヴァスと呼ばれた男にいろいろ聞いていたが要約すると、オラリオを滅ぼすために、戦力整えていますと言う事らしい。

 オリヴァス、またその計画を企てている組織があることにヤマダは何の反応もない。とういうか日常茶飯事程度のことである。

 ただ、一つ気になる事がある。

 オリヴァスが言う彼女。

「それって堕ちた天使か? それとも精霊?」

 そんなことを言った瞬間、オリヴァスの表情が固まった。

 どうやら何か感じることがあったらしい。

「どうして、いや……貴様……人間か……?」

「生物学上は」

 何を当り前なことを聞いているのだろうとヤマダには甚だしい疑問で、首を傾げる。ただ、ヤマダ以外の全員はかなり本気でオリヴァスの言葉に同意したかった。

「御託はいい。そこの奴の正体もな。とっととくたばれ。どうせ、もう碌に動けやしねぇんだろ」

「ああ、私はな。―――巨大花」

 突如、柱に寄生していた植物型モンスターが絡まり、合わさり、巨大化した。

 冒険者たちが戦慄する中、ヤマダはあまり何も思わなかった。

「それだけ?」

 ランスの刀身が二股に展開され、一条の光と化した雷が巨大な植物型のモンスターの上半身を焼失させた。灰すら残らず、死骸は振動を起こしながら倒れ、灰と変わっていく。

「……は?」

 今度こそ、

 本当に、

 オリヴァスは、

 頭の中が真っ白になった。

「……一……撃……?」

 その時、壁が爆発した。

「「「!?」」」

 その爆煙から糸を引くようにアイズ、そして赤髪の女が飛び出て来る。

「ぐぅ!」

「はぁ、はぁ」

 どちらも肩で息をしているものの、アイズの方が裂傷が少なく優勢。

「レヴィス! 力を貸せ! この騎士は異常だ!」

「そうだな」

 そう言いながら、赤髪の女、レヴィスはオリヴァスに手を突き入れ魔石を引き抜いた。

 

「な、……なにを……?」

 

「協力したところで勝てるとは思えん」

「待て、私が居なければ彼女を守ることはっ」

「勘違いするな。アレは今までもこれからも私が守る」

 抉り出した魔石を噛み砕くレヴィス。

 殆どの者がその光景に絶句している中、ヤマダは取りあえず彼女の足に雷撃を放つ。

 人間程度なら、痺れて身動きが出来なくなる程度。捕らえるためにはやり過ぎないように配慮したが、それが仇となった。

「ぐっ!」

 と、歯を噛み締め耐える。強化種となった彼女の耐久性は以前より高くなり、苦痛を与えた程度に収まってしまう。

「ちっ」

 と舌打ちをしたが、紫色の外套に仮面を付けた人物に割り込まれる。

「完全ではないが、十分に育った。エニュオに持っていけ!」

 そして、仮面の人物に胎児が入った球体を無理矢理剥がし、逃走する。

 ヤマダが追跡しようとしたその時、レヴィスが叫ぶ。

「巨大花を生み続けろ! 枯れ果てるまで!」

 ぞっとダンジョンが震える。

 そして、生まれるのは先程の巨大花と呼ばれるモンスターがその場を埋め尽くすようにして、大量発生。

 100を超えるほどの数が、怒涛の勢いでヤマダではなく、ヘルメスファミリア、ベート、レフィーヤ、フィルヴィスに向かう。

「あー。流石にそれは」

 死ぬな。と他人事のように結論付けたヤマダ。

「それに加えてこれか」

 ヤマダの視線が後方に向いた隙を見計らって、レヴィスが食糧庫を支える柱を破壊。ダンジョンの天井が崩れ始める。

 大混乱に見舞われ、どうしようもなくなった彼らを見捨て、レヴィスを追うか。助けに入るか。

 一瞬迷った後、後味が悪いので降り注ぐ瓦礫、巨大花の殲滅に切り替えることにした。

 魔力の塊を手の平に浮かべ、数多に分裂させる。

 一斉発射された魔力弾は、寸分違わず脅威となる物を破壊し、殲滅した。

 

「やっぱ、メンバーの成長にはならないよな。これ」

 

 どこと言う風にポツリと言葉を漏らしたヤマダであった。

 救出した後、どちらも追うことは不可能と思ったヤマダは転移して、その場を後にすることにした。

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