ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか? 作:中二ばっか
「(……精霊アリア)」
約千年前の物語に出て来る精霊。
赤髪の女調教師の言葉を思い出し、どうしても知りたい思いに突き動かされティオナ、ティオネに何知らないか聞いた所。
もしやアイズの力は精霊に関したものかと一瞬思ったが、その考えを愚かな妄想と片づけ、本棚に戻す。
「あれ?」
だが、何かが引っかかったように元の場所に戻せない。
本と本の間を見てみると、薄い絵本が倒れて障害になっていた。
邪魔になっていた薄い本を取り出す。思わずレフィーヤはその本のタイトルに顔を困惑させる。
表紙のタイトルは『名も無き怪物という名の英雄』
なぜ、怪物なのに英雄なのか気になって中を開く。
村人は毎日畑や家を荒し、人を食べてしまうトラに困っていました。
村から逃げても見つかってしまえば食い殺されてしまい逃げ出せません。
そんな窮地を一人の男の子がトラを倒しに行きます。
その男の子はまき割に使う斧を、トラの頭に叩き落とし見事殺しました。
これで村には平和が戻ると男の子は思い、トラの頭を村に持ち帰ります。
ですが、村人たちはその男の子に恐怖を感じ石を投げつけました。
仕方がありません。人を食べるトラより強い者が来たのです。
男の子は仕方なく村を出ていきます。
ある街に盗賊団が襲い掛かりました。
その街で仕事を探していた男の子は盗賊団を蹴散らします。
ですが、男の子が再びその街で仕事を探すとどこも働かせてはくれません。
彼らにとっては盗賊団よりも、何の躊躇いもなく殺しつくした子供の方が怖いのです。
ここでも仕方なく男の子は街を出ていきます。
ある国がドラゴンに襲われてしました。
ここでも男の子は果敢にドラゴンに立ち向かい、見事その首を切り落とします。
しかし、戦いで城は崩れ、家は燃えてしまいました。
誰のせいか。
ドラゴンと戦った男の子のせいだと誰が言います。
しかし、男の子だって好きで壊した訳ではありません。
名誉も栄光もいらないから、誰に褒めてほしいと。
ですが、王様は男の子にこう言います。
誰が褒められるか、君はただトラを殺し、盗賊を殺し、ドラゴンを殺しただけだ、と。
男の子は訳が分からなくなりました。
みんなが助かっているのに、なぜいけないのかと。
それは怪物のすることだと誰かが言います。
ただの暴力だとみんなが言います。
そして、優しさがないと誰もが言います。
男の子は訳が分からなくなり、その国から出ていきます。
それからも男の子は誰かに振りかかる脅威を倒します。
悪人を殺し続けます。
怪物を殺し続けます。
そして、男の子の食べ物を奪いに来た人間を殺します。
それが男の子以外の生き物でした。
村人たちが飢餓に苦しみ盗賊となった事を知りません。
モンスターたちが、おなかが減って町を襲った事を知りません。
広い荒野に男の子は一人ぼっちになりました。
殺すべき悪はもう居ません。
世界のすべてが悪人。
世界のどこにも善人は居ません。
こうしてすべての悪人を、怪物を殺しつくし男の子は英雄となりました。
「……なんですかこれ」
物語にしても気味が悪い。
「あ、これね。どこかの古本屋で纏め買ったんだけど、その時混じっていた物みたいなんだ。まぁ、内容はあんまり面白くないし、適当にその辺に放り込んでいたんだけど、ここにあったんだ」
あっけらかんと言うティオナ。
それとは正反対に身震いをするレフィーヤ。
あの24層であった人物。
もう記憶に靄が掛かったように、上手く思いだすことが出来ないが、あの階層で起こったことについては思いだせる。
圧倒的な力によってねじ伏せた。
ただそれだけしか思いだせないが、それ以外の強烈な印象はない。
どうやってその力を手に入れたのか分からない。
だが、この物語に出て来る村人、街人、王様の感情は少し分かる気がする。
あの力が自分に向けられれば、無事では済まない。
強大な力を行使されるだけで、心はくすんでしまう。
「おーい。どうしたの?」
「いえ、あの、ティオネさんはそれを読んでどう思いましたか?」
「んー。優しさって何なんだろうなーっては思う。だって助けるためにトラとか、ドラゴン倒したわけでしょ? あとそれなのに報われないなーぐらい?」
レフィーヤは確かに、と思う。
だが、実際に目の前にしてしまえば自分はどのような行動を取るか分からない。
あの時は助けて貰えた。
しかし、お礼の一つも言っていない。
そして、また会った時恐怖に負けず、お礼を言えるか不安だった。
一人殺せば犯罪者。
100万人殺せば英雄。
全滅させれば神。
導き出される結論。
これがヤマダが神になる方法ならイージーすぎるか。
それに怪物は無限増殖だからな。ダンジョンごと壊すしかない(無慈悲)