ダンジョンをクリアーするのは間違っているだろうか?   作:中二ばっか

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第13話

 ヤマダはミアハファミリアが経営する店に寄った。別にそこで売られているポーションを買いに来たわけではない。

「……やっはろー」

 間の抜けた返事をするミアハファミリア唯一の店員。ナァーザ・エリスイス。

「例のブツは?」

「……ここに」

 そうして手渡される包み。中を見て確認し、大量の金が入った袋をナァーザに渡す。すぐさま彼女は袋の金を確認した。

「いつもこんなの良く手に入るな」

「……蛇の道は蛇」

 物を手に取った時、また別の客が来る。

「すいませーん。こんにちはー」

「……ベル?」

 入って来たのはクエストを完了したベルとリリルカアーデだった。

 そして、見られてしまう。ヤマダが持っている本の表紙。エルフの少女が縄で拘束され、恍惚とした表情を浮かべている。題名は『快楽に落ちる妖精』。

 しばし時の流れが止まる。

 そして何事もないかのように、ヤマダはその本を懐に仕舞った。

「いやいや!?」

「どうした? 駆け出し冒険者」

「何で当たり前のように、その……つ、艶本……が、ここで扱われているんですか!? ここ薬屋でしょう!?」

「何を言っているんだ? 俺はただ薬品の本を買っただけだ。例え、卑猥な表紙が見えたとしても、それは君が欲求不満によって見間違えただけに過ぎない」

「嘘だ!」

「やれやれ、そこまで艶本だと声を上げても君に関係あるのかい? そんなに艶本が見たいのなら自分で買えばいいじゃないか」

 手をひらひらと動かし、肩をすくめだすヤマダ。

 そんなヤマダをゴミを見るような目で見つめるナァーザ。

 彼女が売った物なので、どういう物なのかは理解している。そしてこうも思う。そんなに耳が長いのがいいのかと。

「と言うか、そんな話をする為にここに来たのかルーキー」

 少し凄んだ目でベルを見るとすぐに怯んでこの話題には触れなくなる。

「い、いえ。ナァーザさん、クエスト終わりました」

 袋に包まれていたのはドロップアイテムらしく、ナァーザが中身を確認して報酬であるポーションをベルたちに渡す。だが、こういったやり取りに慣れているリリルカはすぐにナァーザのぼったくり商法を見抜いた。

「このポーションが500ヴァリスですか? 元を薄めていらっしゃる。半分の効力もないでしょう。ええ、よくある手口です」

 笑顔なのだがその声には怒りが込められており、事実腸が煮えくり返っているのだろう。

 そのことにナァーザは言葉を失い、裏切られたベルは驚愕の表情を浮かべる。

「で、どうやって落とし前を付けてくださるんですか? そして、それは金貨袋ですねぇ。沢山入っていそうです」

 薄眼になったリリルカは、カウンターに置かれていたヤマダが置いた金貨袋を見る。まるで彼女は悪魔に近かった。

 

「すまんっ!」

 ミアハがベルたちに向かって頭を下げている。

 あの後、金貨袋の金の殆どをリリルカに接収させられ、金貨袋には雀の涙ぐらいしか残っていない。

 どうやら前々から同じ手段でベルから金を巻き上げていたらしく、そのツケも払わさせてしまった。

 そして、ミアハの隣では後頭部を掴まれ強制的に頭を下げらされているナァーザ。

 ベルのファミリアの主神、ヘスティアも呼び出しての謝罪会。だが、ヤマダは冷めた目でその一連の流れを見ている。そして、ミアハがナァーザに問い詰めた時、事情を知っているヤマダはとうとう呆れてしまい声を漏らした。

「あほくさ」

 騙す方も悪く、騙される方も危機感がない馬鹿。

 更にファミリアの経営を全く考えていない愚かな神。

 ヤマダはナァーザに今回のような取引を持ちかけるのは初めてでない。艶本一冊とはいえ、そう言った店に入るのは恥ずかしく、代わりとしてナァーザに買ってもらっているのだ。あの店に入る羞恥心を考えればこれは対等の取引と言える。少なくともヤマダはそう思う。

 だが、金に余裕ができるとミアハはポーションを無償で配る事が、多くなってしまうのだ。主に女性に。そして、勘違いした女性のしりぬぐいの為に慰謝料としてまた金が慰謝料などで支払わられる。

 喜劇か悲劇かと問われれば、脱力してしまう程に愚かしい喜劇。本人たちは溜まった物ではないが。

 そう結論した時、いきなり扉が蹴り破られる。

「ふははは! 邪魔するぞミアハ!」

 豪華な服を着こんで嫌らしい質の笑みを浮かべているクソ野郎。

(まぁ、神様なんて大なり小なりそんなもんか)

 しかし、ミアハはそんな嫌な神に借金をしている。

「で、今月の支払いは用意できるのか、ミアハァ~?」

「それは……」

 ナァーザはヤマダから受け取った金で返済するつもりだったが、それは弁償金としてベルの元に行ってしまている。ベルがお金を差し出そうとしたが、それはリリルカとヘスティアに阻まれてしまう。

「ベル様、誰かを助けようとする心意気は立派ですが、これは彼らの問題。自業自得です」

「そうだよベル君。それに僕たちだってあの協会から出るためにはお金が必要なんだよ」

 ああ、悲しきかな。金の前には友情など脆い物。

 ヤマダも今は持ち合わせがなく、どうしようもない。

「明日までに今月の支払いを行わなければ、貴様らを追い出しこのオンボロホームを売り払ってやるからなぁ! ふはははは!」

 そうして付添の団員と一緒に自分のホームに帰っていくディアンケヒト。

 オンボロホームと言っている時点で大した金にならないのは分かっているはずである。

「本当に嫌な奴」

 

 その後、ミアハとナァーザからファミリアの過去話や現状について語られた。

「それでどうするんだい?」

 ヘスティアの問いにミアハは難しい顔をして、ナァーザが縋るようにしてヤマダに目を向ける。

 確かにヤマダの貯金を多少崩せば、月額どころか全借金を返済できるだろう。全部お金で解決してもいいのかもしれない。ここのファミリリアには多少の恩はある。

 が、ヤマダはそれよりも疑問に思ったことがあった。

「いっその事その腕、返すなり売っちまえば?」

 ヤマダが放った言葉は場を沈黙させた。

「や、ヤマダさん……それは、ダメなんじゃないんですか?」

「何でだ? 薬師としてはお金は稼げない、ダンジョンには潜れない。だったらその腕は何のためにある?」

「それは私が勝手に――」

「お前には聞いていない」

 ピシャリと言い放ち何か言おうとしたミアハを黙らせる。

 じっとナァーザの目を見るヤマダは、虚偽は許さないと睨み付けるようにして彼女を見る。

 重く、ナァーザからポツリと言葉が出る。

「私は、まだ、役立たず、だから、せめて、何か、しないと」

 涙目になり、声をつっかえながらも言葉にする。

「その為にはその腕は必要か?」

 問いかけに頷くナァーザ。

「じゃ、それを証明してくれ」

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